押井守監督『機動警察パトレイバー THE MOVIE』

機動警察パトレイバー 劇場版 [Blu-ray]

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Avalon』などという糞映画が初体験であったため、押井守に対する評価は最低だったが、これは傑作だった。
冒頭の、自衛隊と暴走レイバーの戦闘シーンとか、音楽がまた素晴らしくカッコよくて、否応なしにアガる。
レイバーの暴走が多発。新型OSの欠陥ではないかと疑われるが、むしろ開発者による故意のプログラミングの疑いが強まる。それを篠原遊馬が追及して行くわけだが・・・しかしこの人いつも大変だなあ。
さて、犯人は、しかし映画冒頭で飛び降り自殺している。そのため、「動機」について明示的に語られることはない。ただ、犯人によってことごとく抹消された個人データの中で、唯一、転居の記録だけ残されている。短期間で二十数回の転居。そのすべてが、再開発で取り壊される予定のボロ小屋。そこを刑事二人組が追って歩くわけだが、この描写が最高によい。東京という都市の本質が、ここに表れているのだと思う。で、この刑事二人も、レイバー隊の隊長の後藤さんも、やはり犯人の動機について明示的には語らない。この示唆感のバランスが素晴らしい。
それから鳥。犯人の住んでいたところには、必ず鳥籠の残骸があるし、最終的にたどり着いた実家は鳥籠だらけ。自殺前には、カラスの足にプレートをつけて空に放していたし、終盤で泉野明が踏み込んだサブコントロール室は鳥だらけだった。この鳥についても、明示的に語られない。というか、観終わってもよくわからない。よくわからないけど考えたくなる。これは、単に思わせぶりなだけの演出の映画に対しては出てこない感情であって、この映画が傑作であることの証拠だ。
この映画の舞台は1999年で、公開は1989年だから、もう20年前の映画だし、この映画の「近未来」はすでに10年前だ。この事件が起こったとき、私はまさに東京にいた。そしていま、地方都市にいて思うのは、この映画で描かれている東京の姿は、社会問題というよりは魅力だろうな、ということ。東京の再開発は、それにかかわる人、それによって失われていくもの、すべて含めて、どうしようもなく魅力的だ。地方の再開発にはそれがまったくない。地方都市を舞台にこんな映画は絶対につくれないと思う。
メカについて一言。どうしても、マニピュレータ(=手)を武器にするのには違和感が。νガンダムサザビーを殴ってたのはもう許したけど。