「中公新書」目録リスト一覧 2001-2050 (2009年-2010年)






新・現代歴史学の名著―普遍から多様へ (中公新書)

  • 2050. 樺山紘一,『新・現代歴史学の名著――普遍から多様へ』,2010年
    • 二十世紀末の世界における大きな二つの変化―冷戦に依拠した支配体制の終焉と、グローバル化のさらなる加速―は、当然ながら歴史学にも大きな影響を与えた。旧来の問題設定が無効化した後、進行形の現実の変容に、いかに対峙していくべきか。本書では、現在の歴史学の問題意識を体現する代表的著作を精選し、その意義を読み解く。いま必要な、歴史という経験に学ぶための新たな視座がここにある。



パリのグランド・デザイン―ルイ十四世が創った世界都市 (中公新書)



芭蕉―「かるみ」の境地へ (中公新書)

  • 2048. 田中善信,『芭蕉――「かるみ」の境地へ』,2010年
    • 古典文学の名作に数えられている『おくのほそ道』だが、芭蕉にとって紀行文を書くことは趣味であり、修練の一つであったにすぎない。芭蕉は、「俗」を対象とする俳諧を、和歌や連歌と同等の文学に高めることに苦心したが、生前それが叶うことはなかった。本書は俳諧師の名乗りをあげた『貝おほひ』以降の作品を丹念に読みながらその足跡を追い、「俳聖」としてではなく、江戸を生きた一人の人間としての実像を描く。



オランダ風説書―「鎖国」日本に語られた「世界」 (中公新書)

  • 2047. 松方冬子,『オランダ風説書――「鎖国」日本に語られた「世界」』,2010年
    • 日本人の海外渡航を禁じた江戸幕府にとって、オランダ風説書は最新の世界情勢を知るほぼ唯一の情報源だった。幕府はキリスト教禁令徹底のため、後には迫り来る「西洋近代」に立ち向かうために情報を求め、オランダ人は貿易上の競争相手を蹴落すためにそれに応えた。激動の世界の中で、双方の思惑が交錯し、商館長と通詞が苦闘する。長崎出島を舞台に、「鎖国」の200年間、毎年続けられた世界情報の提供の実態に迫る。



内奏―天皇と政治の近現代 (中公新書)

  • 2046. 後藤致人,『内奏――天皇と政治の近現代』,2010年
    • 内奏―臣下が天皇に対し内々に報告する行為を指す。明治憲法下では、正式な裁可を求める「上奏」の前に行われた。戦後、日本国憲法下、天皇の政治関与は否定され、上奏は廃止、内奏もその方向にあった。だが昭和天皇の強い希望により、首相・閣僚らによる内奏は続けられる。天皇は「御下問」し、それは時に政治に影響を与えた。本書は、「奏」という行為から、天皇と近現代日本の政治について考える試みである。



競争と公平感―市場経済の本当のメリット (中公新書)

  • 2045. 大竹文雄,『競争と公平感――市場経済の本当のメリット』,2010年
    • 日本は資本主義の国のなかで、なぜか例外的に市場競争に対する拒否反応が強い。私たちは市場競争のメリットをはたして十分に理解しているだろうか。また、競争にはどうしても結果がつきまとうが、そもそも私たちはどういう時に公平だと感じるのだろうか。本書は、男女の格差、不況、貧困、高齢化、派遣社員の待遇など、身近な事例から、市場経済の本質の理解を促し、より豊かで公平な社会をつくるためのヒントをさぐる。



平安朝の父と子―貴族と庶民の家と養育 (中公新書)

  • 2044. 服藤早苗,『平安朝の父と子――貴族と庶民の家と養育』,2010年
    • 史上、父と子の強い関係が見え始めるのは平安時代初期のことである。『御堂関白記』は、子をたくさん産み育てることを称揚し家の力を拡大させていった藤原道長の姿を、『小右記』は、子どもを寵愛した藤原実資の日常を伝えている。貴族の日記や説話から見えてくる父と子の絆は、現代の子育てを考えるうえでも多くの示唆を与える。「母と子」「女と男」につづき、歴史から現代の家族を考える三部作の完結篇。



シナリオ無頼―祭りは終わらない (中公新書)

