luhmann

初期ルーマンにおける「経験的研究と規範的研究の架橋」

第83回日本社会学会大会(@名古屋大学 11/6-7)のルーマン部会で報告しました。レジュメが足りなくなったそうで、大変申し訳ありません。以下にレジュメの全文を載せておきます。 (PDFはこちら) 1. 問題 ◯ ルーマン研究というと理論(システム理論)の研…

『行政学の理論』文献一覧(途中)

超途中。15ページまで。 Caldwell, Lynton K., 1965, “Public Administration and the Universities: A Half Century of Development,” Public Administration Review 25, pp. 52-60 Calimeri, Micheie, 1964, “Scienza dell'amministrazione 0 scienze dell…

邦訳『目的概念とシステム合理性』の誤訳

『目的概念とシステム合理性』(265頁)、 経験的な(記述的ないし因果的・説明的な)研究と規範的な、とりわけ合理的・実践的な研究の関係 原書Zweckbegriff und Systemrationalität(343頁) das Verhältnis von empirischer (deskriptiver oder kausal-er…

英訳Social Systemsの誤訳

Social Systems の48頁。 . . . for example, a labile chemical or physical combinatory capacity. 原文はSoziale Systemeの78頁。 . . . etwa labile chemische oder psychische Bindungsfähigkeit. 「物理」と「心理」は同じ言語内でも間違いやすいから…

英訳Social Systemsでの誤訳

Social Systems の34頁にこうある。文中の「it」は「autopoiesis」のこと。 In any event, for systems theory it is a far-reaching conceptual cut, which transfers self-reference from the level of structural formation and structural change to tha…

ルーマン写真6点

Niklas Luhmann作者: Detlef Horster出版社/メーカー: Beck C. H.発売日: 2005/01/01メディア: ペーパーバックこの商品を含むブログ (3件) を見るスキャンした記念に、本書に載っている珍しそうな写真をあげてみる。1936年の夏。ということは8歳かな。 1937…

作業メモ:『社会の社会』

今日から見れば「認識論的障害」という概念が備えていた複雑性は、あまりにも小さかったと言える。 ルーマン『社会の社会 1』10頁 いまからこの概念使うぞー!といったそばから何だよそれという感じだけど・・・ Rückblickend haben die Leitideen dieser ob…

作業メモ:『社会の社会』

Viele Merkwürdigkeiten der heute klassischen Soziologien muß man der Begrenztheit dieses Auswahlschemas zurechnen und dem Versuch, trotzdem zurechtzukommen. Niklas Luhmann, Die Gesellschaft der Gesellschaft, S. 18 この部分が、邦訳ではこう…

作業メモ:『意味とシステム』

佐藤俊樹『意味とシステム』の第四章は「システムの再参入」を主題としている。これを導出する公理系についての考察である。 でもね、「システムの再参入」って何? 少なくともこれはルーマンの概念ではない。ルーマンが言っているのは、「システムと環境の…

「コミュニケイションは後部から可能にされる」

佐藤俊樹『意味とシステム』では、「コミュニケーションはいわば後部から可能にされる」というのが索引の見出しになっているくらい重要な位置を占めている。そしてこの本では、それが、先行するコミュニケイションの意味は、後続するコミュニケイションにお…

作業メモ:『意味とシステム』

私見ではMitteilungは「発信」が好ましいが、以下では「伝達」と書いておく。 伝達、情報、理解が関わるのは、作動の閉鎖性そのものではなく、この「コミュニケーションである」という同一性の区別がどこで成立するかである。この同一性の区別は必ずしもその…

作業メモ:『意味とシステム』

細かいけれど。 「作動の閉鎖性operative Geschlossenheit」(「作動の継起operative Schließung」ともいう)は、コミュニケーションシステムの大きな特徴である。 佐藤俊樹『意味とシステム』217頁 継起と閉鎖じゃ全然意味が違うわけですが。 で、schließen…

作業メモ:『社会の社会』

オートポイエーシスでは、システムの要素は時点拘束的である、つまり持続を持たない(生成した瞬間に消滅する)、つまり作動である、というのがルーマンの基本発想であるが、じゃあコミュニケイションという社会的システムの要素はどの時点で生成し消滅する…

作業メモ:『社会の社会』

コミュニケイションという一つのものがあるのでなくて、情報・発信・理解という三つのものがあると何で言ってはいけないのか、というのはルーマンのコミュニケイション概念において(少なくとも私には)よくわからんポイントなのだが。邦訳『社会の社会』に…

作業メモ:『意味とシステム』

簡単にいえば、Kontingenzやkontingentというドイツ語は二つの意味、 (1)何が特定されている状態においてそれが他でもありえた (2)何かが特定されえない で使われる。例えばW. ハイゼンベルクの不確定性原理、すなわち「量子力学では粒子の位置と運動量…

