実数列の収束と積

経済学のための数学入門』、定理2.2.1(4)(69頁)。

のとき、



実数列の収束についてはまずこちらを
二つの収束する実数列があるときに、各実数列の要素同士をかけあわせてつくった新しい実数列も収束し、その収束先は元の実数列の収束先同士の積になる、ということです。

さて、問題になっているのは、実数列 が、実数 に収束するかどうか、ということですから、距離 を考えてやればいいはずです。
そこで式変形をしていきます。

最後の不等号は、足してから絶対値をとるよりも、絶対値をとってから足した方が大きくなる可能性がある、というやつです。三角不等式といいます。
さて、ここから先は、テキストの証明がよくわからなかったので、別のやり方をとっています。
ここで という謎の正数を導入します。 なので、ある番号以降はつねに、

となっているはずです。同じように、 なので、ある番号以降はつねに、

となっているでしょう。それぞれの番号は一致するとは限りませんが、どちらか遅い方(番号が大きい方)以降は、どちらも成り立っているはずです。ここから先は、その設定でいきます。上の式変形につなげると、このとき、次のようになります。

ここまで、 は正だということしか決まっていない謎の実数でしたが、ここから都合にあわせて後付けでその性格を決めていきたいと思います。「都合」というのは、式の最後が となればいいなあということです。
まずは、なんか2乗があるのが邪魔ですよね、なんかね。なので2乗をとっちゃいます。

その上で、この式変形のために にどんな性質が必要かを考えます。簡単ですね。

であればいいわけですから、つまり

です。これを覚えておきましょう。そのうえで、次は一気にいきます。

はい、この式変形が可能なら、これで目標達成です。ではこれが可能であるための の条件は何でしょうか。これも簡単です。というかそのままです。

つまり、

であればいいわけです。これで完成。先ほどの結果とあわせていうと、必要なことは、

だけです。これを満たす は無数にありますが、

とすれば結構です。どっちかの小さい(大きくない)方ってことですね。以上の議論は、任意の について成り立ちますので、つねに、ある番号以降は、

となることが確かめられました。つまり、 に収束するということですね。



今回はテキストがわからんちんだったので、以下のニコ動を参照しました。



ここ何回かで使っている証明の仕方を、ε-N論法といいます。テキストの証明を追っていると、いきなり

が導入されたりして、あまりの意味不明さに唖然としてしまいますが、実際には、上のような議論によって、まずは謎の数として導入しておいて、後から、必要に応じて条件づけをしていっているのです。テキストは、その思考経路を書かないで、いきなり、「準備としてこういう数を導入しておくぞ、理由は後で分かるから心配するな」という態度で証明を書くために、理解が困難になることが多いわけです。