Clark Johnson監督『S.W.A.T.』

なんか、Roger Ebertの評価がやけに高い(3/5)。リアリティがいい、とのことだが、この映画のどこがリアリティ? なんでSWATが犯人の護送とかしてんの?
この点は、映画としての構成から言っても、わけがわからない。確かに、SWAT隊員に合格するための訓練と試験のところは、まあ、まあ面白いと言ってもいいかなというくらいのものではある。だったら、当然クライマックスもSWAT本来の任務である、人質立てこもり事件に対する突入作戦でないとおかしいだろう。というか、タイトルがSWATで、クライマックスが犯人護送って、どんなどんでん返しだよ。意味がわからん。
SWATのチームの面々も、個性が描ききれてないので、終盤で裏切るやつが出てくるのだが、えーと、こいつ誰だっけ、という感じ。黒髪白人の主人公と、黒人の隊長と、女、くらいしか印象に残らない。黒人はSamuel L. Jacksonだし、女はMichelle Rodriguezなのでそりゃそうだけど。しかし、Rodriguezなどは私生活まで描かれるにもかかわらず、クライマックスではたいして活躍せず。
細かいところも駄目で、そもそも冒頭でCGのヘリが何機も飛んでいる時点でだいたいの期待水準は決まったのだが、最後、悪者になった元相棒との格闘シーンも無茶苦茶。まず、装填された銃があるのにそれを捨てて、素手の勝負を挑むって、何がしたいんだ。警官の任務遂行しろよ。もちろん、元相棒との因縁に決着をつけるんだ、という意図はわからんでもないが、因縁もそれほど丁寧に描かれているわけではないので、やっぱり信憑性に欠ける。
で、暗闇での格闘だが、暗すぎて、いまどっちが殴ったのか全然わからない。最終的に主人公が元相棒を蹴っ飛ばしたら、倒れた頭のところに列車が来て轢かれる、というひどい結末を迎えるのだが、ここでも主人公は、元相棒の裏切りがそれほどの惨劇に値するほど怒っているのかどうか不明なので、ほんとにバディだったの? と思わざるを得ない。それよりもっとひどいことには、元相棒は明らかに列車に頭を轢かれたにもかかわらず、列車が通り過ぎたあとの引いたカットでは、レールより結構外側に離れた位置に、かつ特に損傷もない様子で倒れているだけだ。正直、何が起こったのか把握できなくて巻き戻して何回も見たくらい。
というわけで、前半に用意された面白くなりそうな要素を、全部後半で無きものにしてしまうという、実に不可解な映画であった。