「岩波現代文庫 文芸」目録リスト一覧 151-200 (2009年-)






日本の音を聴く 文庫オリジナル版 (岩波現代文庫)

  • 177. 柴田南雄,『日本の音を聴く 文庫オリジナル版』,2010年 NEW!!
    • 日本古来の楽器や芭蕉をはじめとする古典文学に表現された日本の音に作曲家ならではの分析が展開される。さらに民俗芸能・社寺芸能の綿密な調査の上に、それらを素材にした氏独自の合唱作品「シアターピース」が産みだされる過程が克明に述べられる。本書は作曲に向けてのフィールドワークの記録であり、自己解説の書である。(解説=田中信昭)



俳句のユーモア (岩波現代文庫)

  • 176. 坪内稔典,『俳句のユーモア』,2010年 NEW!!
    • 俳句はいろいろな読み方をしていい。秀れた俳句であればあるだけ、ユーモアを湛えているもの。ユーモアによって、個人を、表現を、俳句を、世界を、開いてゆくのだ! ちょっと口ずさんで、言葉遊びから、句会の笑いから、自分と他者の感受性や精神のこわばりをほぐしましょう。ネンテン先生が説く、俳句の魅力、その広がり。



絢爛たる影絵 小津安二郎 (岩波現代文庫)



私のシネマライフ (岩波現代文庫)

  • 174. 高野悦子,『私のシネマライフ』,2010年 NEW!!
    • 岩波ホール総支配人・高野悦子氏が、映画興行を一生の仕事とし、あらゆる情熱を注ぎこむようになるまでの自分史。生い立ちからパリ高等映画学院(イデック)への留学、映像作家としての活動と挫折、そして女性として初めて劇場支配人になり、世界の埋もれた名画を紹介する興行活動が成功するまでの興味深いエピソードが満載。



ある補充兵の戦い (岩波現代文庫)

  • 173. 大岡昇平,『ある補充兵の戦い』,2010年
    • 太平洋戦争末期、35歳で比島派遣渡兵団の補充要員として召集され出征した大岡が、フィリピン島で戦い、米軍捕虜となるまでの体験を描いた作品群を収録。捕虜収容所での生活を中心に扱った作品集『俘虜記』の前篇をなす。死に直面した極限状況で人間がいかに考え生きたかを描き出した戦争文学の傑作。(解説=川本三郎



戦艦武蔵ノート (岩波現代文庫)

  • 172. 吉村昭,『戦艦武蔵ノート』,2010年
    • 「嘘ついてやがら。」自分がみた、本当の戦争を伝えるためにこそ、「武蔵」を書くのだ―。厖大な物資と人命をかけて造られた史上最大の戦艦「武蔵」。その建造から沈没に至るまでを支えた人々の巨大なエネルギーとは、一体なんだったのか。作家を突き動かした『戦艦武蔵』執筆の経緯を綿密にたどる取材日記。



詞華断章 (岩波現代文庫)

  • 171. 竹西寛子,『詞華断章』,2010年
    • 万葉・古今から芭蕉・蕪村・晶子まで、季節のうつろいに響きあい、忘れえぬ時を呼びおこす日本の歌蔵。本書は古今の詩歌を味わい、その詞華に誘われて、さりげなく清冽な一文で生の鼓動と魂のありかを伝える。「うた」の調べに添い、ひめやかに生き続けるよろこびと安堵を味わえるひと時。時を超えて共感し、作者との共存を自覚する手がかり。選び抜かれた言葉が心の奥底の扉を開きはじめる。



オノマトピア――擬音語大国にっぽん考 (岩波現代文庫)



グスタフ・マーラー――現代音楽への道 (岩波現代文庫)



大阪ことば学 (岩波現代文庫)

  • 168. 尾上圭介,『大阪ことば学』,2010年
    • 客のややこしい注文には「惜しいなあ、きのうまであってん」と切り返す。動物園のオリの前の立て札には「かみます」とだけ書いてある。距離をとらずにさっぱりと、聞いて退屈せんように、なんなと工夫して話すのでなければ、ものを言う甲斐がない。誤解されがちなことばの意味と背後にある感覚を、鋭く軽快に語る大阪文化論。



湿原(下) (岩波現代文庫)