  • 2043. 中島丈博,『シナリオ無頼――祭りは終わらない』,2010年
    • 「一スジ、二ヌケ、三ドウサ」。スジは脚本、ヌケは画面の美しさ、そしてドウサが役者の演技。脚本の出来が映画の死命を制すことをいった金言である。一〇〇〇本を超える膨大なシナリオを手がけ、実際にメガホンもとった著者が、波乱に富んだ来し方を詩情豊かに綴る。幼少期の京都、少年時代の高知、脚本家として怱忙の日々を送った東京。終戦から今日に至る、人びとの熱く苦渋に満ちた生き様と、業界の裏面史。



菜根譚―中国の処世訓 (中公新書)

  • 2042. 湯浅邦弘,『菜根譚――中国の処世訓』,2010年
    • 中国では長く厳しい乱世が多くの処世訓を生んだ。中でも最高傑作とされるのが、明末に著された『菜根譚』である。社会にあって身を処する世知と、世事を離れ人生を味わう心得の双方を記したこの書は、江戸期に和訳されて後、生涯の道を説くものとして多くの日本人の座右の書となった。本書では内容を精選して解説するとともに、背景となる儒教・仏教・道教の古典や故事、人物を丁寧に紹介、より深い理解へと読者を誘う。



行動経済学―感情に揺れる経済心理 (中公新書)

  • 2041. 依田高典,『行動経済学――感情に揺れる経済心理』,2010年
    • 完全無欠な人間が完全な情報を得て正しい判断をする―これが経済学の仮定する経済人である。だが、現実にはこのような人間はいない。情報はあまりに多く、買い物をしたあとでもっと安い店を知って後悔する。正しい判断がいつも実行できるわけではなく、禁煙やダイエットも失敗しがちだ。本書は、このような人間の特性に即した「行動経済学」を経済学史の中に位置づけ直し、その理論、可能性を詳しく紹介する。



鳥羽伏見の戦い―幕府の命運を決した四日間 (中公新書)

  • 2040. 野口武彦,『鳥羽伏見の戦い――幕府の命運を決した四日間』,2010年
    • 「歴史にイフはない」なんて誰が言ったのか―幕府の命運を決した慶応四年(一八六八)一月三日から六日にかけての四日間の戦いは、さまざまな偶然に満ちている。なぜ幕府歩兵隊の銃は装弾していなかったか、吹きつける北風は幕府軍にどう影響したのか、そして慶喜の判断はなぜ揺れ動いたのか―。誰もがその名を知っているけれど、詳しくは知らないこの戦いをドキュメンタリータッチでたどる。



孫の力―誰もしたことのない観察の記録 (中公新書)

  • 2039. 島泰三,『孫の力――誰もしたことのない観察の記録』,2010年
    • ニホンザルにも孫がいる。しかし、サルのおばあさんは孫を特別な存在としてとくに意識することはない。だが、ヒトはちがう。孫と祖父母とのつながりには、単なる生物的な関係をはるかに超えた、社会的・文化的な意味が隠されている。本書は、ニホンザルやアイアイの生態を研究してきた研究者が、その手法でみずからとその孫を観察した貴重な記録である。かつて孫だった人、これから孫を持つことになるすべての人へ。



天平の三姉妹―聖武皇女の矜持と悲劇 (中公新書)



社会とは何か―システムからプロセスへ (中公新書)

  • 2037. 竹沢尚一郎,『社会とは何か――システムからプロセスへ』,2010年
    • 「社会」という語は、どのような意味や役割を担わされてきたのか。十七世紀以降のヨーロッパで、それは初め、統治や富の増大を目的に国家が介入する空間として認識された。後に、貧困・暴力・不衛生など、「社会的な」問題が拡大し、それに対処するための対象となった。社会を複数の要素からなる複合的なものとしたのはスピノザである。人が他者とともにより良き生を築くための場という彼の構想に、社会の可能性を読む。



日本哲学小史 - 近代100年の20篇 (中公新書)



ヴィーコ - 学問の起源へ (中公新書)

  • 2035. 上村忠男,『ヴィーコ――学問の起源へ』,2009年
    • ヴィーコ(一六六八‐一七四四)は、学問的な世界把握にはらまれる理性主義的錯誤の危険性をことのほか鋭く認識していた、ナポリ生まれの哲学者である。大量破壊兵器、環境破壊など、ヨーロッパ的諸科学のもたらした弊害がかつてにも増して深刻味を帯びつつある今日、ヴィーコの学問批判のもつ意味は大きい。本書は『新しい学』の新訳等を完成させた碩学による、ヴィーコの学問観への透徹した案内である。詳細な文献表付。



