mathematics

掛け算の順序のはなし

菊池誠さんがブログにエントリをあげていた(掛け算の順序問題について)のを読んで、ちょっと思ったので書いておきます(Twitterでもちょっと書きました)。この論争(?)については、存在は知っていたけど中身はチラ見しかしていないので、同様のことは既…

区間縮小法

『経済学のための数学入門』、定理2.2.5(75頁)。 の有界閉区間の縮小列、 を考える。すなわち、 とする。このとき、 である。 まず、有界閉区間というのは、言葉でいうと、○○以上××以下の間に含まれる実数の集合、ということです。つまり、 です。で、それ…

「コーシー列は収束する」の証明

『経済学のための数学入門』、定理2.2.4(74頁)。 において、コーシー列は必ず収束する。 コーシー列とは何かとか、「収束するならコーシー列だ」といったことについては、まずこちら。 今回の定理は、「コーシー列なら収束する」というわけで、先の定理と…

「収束する実数列はコーシー列である」の証明

『経済学のための数学入門』、定義2.2.6(74頁)のあたり。 収束する実数列は、コーシー列である。 実数列の収束については、まずこちら。 ある実数列がコーシー列(Cauchy列)であるというのは、番号がすごく大きくなると(数列がだいぶ進むと)、要素同士…

「収束する実数列は、部分列の収束先に収束する」の証明

『経済学のための数学入門』、練習問題2.2.1(2)(74頁)。 実数列 の任意の部分列 を考える。このとき、 「 が収束し、かつ が に収束する」 ならば 「も に収束する」 部分列についてはこちら。 実数列の収束についてはこちら。 もとの実数列が収束するこ…

「部分列は、もとの実数列の収束先に収束する」の証明

『経済学のための数学入門』、練習問題2.2.1(1)(74頁)。 実数列 の任意の部分列 を考える。このとき、 「 が に収束する」 ならば 「 が に収束する」 部分列についてはこちら。 実数列の収束についてはこちら。 もとの実数列がある実数に収束するときに…

Bolzano-Weierstrassの定理(「有界な実数列からは収束する部分列がつくれる」)の証明

『経済学のための数学入門』、定理2.2.3(72頁)。 有界な実数列からは、収束する部分列がつくれる。 実数列が有界であるとかないとかについてはまずこちら。 部分列についてはこちら。 実数列の収束についてはこちら。 ある実数列が有界だということは、上…

【誤解してました】実数列の収束と、収束先との距離について

Bolzano-Weierstrassの定理(「有界な実数列からは、必ず、収束する部分列がつくれる」)の証明を考えていて、どうもよくわからんなあ、と思っていたら、実数列の収束ということについて、ひどい勘違いをしていたことが判明しました。 てっきり「ある実数列…

実数列の部分列

『経済学のための数学入門』、定義2.2.5(72頁)。 実数列 というのは要するに、 というふうに、実数が無限個並んでいるもののことでした。「並んでいる」ということは、その並びの順番に意味があるということです。そのため自然数 が小さい順に、添字として…

「有界な単調数列は収束する」の証明

『経済学のための数学入門』、定理2.2.2(71頁)。 有界な単調数列は収束する。 単調増加なら最小上界が、単調減少なら最大下界が、収束先である。 有界(とか上界とか下界)についてはまずこちら。あとこちらも。 それから、実数列の収束についてはこちら。…

実数列の収束と大小関係

『経済学のための数学入門』、定理2.2.1(5)(69頁)。 のとき、 実数列の収束についてはまずこちらを。 同じ番号の要素同士を較べたら、つねに一方の実数列の方が数が大きい(小さくない)ときは、収束先同士を較べてもそっちの方が大きい(小さくない)、…

実数列の収束と積

『経済学のための数学入門』、定理2.2.1(4)(69頁)。 のとき、 実数列の収束についてはまずこちらを。 二つの収束する実数列があるときに、各実数列の要素同士をかけあわせてつくった新しい実数列も収束し、その収束先は元の実数列の収束先同士の積になる…

実数列の収束と和

『経済学のための数学入門』、定理2.2.1(3)(69頁)。 のとき、 実数列の収束についてはまずこちらを。 これは直観的に分かりやすいですね。二つの収束する実数列があるとき、それらの実数列の各要素同士の和としてつくられる実数列は、二つの実数列の収束…

実数列の収束とその逆数列の収束

『経済学のための数学入門』、定理2.2.1(2)(69頁)。 のとき(ただし、 かつ )、 である。 実数列の収束についてはこちらをまずどうぞ。 実数列がある実数に収束するとき、その逆数の列は、もとの実数列の収束先の逆数に収束する、ということですね。直…

