憲法:外国人の入国の自由  司法書士試験過去問解説(平成21年度・憲法・第1問)




平成21年度司法書士試験(憲法)より。設問全体については、憲法:外国人の人権

教授: (略)次に,外国人に入国の自由が認められるかどうかについては議論がありますが,あなたはどのように考えますか。
学生: 私は,( (4) )と考えます。判例も同様の立場をとっています。
教授: そうですね。


要するに、外国人の入国の自由について、判例の立場はどうなっているか、という問いです。そして、ここで判例というのはマクリーン事件の判例のことです。この判例では、次のように述べて、外国人の入国の自由の保障を否定しています。

憲法22条1項は、日本国内における居住・移転の自由を保障する旨を規定するにとどまり、外国人がわが国に入国することについてはなんら規定していないものであり、このことは、国際慣習法上、国家は外国人を受け入れる義務を負うものではなく、特別の条約がない限り、外国人を自国内に受け入れるかどうか、また、これを受け入れる場合にいかなる条件を付するかを、当該国家が自由に決定することができるものとされていることと、その考えを同じくするものと解される(中略)。したがつて、憲法上、外国人は、わが国に入国する自由を保障されているものでないことはもちろん、所論のように在留の権利ないし引き続き在留することを要求しうる権利を保障されているものでもないと解すべきである。

なので、正解は選択肢ウです(選択肢の全体については、憲法:外国人の人権)。

  •   憲法第22条第1項は,外国人が我が国に入国することについては何ら規定をしておらず,国際慣習法上も,国家は外国人を受け入れる義務を負うものではない

なお、憲法22条1項は次のとおりです。

何人も、公共の福祉に反しない限り、居住、移転及び職業選択の自由を有する。


外国人の在留期間更新に関して、平成15年度にも選択肢の一つとして出題があります。詳しくは、憲法:外国人の在留期間更新。



憲法 第四版
入国の自由が外国人に保障されないことは、今日の国際慣習法上当然であると解するのが通説・判例である。国際法上、国家が自己の安全と福祉に危害を及ぼすおそれのある外国人の入国を拒否することは、当該国家の主権的権利に属し、入国の拒否は当該国家の自由裁量によるとされている。



芦部信喜 『憲法 第四版』 92頁

憲法〈1〉
憲法22条は外国人の入国の自由を保障しておらず、外国人の入国の規制は、国際慣習法上、主権の属性として国家の裁量に委ねられていると解している。前記最高裁マクリーン事件判決は、(中略)入国の自由が外国人に保障されないことが、(中略)最高裁の確定した判例になっていることを明らかにしている。



野中俊彦・中村睦男・高橋和之・高見勝利 『憲法I 第4版』 220頁

憲法
外国人の権利保障の問題は日本に在留する外国人を対象とするものであって、外国人が日本に入国する権利は日本国憲法下では保障されていないと解するのが通説の立場である。これは、国際慣習法上、国家には外国人の入国を規制する自由が認められることや、現実にも自国や自国民の安全等を守るために入国規制の利益が存在することなどを理由とする。判例も、先のマクリーン事件最高裁判決のなかで、(中略)この立場を採用している。



辻村みよ子 『憲法 第3版』 145頁

憲法 (新法学ライブラリ)
判例によると,憲法22条2項の定める外国移住の自由は外国人にも保障されるが(略),同条は,外国人が日本に入国する自由については,なんら規定していないとされている(略)。学説・判例とも,外国人の入国の自由については,憲法によって保障されるものではなく,国際慣習法上入国の許否は,各国の自由裁量によって決定されるものとする(略)。



長谷部恭男 『憲法 第4版』 130頁

憲法
憲法22条は外国人の入国の自由を保障しておらず,また外国人の入国の許否は国際慣習法上主権の属性としてその国の裁量に委ねられていると解するのが通説・判例である。在留権も、外国人に入国の自由がない以上,入国許否に関する自由裁量の問題とされている。



渋谷秀樹 『憲法』 111頁