「正の平方根は一意」の証明

経済学のための数学入門』、練習問題2.1.4(65頁)。テキストに解答が載っていなくて、方針だけなので、あんまり自信ががありませんが。

任意の正の実数 に対して、 を満たす正の実数 が唯一つ存在する。



証明の方針は、 となるような非負実数 の集合の最小上界が、 の正の平方根であることを示すことで、つまり最小上界の一意性によって、正平方根の一意性を示すというわけです。
まずは、正の実数 に対して、集合 を用意します。明らかに、 なので、 ですね( という要素があるから、空集合ではないということ)。
次に、 に注目です。この両辺に をかけてやりましょう。正数の逆数は正です(証明はこちら)から、

となります。任意の に対して、それよりも大きな数 があるということですから、 には「上界」がある、つまり「上に有界」だということがわかりました。上に有界な非空集合には最小上界がありますよね(この辺の事情についてはこちら)。
そこで、 としてやります。以下では、 でも でもないことを背理法で示すことによって、 であることを示します。以下、便宜のために という書き方を採用します。



まずは、 と仮定しましょう。この両辺に をかけてやります。

ここで、自然数 を導入して、両辺に をかけてやります。

がものすごく大きくなると に近づきますから、そのとき最右辺は に近づきます。ということは、どこかで、

となるような を見つけることができます(ここがちょっと自信なし)。このとき、 ですが、同時に でもあります。 の上界であるはずの が、 の要素である よりも小さい、というありえないことになっています。これは矛盾ですから、最初の仮定 が間違いだということになります。



次に、 と仮定します。上と同じように(ちょっと省略しますが)、この両辺に をかけます。

がものすごく大きくなると に近づきますから、どこかで

となるような を見つけることができます。このとき、 の上界ですが、同時に、 でもあります。つまり、最小上界であるはずの よりも小さい上界がある、というおかしなことになりました。これは矛盾ですから、最初の仮定である が間違いだということになります。



以上で、 でもなければ でもないことがわかりましたので、 であるという結論になります。
ここまでで、 の最小上界が、 の正の平方根だということがわかりました。あとは、これが一意だ(つまり、他にはない)ということを示すだけです。

方針としては、実数 が、 を満たす場合に、 とすると矛盾が導かれることを示します。
だということは、 かのどちらかです。
まずは、 としてみます。この両辺に をかけましょう。

となって、

となります。 を仮定したら が導かれたわけですから、矛盾です。なので、仮定の が間違いだということです。
他方、 を仮定しても、まったく同じやり方で、 が導かれてしまって、仮定の が間違いだということになります。
でもなければ でもないということになりましたので、 だという結論になります。
つまり、2乗したら になる正の数というのは、別の文字で書いてみても、必ず と等しいことが示されてしまうわけです。つまり、一意だということです。