憲法:基本的人権  司法書士試験過去問解説(平成15年度・憲法・第1問)




平成15年度司法書士試験(憲法)より。判例の趣旨との合不合を問うもの。

基本的人権に関する次の1から5までの記述のうち,判例の趣旨に合致しないものはどれか。



  • 1  外国人について,その在留期間中に政治活動をしたことを考慮して,在留期間の更新を拒絶したとしても,憲法に違反しない。

  • 2  裁判所が,他人の名誉を毀損した者に対し,事態の真相を告白し陳謝の意を表明する程度の謝罪広告を新聞紙に掲載することを命じたとしても,憲法に違反しない。

  • 3  裁判所が,表現内容が真実でないことが明白な出版物について,その公刊により名誉侵害の被害者が重大かつ著しく回復困難な損害を被るおそれがある場合に,仮処分による出版物の事前差止めを行ったとしても,憲法に違反しない。

  • 4  「交通秩序を維持すること」という遵守事項に違反する集団行進について刑罰を科す条例を定めたとしても,憲法に違反しない。

  • 5  薬局の新たな開設について,主として国民の生命及び健康に対する危険の防止という目的のために,地域的な適正配置基準を満たすことを許可条件としたとしても,憲法に違反しない。


選択肢1は、マクリーン事件の判例のことです。外国人の入国の自由、したがって在留の権利は、憲法上保障される権利とは認められていません。それゆえ、法務大臣がその裁量権によって更新を拒絶しても、違憲にはなりません。この選択肢は、判例の趣旨に合致します。詳しくは、憲法:外国人の在留期間更新
選択肢2は、謝罪広告強制事件の判例のことです。心にもない謝罪文を掲載させられるのは良心の自由の侵害ではないかという議論ですが、判例は「単に事態の真相を告白し陳謝の意を表明するに止まる程度のもの」であれば問題ない、としていますので、この選択肢は判例の趣旨に合致します。詳しくは、憲法:謝罪広告の強制