実数列の収束と大小関係

経済学のための数学入門』、定理2.2.1(5)(69頁)。

のとき、



実数列の収束についてはまずこちらを
同じ番号の要素同士を較べたら、つねに一方の実数列の方が数が大きい(小さくない)ときは、収束先同士を較べてもそっちの方が大きい(小さくない)、ってことですね。

まずは、前件を検討しますと、

ですから、実数列 を考えましょう。これの収束先はどうなるでしょうか。

2行目から3行目にかけて「実数列の収束と和」の話を、3行目から4行目にかけて「実数列の収束と正負」の話を使っています。この最後の収束先を と書くと、

ということですね。



次に後件の方を検討しますと、

ですから、結局、要するに

を証明すればいいわけです。



証明は背理法を使います。導きたいのは ですから、 を仮定します。背理法というのは、ある仮定をおくと、それ以外の仮定と矛盾する結果が出てしまう、だから最初の仮定が間違い、ということを示す証明法です。今回の場合、「それ以外の仮定」というのは前件の ですから、それの否定、つまり が導かれてしまえばOKということですね。まとめていうと、

を示す、というのが証明の流れです。



まずは、最終的に否定されるべき仮定 を検討しましょう。言葉でいうと「負だから、絶対値をとるとマイナスがつく」ということが言えますね。つまり、

となることを覚えておきましょう。



次に、

という一般的な事実を出発点にします(絶対値の中身は負かもしれないので、絶対値をとると中身より大きくなることがある、ということです)。最左辺を にするために移項をしましょう。

ここで、ちょっと実数 を導入します。 が実数 に収束するということから、ある番号以降は、

が成り立ちます。この結果をもってさっきの不等式に戻りますと、

となりますから、真ん中を抜くと

となっていますね。これで背理法の目標は達成です。定理の仮定に矛盾する結果が出たので、背理法の仮定 が間違いで、その否定である が正しいということになります。これで証明は終わりです。