作業メモ:『意味とシステム』

ルーマンは1984年になって、反省があれば臨在性=その場性(Anwesenheit)がなくても相互行為システムが成立しうると言い出した、その典拠となる箇所だ、と佐藤が(誤って)思い込んでいる引用文の直後にこう書いてある。 微妙な言い回しが続くが、ここでは…

いただいてしまいました:『社会の社会』

社会の社会〈1〉 (叢書・ウニベルシタス)作者: ニクラスルーマン,Niklas Luhmann,馬場靖雄,赤堀三郎,菅原謙,高橋徹出版社/メーカー: 法政大学出版局発売日: 2009/09/01メディア: 単行本購入: 2人 クリック: 33回この商品を含むブログ (28件) を見る社会の社…

作業メモ:『意味とシステム』

かりに、時聞をおいてシステムが同一であるとしよう。その場合、中断前の行為やコミュニケーションと再開後の行為やコミュニケーションが接続されるわけだが、この二つは当然、居合わせていない。だから、そのふるまいの当事者同士も「居合わせている人Anwes…

作業メモ:『意味とシステム』

ところが、一九八四年の『社会システム』では、相互作用が定義βとは明らかにちがう形で描かれている。例えば「反省によってのみ処理できる特別な事態が存在する。そうでない場合は、その場性という構成原理でその直接的な方向づけには十分である」など、その…

作業メモ:『意味とシステム』

家族などとはちがい、日常会話では頻繁に人が入れ替わりうるので、人の集まりの形ではうまく一つに特定できない。相互作用システムでも人の出入りは起こりうる。「ちょっとした出会いでもそうである」。むしろ「高い入れ替わり可能性、すなわちその場性の不…

自己参照とは

「自己参照」もまた、厳密な意味で一つの参照である。つまり、区別に基づく指示である。しかし自己参照がただの参照でないのは、それが、参照するという作動がその参照の指示対象に含まれる、という特殊事例だからだ。参照それ自体の所属先を自ら指示すると…

「参照」(Referenz)と「観察」(Beobachtung)はほぼ同義

以下は多少意訳ですが。 「参照」という概念は、観察という概念と同じような意味になるように定義する。参照とは、(Spencer-Brownのいう意味での)区別と指示という二つの要素から成り立つ一つの作動のことである。つまり、あるものを別のものと区別したう…

Mitteilungの訳語の話

コミュニケイションはMitteilungとInformationとVerstehenという三段階の選択で成り立っているというのがルーマンの所説だが、Informationは「情報」、Verstehenは「理解」でいいとして、既訳はMitteilungを「伝達」と訳していていかにもまずいことになって…

システムがコミュニケイションの連鎖の別名にすぎないとすると

コミュニケイションの自己再生産過程、接続過程、連鎖がシステムなのだとすると、つまりそういう過程・連鎖があるというだけで十分であり、「システムがある」というのは省略表現にすぎないのだとすると、たとえば 相互行為システムでは、コミュニケイション…

「単純な社会的システム」第六節「同一性と抽象作用」

とりあえず訳してみた。 社会学理論が単純なシステムをうまく扱えていないのは、単純なシステムでは自己意識、境界意識がはっきりしていないということが大きい。単純なシステムの参加者は、自己や、自己以外の参加者を、人として見る。しかし自分たちが行っ…

作業メモ:『意味とシステム』

「単純な社会的システム」からの引用部。 そしてそれはふつう、たんに話の主題が選択的な出来事として展開されるがゆえなのである。 (p. 52) 細かいことを言うようだけど、 auch dies übrigens nur deshalb, weil das Thema als selektives Geschehen entw…

相互行為システムにおけるプロセスの二重性

単純なシステム[=相互行為システム]に特有の性質とは何かというと、それは一方では、二つのプロセス[=相互知覚と言語によるコミュニケイション]が同時進行しているために、一種の「分業」が可能になって、そのつど問題を振り分けることができるという…

裏テーマ

本当の話題はあるがそれをあからさまに話題にすることはできず、しかし参加者たちはそれを承知していて、婉曲表現を使うことで裏ではその話題について語っているがゆえに、その本当の話題によってシステムが潜在的に支配されている、ということがありうる。N…

「参加者の臨在性」による相互行為システムの定義についてのメモ

「原初的な相互行為」、また「単純な社会的システム」の定義特性としては、参加者の臨在性というのを用いることにしよう。参加者とは、自分の体験や行為を、そのつどの相互行為に提供する者のこと。で、参加者が臨在しているとは、複数の参加者同士が互いに…

いやだから「普遍理論なら自己参照理論」は一般には成り立たないんだって

id:contractio:20090724#p2 ところで、ときどき、「普遍理論」のメルクマールが自己言及性にある、と理解しているひとがいるが、それは勘違い。(普遍理論ならば自己言及的でなければおかしいが、自己言及的ならば普遍理論であるとは限らない。) これについ…