  • 167. 加賀乙彦,『湿原(下)』,2010年
    • 第一審で死刑と無期懲役の判決を受けた二人にとって、冤罪の汚名を雪ぐことは決して容易ではない。しかし青年弁護士阿久津は献身的な弁護活動で、二人のアリバイを立証しようとする。厚夫は、未決の死刑囚として拘置所で日々を過ごす。人生の長き時を閉ざされた監獄の中で過ごした意味とは何だったのか。厚夫は我が罪を問い続ける。そして二審判決は―。人間にとって魂の救済と愛の意味を問い続ける感動の長編小説。



湿原(上) (岩波現代文庫)

  • 166. 加賀乙彦,『湿原(上)』,2010年
    • 大学紛争が激化した一九六〇年代の終り、謎多き人生を過ごしてきた自動車整備工・雪森厚夫は、スケート場で出会った女子大生・池端和香子に恋心を抱く。T大紛争を巡る混乱の中で、心病む和香子は闘争の有効性に疑問を持ちながら、Y講堂にも出入りする。急接近した二人は六九年二月、冬の北海道への初の旅に出た。帰京した二人は、新幹線爆破事件の容疑者として逮捕される。予期せぬ罠にはめられた二人の孤独な闘いが始まる。



考証 永井荷風(下) (岩波現代文庫)

  • 165. 秋庭太郎,『考証 永井荷風(下)』,2010年
    • 下巻は昭和時代。関根歌との出会いと別れ、銀座での交遊、玉の井通いと名作『濹東綺譚』の発表、母の死、浅草オペラとの関わり、戦時下の窮乏生活、東京大空襲と偏奇館焼失、西国への疎開と岡山での終戦。戦後市川への転居、文化勲章受章、浅草通いと34年4月の死まで。荷風の親族、師、友人、女性関係を網羅。以後の荷風評伝の原型となった基本文献。(解説=中村良衛)



考証 永井荷風(上) (岩波現代文庫)

  • 164. 秋庭太郎,『考証 永井荷風(上)』,2010年
    • 永井荷風歿後最初に書かれた精緻な評伝。上巻は両親の家系に始まり、明治12年の出生から大正末年まで。荷風の行状が数日ずつの単位で記録されている。文学との出会い、米欧への遊学、慶大教授就任、父の死と短期の結婚生活、麻布偏奇館移居、師・鴎外の死。『すみだ川』『腕くらべ』『おかめ笹』などの作品により作家としての名声を確立していく様子が描かれる。



モーム語録 (岩波現代文庫)

  • 163. 行方昭夫(編),『モーム語録』,2010年
    • 「人生にはなぜとか、何のために、というようなことはまるでない」――自分の好奇心のままに人生と人間を眺め、人気を博した文学者サマセット・モーム。融通無碍でちょっとシニカルなモームの言葉は、閉塞する現代社会にも風穴を開けるおもしろさを持つ。本書では、日本で初めて紹介されるインタビュー記事なども含め、約400フレーズをセレクト。楽しくタメになる箴言集です。(岩波現代文庫オリジナル版)



私の信州物語 (岩波現代文庫)

  • 162. 熊井啓,『私の信州物語』,2010年
    • 信州に生まれ育ち、信州の風土に根ざした作品を発表した映画監督・熊井啓。著者は太平洋戦争末期から戦後にかけての青春時代を回顧して、その体験が自己の映画の核になっていると語る。旧制松本高校から信州大学へ、そして独立プロから日活撮影所へ。正義と真実を追究し続けた社会派映画の巨匠の原点がここにある。



推定有罪 (岩波現代文庫)

  • 161. 笹倉明,『推定有罪』,2010年
    • 労働者の街(横浜)で起きた殺人事件。やむなき偽りの自白で有罪とされた男の弁護を控訴審から引き受けた若き弁護士が、無実を信じて執念の闘いに挑む。審理を急いで真実の発見を怠る裁判官に、冤罪を訴える被告人と弁護人らの無償の努力は通じたのか。実在の事件をノンフィクション・ノベルとして丹念に描き、裁判員制度の下ではどう裁かれるのかを読者に問いかける。直木賞作家が渾身の筆で描く異色作。



源氏物語の始原と現在――付 バリケードの中の源氏物語 (岩波現代文庫)

  • 160. 藤井貞和,『源氏物語の始原と現在――付 バリケードの中の源氏物語』,2010年
    • 夜のしじまに語られた源氏物語生成に関わる深い闇、異界との緊張。若き日の著者はカオスの中で、魂を奪われかねないほどの磁力を受けとめながら、物語の生成と展開を渾身の力で解明。源氏研究の新たな地平を拓いた。著者の向き合った源氏物語とは何か。既存の国文学研究に反旗を翻した付論を初めて単行本に収録する。(解説=関根賢司)



