憲法:外国人の在留期間更新 司法書士試験過去問解説(平成15年度・憲法・第1問)
平成15年度司法書士試験(憲法)より。判例の趣旨との合不合を問うもの。設問の全体については、憲法:基本的人権。
- 1 外国人について,その在留期間中に政治活動をしたことを考慮して,在留期間の更新を拒絶したとしても,憲法に違反しない。
外国人の在留期間を更新するかどうかは、法務大臣が決めることです。このことは、出入国管理及び難民認定法21条で定められています。
さて、在留期間更新を認めるかどうかを決める際に、在留期間中の政治活動を更新拒絶のための考慮の対象にしてもいいかどうか、というのが選択肢の話ですが、この点が問われたのがマクリーン裁判です。
判例はまず、外国人の入国の自由は基本的人権として保障されるものではないことを確認し、そのことから直ちに、在留の権利も憲法で保障されているわけではないとします。
憲法22条1項は、日本国内における居住・移転の自由を保障する旨を規定するにとどまり、外国人がわが国に入国することについてはなんら規定していないものであり、このことは、国際慣習法上、国家は外国人を受け入れる義務を負うものではなく、特別の条約がない限り、外国人を自国内に受け入れるかどうか、また、これを受け入れる場合にいかなる条件を付するかを、当該国家が自由に決定することができるものとされていることと、その考えを同じくするものと解される(略)。したがつて、憲法上、外国人は、わが国に入国する自由を保障されているものでないことはもちろん、所論のように在留の権利ないし引き続き在留することを要求しうる権利を保障されているものでもないと解すべきである。
在留期間更新は、外国人に保障すべき基本的人権ではなく、上記の出入国管理及び難民認定法と、そこで定められた手続によって初めて認められるものだということです。憲法で権利として保障されていない以上、在留期間が更新されなかったからといって、その法務大臣の決定が憲法違反だということにはなりません。
被上告人が前述の上告人の政治活動をしんしやくして在留期間の更新を適当と認めるに足りる相当の理由があるものとはいえないとし本件処分をしたことによつて、なんら所論の違憲の問題は生じないというべきである。
というわけで、すでに明らかなように、選択肢1は判例の趣旨として正しいことを述べています。
外国人の入国の自由については、平成21年度にも、外国人の人権についての大問の一部として出題されています。詳しくは、憲法:外国人の入国の自由。
入国の自由が外国人に保障されないことは、今日の国際慣習法上当然であると解するのが通説・判例である。国際法上、国家が自己の安全と福祉に危害を及ぼすおそれのある外国人の入国を拒否することは、当該国家の主権的権利に属し、入国の拒否は当該国家の自由裁量によるとされている。
憲法22条は外国人の入国の自由を保障しておらず、外国人の入国の規制は、国際慣習法上、主権の属性として国家の裁量に委ねられていると解している。前記最高裁マクリーン事件判決は、(中略)入国の自由が外国人に保障されないことが、(中略)最高裁の確定した判例になっていることを明らかにしている。
外国人の権利保障の問題は日本に在留する外国人を対象とするものであって、外国人が日本に入国する権利は日本国憲法下では保障されていないと解するのが通説の立場である。これは、国際慣習法上、国家には外国人の入国を規制する自由が認められることや、現実にも自国や自国民の安全等を守るために入国規制の利益が存在することなどを理由とする。判例も、先のマクリーン事件最高裁判決のなかで、(中略)この立場を採用している。
判例によると,憲法22条2項の定める外国移住の自由は外国人にも保障されるが(略),同条は,外国人が日本に入国する自由については,なんら規定していないとされている(略)。学説・判例とも,外国人の入国の自由については,憲法によって保障されるものではなく,国際慣習法上入国の許否は,各国の自由裁量によって決定されるものとする(略)。
長谷部恭男 『憲法 第4版』 130頁
憲法22条は外国人の入国の自由を保障しておらず,また外国人の入国の許否は国際慣習法上主権の属性としてその国の裁量に委ねられていると解するのが通説・判例である。在留権も、外国人に入国の自由がない以上,入国許否に関する自由裁量の問題とされている。
渋谷秀樹 『憲法』 111頁
外国人は,一般に日本に入国する憲法上の基本的人権を有しないと考えられている。それゆえ外国人の入国を認めるか否かは,国の自由裁量である(略)。マクリーン訴訟判決(略)も,このことを確認している。
また,入国した外国人も,日本に在留する基本的人権を有してはいないとされている。それゆえ,一定の要件の下に,在留許可の更新を拒否し,あるいは強制退去を命じることも憲法に反するものではない。このことは,マクリーン訴訟判決で確認されている。しかしこのことは,法務大臣による在留許可の更新拒否が憲法上自由であることを意味しないはずである。それゆえ,マクリーン訴訟判決は,外国人が憲法上保護された表現の自由を行使していても,法務大臣はそれを在留資格更新の際に消極的な事情として考慮することが許されると述べているが, この点には学説上批判が強い。