連続性の公理

経済学のための数学入門』、公理R.5(59頁)。

実数集合 の空でない部分集合は、「上に有界」なら必ず「最小上界」がある。



言葉の説明からいきましょう。
「上に有界」とは、「上界が存在する」ということです。なので、まずは「上界」とは何かを理解しましょう。
言葉で、かつ乱暴に(不正確に)言ってしまうと、実数の部分集合をつくったときに、その部分集合に含まれるどの数よりも大きな(というか小さくない)数があるとき、それがその部分集合の「上界」です。
たとえば実数の部分集合 があったとすると、 は、そこに含まれるどの数よりも大きいので、その部分集合の「上界」です。もちろん、「上界」はいくつも(いくらでも)ありえます。まあ難しい話じゃないですね。
感じはつかめたと思うので、もう少し正確にいきましょう。実数集合の部分集合 を用意します。このとき、

となるような実数 が、 の「上界」(の一つ)です。
以上で、実数集合の部分集合が「上に有界である」とはどういうことかわかったと思います。



次は、「最小上界がある」とはどういうことか、です。
これは簡単です。最小公倍数というのが、いろいろ公倍数がある中の一番小さいやつなのと同じで、最小上界というのは、上界がいろいろある中の一番小さいやつのことです。
ちゃんと書きましょう。上の続きで、「上に有界」な実数の部分集合 を考えます。「上に有界」なので、「上界」がいろいろあるわけですが、その全部を要素とする上界集合を とします。すると、

ですね。ここまでは上で書いたことの復習です。
さてこのとき、

を満たすような が存在すれば、それが の「最小上界」です。 と書きます。
集合 の場合だと、「最小上界」は何でしょうか。簡単ですね。 です。つまり、 ですね。



最後に、最小上界がその集合の要素として含まれる場合と含まれない場合について考えてみましょう。集合 の最小上界

を満たすわけですが、もし の中に最大値をとる要素(最大元) というのがあるとしたら、

なわけですから、もし最大元があるなら、それは最小上界でもあります。逆に、最小上界が元の集合の要素でないなら、その集合には最大元がありません。
例を挙げると、集合 も 集合 も、最小上界は です。ところが、前者の方は最小上界が集合に含まれないのに対して、後者の方は最小上界が集合に含まれます。そして、それに対応して、前者の方には最大値をとる要素がない(どの要素にもそれより大きな要素がある)のに対して、後者の方は最大値 が要素として含まれています。
つまり、

(最小上界が含まれる) (最大元がある)

というわけです。もちろんこれは、

(最小上界が含まれない) (最大元がない)

ということでもあります。