Mitteilungの訳語の話

コミュニケイションはMitteilungとInformationとVerstehenという三段階の選択で成り立っているというのがルーマンの所説だが、Informationは「情報」、Verstehenは「理解」でいいとして、既訳はMitteilungを「伝達」と訳していていかにもまずいことになっているのだが、それについては私が前から「発信」がいいと言っていて、まあぶっちゃけ「発信」で決まりなんだが、英訳でも困っているらしい。

ルーマンの文章の英訳で、Mitteilungというドイツ語が「expression」とか「utterance」と訳されているのがあるが、「expression」というとどうも「思考」とか「意図」の表明、といった感じがしてしまうのでちょっと使いたくないし、「utterance」も、なんか、コミュニケイションとは別に何かがあって、それがコミュニケイションの中でutterされる、といった感じがしてしまう。「announcement」なら、よりテクニカルな言葉だし、コミュニケイションの外部のものがコミュニケイションの中に入ってくるという感じが必ずしもしないので、これがいいと思う。



Hans-Georg Moeller, Luhmann Explained, pp. 203-204

まあ、expressionにしてもutteranceにしてもannouncementにしても、「伝達」にあるような「達する」感は皆無であって、あくまでも情報の送り手=発信者の側の行為を表す動詞の間での議論であることに注意。