感染症の中国史 - 公衆衛生と東アジア (中公新書)

  • 2034. 飯島渉,『感染症の中国史――公衆衛生と東アジア』,2009年
    • 一九世紀末、列強に領土を蚕食されるなか、中国では劣悪な栄養・衛生状態、海外との交流拡大によって、感染症が猛威を振るう。雲南の地方病であったペストは、香港や満洲に拡大し、世界中に広がることになる。中国は公衆衛生の確立を迫られ、モデルを帝国日本に求める。本書は、ペスト、コレラマラリアなどの感染症被害の実態、その対応に追われる「東亜病夫」と称された中国の苦悩とその克服に挑む姿を描く。



河合栄治郎 - 戦闘的自由主義者の真実 (中公新書)

  • 2033. 松井慎一郎,『河合栄治郎――戦闘的自由主義者の真実』,2009年
    • 人格の成長を第一と考える理想主義を提唱し、昭和期の学生必読書『学生に与う』を著した思想家・河合栄治郎。彼の生涯は闘いの連続であった。中学校でのいじめにはじまり、保身に走る官僚、派閥抗争に明け暮れる大学教授、そしてファシズムに傾斜していく軍部に対し、彼は「戦闘的自由主義者」として、自らの信念を貫き通した。新発見の史料によって生涯・思想・後世への影響を詳説。いま明かされる真実の河合栄治郎とは。



ハプスブルク三都物語 - ウィーン、プラハ、ブダペスト (中公新書)



IMF(国際通貨基金) - 使命と誤算 (中公新書)



上海 - 多国籍都市の百年 (中公新書)

  • 2030. 榎本泰子,『上海――多国籍都市の百年』,2009年
    • アヘン戦争後、一八四二年の南京条約によって開港した上海。外国人居留地である「租界」を中心に発展した街は、二〇世紀前半には中国最大の「華洋雑居」の地となり繁栄を極める。チャンスと自由を求めて世界中からやって来る移民や難民たち、英米日の角逐、勃興する中国の民族運動。激動の時代のなかで人々はいかに暮らし、何を思ったのか。本書は国籍別の検証を通じ、上海という都市独特の魅力を余すところなく伝える。



北朝鮮帰国事業 - 「壮大な拉致」か「追放」か (中公新書)

  • 2029. 菊池嘉晃,『北朝鮮帰国事業――「壮大な拉致」か「追放」か』,2009年
    • 一九五九年から四半世紀にわたって行われた北朝鮮帰国事業。「地上の楽園」と宣伝された彼の地に在日コリアン、日本人妻など約一〇万人が渡った。だが帰国後、彼らは劣悪な生活環境・監視・差別に苦しむ。本書は、近年公開された史料や証言を基に、南北統一への“活用”を意図した北朝鮮の思惑と、過激な政治分子と貧困層排除を目論んだという「日本策略論」を検証し、どのように事業は行われ、「悲劇」が生まれたかを追う。



信長の天下所司代 - 筆頭吏僚村井貞勝 (中公新書)

  • 2028. 谷口克広,『信長の天下所司代――筆頭吏僚村井貞勝』,2009年
    • 元亀四年に足利義昭を追放した後、信長は「天下所司代」を置き、京都支配を行った。本能寺の変までの九年間、一貫してその任にあったのは村井貞勝である。彼は信長の絶大な信頼を得て、市政から朝廷・公家との折衝までを一手に担い、ルイス=フロイスからは「尊敬すべき異教徒」と呼ばれた。武功とは無縁の吏僚でありながら有能を認められて「天下」=京都を仕切り、織田政権の要となった村井貞勝の活躍に光を当てる。



物語 ストラスブールの歴史 - 国家の辺境、ヨーロッパの中核 (中公新書)



ヒマラヤ世界 - 五千年の文明と壊れゆく自然 (中公新書)

  • 2026. 向一陽,『ヒマラヤ世界――五千年の文明と壊れゆく自然』,2009年
    • 標高八千m級の山々に囲まれて生きるシェルパ族。限られた自然の恵みを大切にし、質素だが朗らかに暮らす彼らと触れあうのは、トレッキングの醍醐味だ。しかし、近年、温暖化に伴う氷河湖の決壊や森林破壊が懸念されている。最源流のヒマラヤだけでなく、中流のヒンドゥスタン平野や河口にも、干魃による農地の疲弊や洪水による村の消失などさまざまな危機が訪れている。ヒマラヤ世界五千年の文明はどこへ行くのか、現地からの報告。



