「コーシー列は収束する」の証明
『経済学のための数学入門』、定理2.2.4(74頁)。
において、コーシー列は必ず収束する。
コーシー列とは何かとか、「収束するならコーシー列だ」といったことについては、まずこちら。
今回の定理は、「コーシー列なら収束する」というわけで、先の定理とあわせて、実数列が「収束する」ということと、その実数列が「コーシー列である」ということが、同値であるということを示しています。
証明の戦略は、二段階です。まず、「コーシー列は有界だ」ということを示します。「有界な実数列からは収束する部分列がつくれる」ので、それを使って、次に、「コーシー列は収束する」ことを示します。
まず、コーシー列は有界であることを示しましょう。
がコーシー列だとしましょう。コーシー列ですから、任意の実数 を固定すると、ある番号 以降は(つまり任意の について)、
が成り立ちます。これらの番号の最初は ですから、任意の について、
が成り立つということもいえます。つまり、 以降の番号の要素は、すべて、 から距離 の圏内にある、ということですね。
てことは、実数 は、それらの番号の要素のどれよりも「小さくない」ですし、実数 は、それらの番号の要素のどれよりも「大きくない」ってことですよね。
だから、それらの要素の集合 を考えると、実数 は の「上界」であり、実数 は の「下界」だということです。つまり、集合 は有界です。
さて、実数列 の要素の集合を とすると、これは、さっきの に、
という 個の要素を付け加えたものにすぎませんから、 が有界なら、 も有界です。集合 が有界ということは、実数列 が有界だということです。
以上で、ある実数列がコーシー列なら、それは有界だということが示されました。
「有界な実数列からは収束する部分列がつくれる」ので、つくっちゃいます。部分列 は実数 に収束する、っと。
はいここで、 を任意に固定します。
上の部分列が収束するってことから、どこかの番号 以降の任意の番号 については、
が成り立ちます。
もとの実数列の方も、これはコーシー列ですから、どこかの番号 以降の任意の番号について
とできます。
当たり前ですが、 と のうち、大きい(小さくない)方(これを と書くことにします。上に出てきた とは関係なく。)以降の番号については、上の二つの不等式がどちらも成り立ちます。
これを使って、三角不等式から一気に仕上げです。 以降の番号の要素については
となりますよねー。これはまさに、もとの実数列が に収束するということです。というわけで証明終わり。