定理2.1.2 自然数の集合は上に有界ではない

経済学のための数学入門』、定理2.1.2(65頁)。

自然数の集合 は上に有界ではない。



自然数の集合というのは、 のことですね。
「上に有界」というのは「上界がある」ということです。その場合「最小上界」が存在するんでした(詳しくはこちら)。この「連続性の公理」を使って、定理を証明します。
自然数の集合に「上界がある」としたら、それはつまり、どんな自然数よりも大きい(小さくない)実数が存在するということですね。これは直観的に間違っている感じがしますが、間違っているということを、連続性の公理から証明するわけです。

背理法を使います。
が上に有界だ、と仮定しましょう。すると、「連続性の公理」により、最小上界 が存在するはずです。
が最小上界だということは、 にはそれより小さい上界はないということですから、 よりも小さい実数、たとえば を考えてやると、これは の上界ではありません。
「上界ではない」ということは、「どの自然数よりも大きい(小さくない)わけではない」ということですから、つまり、「それよりも大きい自然数がある」ということです。その自然数 としましょう。すると当然、

ですよね。移項すると次のようになります。

ここで、右辺だけさらに大きくしてみます。つまり

真ん中を省略すると

となりました。 というのはもちろん自然数ですから、自然数集合 の「(最小)上界」であるはずの よりも大きな自然数 が存在するという結論になってしまいました。これは矛盾です。
矛盾が導かれたということは、最初の仮定が間違っていたということです。つまり「 は上に有界だ」は間違いで、「 は上に有界ではない」が正しいということになります。以上で証明は終わりです。