正倉院ガラスは何を語るか - 白瑠璃碗に古代世界が見える (中公新書)



グローバル化経済の転換点 - 「アリとキリギリス」で読み解く世界・アジア・日本 (中公新書)



東京ひとり散歩 (中公新書)

  • 2023. 池内紀,『東京ひとり散歩』,2009年
    • 関西の城下町に生まれ育った著者が武蔵野の一角に住み着いて早数十年―東京はふらりと歩くのに格好の町だ。角を一つ曲がれば江戸や明治と対面し、地方都市が失つてしまった年中行事が今なお生きている。足の向くまま歩けば、祭りの熱気に行き会い、懐かしい商店街に誘われ、荷風が排徊した路地裏に迷い込む。しめくくりは、居酒屋であれやこれやともの思う贅沢な時間―ひとり散歩の愉しみ、ここにあり。



放射線医療―CT診断から緩和ケアまで (中公新書)

  • 2022. 大西正夫,『放射線医療――CT診断から緩和ケアまで』,2009年
    • 健康志向からか検査好きの国民性からか、CTはじめ先端画像機器の普及がめざましい。がんの治療に、手術や化学療法でなく放射線治療を選ぶ医師・患者も増加している。QOL(生活の質)維持に最適で、コストパフォーマンスにも優れているからである。しかし、過剰検査、専門医・医療スタッフの不足、診療報酬制度など課題は多い。医療の現場、診断・治療装置の現況、行政の対応、患者の期待と不安を取材、放射線医療の可能性を探る。



マイクロファイナンス―貧困と闘う「驚異の金融」 (中公新書)

  • 2021. 菅正広,『マイクロファイナンス――貧困と闘う「驚異の金融」』,2009年
    • 貧困は遠い国の出来事ではない。統計によれば、日本でも五日に一人の割合で餓死者が発生している。貧困に苦しむ人々を救うために、バングラデシュで始まったマイクロファイナンスアメリカ、フランスなど先進国でも、その力を発揮している。担保のない人々に融資をしながら、貸倒れ率一〜二%という実績を残す「驚異の金融」―これは日本の貧困問題にも有効か。この国の貧困の現状をデータに基づき明らかにし、導入の可能性に迫る。



書く―言葉・文字・書 (中公新書 2020)

  • 2020. 石川九楊,『書く――言葉・文字・書』,2009年
    • 筆先が紙に触れ、書ができていく。そこに書かれているのは、言葉であり、文字である。文字は単に点と線からなる図形ではなく、筆と紙の接点に生じる力―筆蝕―のダイナミックな現れなのだ。書は、できあがったかたちではなく、その過程を鑑賞する芸術ともいえる。一点、一画が部首を生み出し、文字をつくり、文へと展開する文学なのである。言葉と文字と書の関係を追究し、書の底知れない深みに迫るスリリングな書論・文化論。



ネガティブ・マインド―なぜ「うつ」になる、どう予防する (中公新書)



イルカ―生態、六感、人との関わり (中公新書)

  • 2018. 村山司,『イルカ――生態、六感、人との関わり』,2009年
    • イルカとは、口のなかに歯が生えた鯨類で、体長が4〜5メートル以下の種を指す俗称である。6500万年前、イルカの祖先は海に戻り、哺乳類のなかでも独特な進化の過程を歩んできた。本書は、生物としての変遷、生態、視覚、聴覚、コミュニケーション能力などを説明したうえで、太古から現在にいたる各地域での人との関係、人間にも匹敵すると言われる知的な能力に目を向ける。謎が多いイルカの全貌をわかりやすく明らかに。



ローマ喜劇―知られざる笑いの源泉 (中公新書)

  • 2017. 小林標,『ローマ喜劇――知られざる笑いの源泉』,2009年
    • 古代ローマの喜劇作家、プラウトゥスとテレンティウスの作品は日本ではあまり知られていない。しかし「市井の人々の物語で客を笑わせ、かつ感動させる」という、喜劇作家にとっての永遠の課題はローマ喜劇にその源泉が見出され、演劇史上、極めて重要である。本書は現代との関わりを探りつつ主要作品を解説し、その笑いの技法の数々を見る。さらに、ローマ喜劇の歴史に見られる日本近現代の演劇史との並行性を指摘する。