二つの同時代史 (岩波現代文庫)

  • 159. 大岡昇平埴谷雄高,『二つの同時代史』,2009年
    • 戦後文学の二巨匠が、その社会意識の目ざめから、青春、戦争体験、文学的出発、戦後文学、安保闘争赤軍事件と、時代を交錯させながら縦横に語る連続対談。変転する文学精神には鋭敏に呼応し、これを撃ち、真摯にかつユーモラスに語り合って倦むことがない。二人の生誕百年を機に初めて文庫化する。



増補 日本美術を見る眼 東と西の出会い (岩波現代文庫)

  • 158. 高階秀爾,『増補 日本美術を見る眼――東と西の出会い』,2009年
    • 西洋とは違う日本独特の美学とは何か?西洋美術史の第一人者で日本美術にも確かな知見を持つ著者が、広い視野から西洋と日本の美術を比較し、日本人の美意識の特質を浮び上がらせる、卓越した比較文化論。近代における西洋と日本の文化交流がそれぞれの美術にもたらした影響にも言及。美術から日本人の精神文化の神髄にせまる最新のエッセイ二本を増補。



わた史発掘 戦争を知っている子供たち (岩波現代文庫)



ものがたりの余白 エンデが最後に話したこと (岩波現代文庫)



ある晴れた日に (岩波現代文庫)

  • 155. 加藤周一,『ある晴れた日に』,2009年
    • 六〇年前に執筆された著者初の長篇小説である本書は、アジア太平洋戦争の日々を主題にしている。戦争に非協力を貫く医学生を主人公に、登場人物それぞれにとっての戦争末期から敗戦までの日々を瑞々しく描き出す。銃後における人間性の抑圧、恋愛と孤独、一九四五年八月の解放の意味が深く問い直される。



荷風と東京(下) 『断腸亭日常』私註 (岩波現代文庫)

  • 154. 川本三郎,『荷風と東京(下)――『断腸亭日乗』私註』,2009年
    • 断腸亭日乗』によりながら、著者自ら荷風が歩いた東京を時間旅行し、失われた風景を幻影を見るように見る。下巻では銀座での交遊、写真や映画との関わり、玉の井の探索と傑作『濹東綺譚』の執筆の経緯、戦時下の浅草の哀愁が描かれ、東京大空襲による偏奇館焼亡、市川・八幡での終焉に至る。田園のなかに古き東京を見た荷風の幸福とはどのようなものであったか。



荷風と東京(上) 『断腸亭日常』私註 (岩波現代文庫)

  • 153. 川本三郎,『荷風と東京(上)――『断腸亭日乗』私註』,2009年
    • 永井荷風(一八七九‐一九五九)の『断腸亭日乗』を読み込み、荷風の生きた時代と彼が愛した東京の細部を浮かび上がらせる。荷風はどんなものを食べ、どんな映画を見、どんな女性と付き合っていたのか。上巻では築地や麻布偏奇館での生活、鴎外への景仰、二世左団次との親交、深川・砂町の探訪、荒川放水路と元八まんの発見などが取り上げられ、併せて経済生活にもふれられる。



黒龍江への旅 (岩波現代文庫)

  • 152. 高野悦子,『黒龍江への旅』,2009年
    • 岩波ホール総支配人・高野悦子氏が、満鉄に勤務した父の死後、父が鉄道を敷設してまわった旧満州の地を旅した印象を書きとめた紀行文。大連、大石橋、瀋陽吉林、哈爾濱、そして国境の町・黒河…。訪れた各地での人々との触れあい、少女時代を過ごした思い出、父から語られた話などが織りこまれ、味わい深い文章で綴られた詩情あふれる紀行エッセイ。



『断腸亭日乗』を読む (岩波現代文庫)

  • 151. 新藤兼人,『『断腸亭日乗』を読む』,2009年
    • 永井荷風(一八七九‐一九五九)は三十八歳から七十九歳の死の前日まで四十二年間にわたって日記『断腸亭日乗』を書き続けた。本書は『日乗』に「老人の性と生」という視点で自らの老いの心境を読み込みつつ迫る出色の荷風論である。荷風晩年に焦点を合わせ、戦災日記、荷風の女たち、社会を見る目、『濹東綺譚』について、著者独特の読みが展開される。