実数列の収束と正負

『経済学のための数学入門』、定理2.2.1(1)(69頁)。 のとき、 である。 実数列の収束についてはこちら。 これは要するに、数直線上の のこっち側で実数列の収束が起こっているときには、 のあっち側でも、対称的な形で実数列の収束が起こっているよ、と…

実数列の収束

『経済学のための数学入門』、定義2.2.4(68頁)。 「実数列 がある実数 に収束する」とは、 0}"> という正の実数を、なんでもいいから一つ定めると、それに対して番号 が一つ定まり、 以降のすべての番号 について、 との距離が、 となることをいう。 上の…

「非負実数の不等式はは両辺を二乗しても不等号の向きが変わらない」の証明

『経済学のための数学入門』、練習問題2.1.5(66頁)。 , , とする。このとき、である。 目標である を変形してみましょう。 こうなりますね。つまり、 と の大小関係の話だったのが、 と の正負の話になりました。 ここで、, は仮定されていますので、 は決…

英語での数式の読み方:f(x), x^n, m/n

最近MITの数学の講義をyoutubeで聴いていて、読み方がわかったのでメモ。 f(x): f of x xn: x to the n x2は「x squared」、x3は「x cubed」とも。 m/n: m over n

「正の平方根は一意」の証明

『経済学のための数学入門』、練習問題2.1.4(65頁)。テキストに解答が載っていなくて、方針だけなので、あんまり自信ががありませんが。 任意の正の実数 0}"> に対して、 を満たす正の実数 が唯一つ存在する。 証明の方針は、 となるような非負実数 の集合…

「正の数の乗法の逆元は正」の証明

『経済学のための数学入門』、練習問題2.1.3(7)(64頁)。 「乗法の逆元」というのは、元の数にかけたら(乗法の単位元である) になる数のことでした(詳しくはこちら)。いわゆる「逆数」のことです。 の乗法の逆元は だし、 の乗法の逆元は と、元の数…

定理2.1.2 自然数の集合は上に有界ではない

『経済学のための数学入門』、定理2.1.2(65頁)。 自然数の集合 は上に有界ではない。 自然数の集合というのは、 のことですね。 「上に有界」というのは「上界がある」ということです。その場合「最小上界」が存在するんでした(詳しくはこちら)。この「…

定理2.1.1 「下に有界」なら「最大下界」がある。

『経済学のための数学入門』、定理2.1.1(64頁)。 実数集合 の空でない部分集合は、「下に有界」なら必ず「最大下界」がある。 「連続性の公理」のところで、「上に有界」とか「上界」とか「最小上界」については説明しました。それとまったくパラレルな概…

連続性の公理

『経済学のための数学入門』、公理R.5(59頁)。 実数集合 の空でない部分集合は、「上に有界」なら必ず「最小上界」がある。 言葉の説明からいきましょう。 「上に有界」とは、「上界が存在する」ということです。なので、まずは「上界」とは何かを理解しま…

「1は0以上」の証明

『経済学のための数学入門』例2.1.1(3)(63頁)。ただ、テキストのここのところは、誤植もあるし、解説が簡単すぎてよくわからないので、以下はちょっと違った方針をとっています。 実数集合において、0というのは加法の単位元、1というのは乗法の単位元で…

「-1をかけたらマイナスがつく」の証明

『経済学のための数学入門』例2.1.1(2)(63頁)。 任意の実数 について、 である。 というのは、 の、加法の逆元です(逆元についてはこちら)。なので、 というふうに、両者を足すと、加法の単位元である になります(単位元についてはこちら)。 他方、…

「0をかけると0になる」の証明

『経済学のための数学入門』例2.1.1(1)(63頁)。 任意の実数 について、 である。 0というのは、実数集合における加法の単位元です(単位元についてはこちら)。単位元なので、定義上「任意の実数に0を足しても変わらない」という性質を持っています。 み…

「逆元は存在するなら1つだけ」の証明

『経済学のための数学入門』練習問題2.1.1(2)(62頁)。 集合 上で定義された、結合律を満たす演算 について、逆元は、存在するとしたら(各 ごとに)唯一つである 逆元というのは、もとの要素に対してその演算をしてやると、単位元になってしまうような要…

「単位元は存在するなら1つだけ」の証明

『経済学のための数学入門』練習問題2.1.1(1)(62頁)。 集合 上で定義された2項演算 について、この演算の単位元は、もし存在するなら唯一つである。 「演算」というのは加法(足し算「+」)とか乗法(掛け算「×」)のことをイメージしておけばいい。 「…