排出取引―環境と発展を守る経済システムとは (中公新書)

  • 2016. 天野明弘,『排出取引――環境と発展を守る経済システムとは』,2009年
    • 人類最大の環境汚染=地球温暖化問題。その影響は世代を超え、全世界の生態系に及ぶ。だが、各国ごとの規制や技術開発といった旧来の手法だけでは、このグローバルな環境問題は解決できない。温暖化ガス排出を抑え地球の大気という公共的資源を守りつつ、地域や各国経済の発展を図るにはどうすべきか。近年誕生した「排出取引制度」の歴史と理論、主要諸国で導入が進む制度を紹介し、今後の展望と日本の取るべき道について述べる。



「大日本帝国」崩壊―東アジアの1945年 (中公新書)

  • 2015. 加藤聖文,『「大日本帝国」崩壊――東アジアの1945年』,2009年
    • 大日本帝国」とは何だったのか。本書は、日本、朝鮮、台湾、満洲樺太南洋群島といった帝国の「版図」が、一九四五年八月一五日、どのように敗戦を迎えたのかを追うことによって、帝国の本質を描き出す。ポツダム宣言の通告、原爆投下、ソ連参戦、玉音放送、九月二日の降伏調印。この間、各地域で日本への憎悪、同情、憐憫があり、その温度差に帝国への意識差があった。帝国崩壊は、東アジアに何を生み、何を喪わせたのか。



ヨーロッパの中世美術―大聖堂から写本まで (中公新書)



無印ニッポン―20世紀消費社会の終焉 (中公新書)

  • 2013. 堤清二三浦展,『無印ニッポン――20世紀消費社会の終焉』,2009年
    • T型フォードの発売からリーマン・ショックまで一〇〇年。自動車の世紀だった二〇世紀が終わり、消費文化は大きな曲がり角を迎えている。大流通グループ「セゾン」を牽引し、無印良品を生み出した堤と、地域の文化の衰退を憂慮する三浦が、消費の未来、日本の将来を語る。「これがいい」ではなく、「これでいい」という「無印」の思想は、企業主導ではない個人主体の生き方を勧めるものである。本当の消費者主権とは何か。



カラー版 マチュピチュ―天空の聖殿 (中公新書)

  • 2012. 高野潤,『マチュピチュ――天空の聖殿』,2009年
    • インカ帝国が未来にのこした世界遺産マチュピチュ。太陽、虹、霧、風に包まれた永遠の聖殿は、いまなお謎とともに眠る。人々は断崖上の都市でどのように暮らし、何に向かって祈っていたのだろうか。初代皇帝の誕生神話、18~19世紀の古文書や最古の地図と秘められた歴史、1911年のビンガムの発見、そしてビルカバンバの山や谷、神秘の東方圏まで、マチュピチュを中心としたインカの全貌がここにある。



皇族―天皇家の近現代史 (中公新書)

  • 2011. 小田部雄次,『皇族――天皇家の近現代史』,2009年
    • 古代より「天皇の血族」として存在した皇族。明治維新後、最も近親で天皇を支える階級として、軍人の義務と多くの特典を獲得し成立した。だが、自らの権威・特権を背景に、長老の皇族軍人や直宮は、天皇を脅かす存在でもあった。本書は、古代から現代の皇族を概観し、近代以降存在した十五宮家、皇族軍人たちの動向、新たな位置づけを求めた戦後の「皇室」を中心に、皇族の全貌を明らかにする。巻末に詳細な「近代皇族一覧」付。



和の思想―異質のものを共存させる力 (中公新書)

  • 2010. 長谷川櫂,『和の思想――異質のものを共存させる力』,2009年
    • 和食、和服、和室…、「和」はいろいろな言葉に添えられて日本的という意味を付け加えているにすぎないようにみえる。だが本来、和とは、異質のものを調和させ、新たに創造する力を指すのだ。倭の時代から人々は外来の文物を喜んで迎え、選択・改良を繰り返してきた。漢字という中国文化との出会いを経て仮名を生み出したように。和はどのように生まれ、日本の人々の生きる力となったのか。豊富な事例から和の原型に迫る。



音楽の聴き方―聴く型と趣味を語る言葉 (中公新書)

