「社会を構成する要素は何か」は社会学の基本問題ではない

 よく、「社会(あるいは社会的システム)の基本要素は、人間か、役割か、行為か、コミュニケイションか、・・・・・・、これが社会学の基本問題だ」みたいなことをいう人がいるが、これは明らかに間違いである。
 少なくとも、この問いよりは「社会をどのような形式的モデルで捉えるべきか」という問いの方が基礎的である。なぜなら、この問いへの回答において要素概念を用いるモデルが採用されなければ先の問いは無意味だし、要素概念を用いるモデルが採用された場合でも、そのモデル内で要素概念がどのような性能を持たされているかによって「何が要素か」も決まってくるからである。
 したがって、ある人が「社会の要素は〜だ」と言っている場合には、まずその人が採用しているモデルにおける要素概念の性能に照らしてその主張を検討することが必要であり、さらにはそのモデル採用自体の妥当性についての検討が必要である。こんな、ちょっと考えたらすぐわかるような手続が、理論研究、あるいは学説研究の議論で踏まれていないように思える。