  • 2009. 岡田暁生,『音楽の聴き方――聴く型と趣味を語る言葉』,2009年
    • 音楽の聴き方は、誰に言われるまでもなく全く自由だ。しかし、誰かからの影響や何らかの傾向なしに聴くこともまた不可能である。それならば、自分はどんな聴き方をしているのかについて自覚的になってみようというのが、本書の狙いである。聴き方の「型」を知り、自分の感じたことを言葉にしてみるだけで、どれほど世界が広がって見えることか。規則なき規則を考えるためにはどうすればよいかの道筋を示す。



市場主義のたそがれ―新自由主義の光と影 (中公新書)

  • 2008. 根井雅弘,『市場主義のたそがれ――新自由主義の光と影』,2009年
    • ベルリンの壁の崩壊後、世界を席巻した「市場主義」。だが、経済格差や環境破壊を引き起こすなど、欠陥を露呈している。本書では、市場主義の源流に位置するフリードマンの経済思想を、同時代の証言を交えて読み解き、その功罪を明らかにする。第二次大戦後、彼らが勢力を拡大した過程を辿る一方、アメリカの経済思想の多様さにも注意を促す。



物語 数学の歴史―正しさへの挑戦 (中公新書)

  • 2007. 加藤文元,『物語 数学の歴史――正しさへの挑戦』,2009年
    • 古代バビロニアで粘土板に二次方程式の解法が刻まれてから四千年、多くの人々の情熱と天才、努力と葛藤によって、人類は壮大な数学の世界を見出した。通約不可能性、円周率、微積分、非ユークリッド幾何、集合論―それぞれの発見やパラダイムシフトは、数学史全体の中でどのような意味を持ち、どのような発展をもたらしたのか。歴史の大きなうねりを一望しつつ、和算の成果や19世紀以降の展開についても充実させた数学史決定版。



教育と平等―大衆教育社会はいかに生成したか (中公新書)



大学の誕生〈下〉大学への挑戦 (中公新書)

  • 2005. 天野郁夫,『大学の誕生(下)――大学への挑戦』,2009年
    • 日本の大学はどのような経過をたどって生まれたのだろうか。そのダイナミックな展開をつぶさに描く本書の下巻は、東京と京都の帝国大学との距離を縮めようとして、官立・私立ともに専門学校などの高等教育機関が充実してゆくありさまを見る。帝国大学はその数を増し、一方で、専門学校はそのなかに序列を生じていった。そしてついに、大正七年の大学令の成立により、現在につながる大学が誕生するのである。



大学の誕生〈上〉帝国大学の時代 (中公新書)

  • 2004. 天野郁夫,『大学の誕生(上)――帝国大学の時代』,2009年
    • 日本の大学はどのような経過をたどって生まれたのだろうか。本書は、その黎明期のダイナミックな展開を二巻にわたって、つぶさに描くものである。上巻では、明治一〇年の「東京大学」の設立と一九年の帝国大学誕生の成立から説き起こす。その後、帝国大学が自己変革していくさまと、帝国大学に対するかのように生まれる官立・私立の専門学校の隆盛へと物語は進んでゆく。人と組織が織りなす、手に汗握るドラマ。



疾走する精神―「今、ここ」から始まる思想 (中公新書)

  • 2003. 茂木健一郎,『疾走する精神――「今、ここ」から始まる思想』,2009年
    • IT技術一つとってみても、米国を震源とするグローバリズムは強大な力を持つ。66億以上に人間が暮らす広い地球といえども、やがてどこもかしこも同じようになってしまうのではないか懸念もされている。だが「米国もone of themにすぎない」と気付くならば、世界は今までとは違う、多様性の宝庫=深い森に見えてくる。いま何を大切なものとして生きるべきなのか。横断する知を生きる、脳科学者が見つめた現代と未来とは。



ハックルベリー・フィンのアメリカ―「自由」はどこにあるか (中公新書)



孟嘗君と戦国時代 (中公新書)

  • 2001. 宮城谷昌光,『孟嘗君と戦国時代』,2009年
    • 古代中国の大国・斉に生まれた孟嘗君は、秦から脱出するさい食客たちによって助けられた「鶏鳴狗盗」の故事で名高い。多様な力が国と人を動かす混乱の戦国時代にあって、かれは諸国を縦横無尽に歩き、貴賎と交わり、知恵と誠実をもって燦然と輝く存在だった。孟嘗君はまさに戦国時代を体現していたのである。逆境にあって悲観せず、むしろ自らの糧として理想の実現に邁進した孟嘗君の生涯を、作家の目で読み解く。