セルズニック「官僚制理論への一つのアプローチ」

Philip Selznick, 1943, "An Approach to a Theory of Bureaucracy," American Sociological Review 8, pp. 47-54

三谷メモ

非公式組織論を受けて、その枠組で官僚制を捉えようという試み。

イントロ

  • この論文では官僚制を目的組織の一事例として論じるよ。
  • 最近の研究に基づいて次の三つの仮説を立てるよ。「A. どんな組織にも非公式構造ができるよ。」「B. どんな組織でも組織目的の修正は組織内の過程で行われるよ。」「C. この修正過程は非公式構造の影響を受けるよ。」

公示目標と施行目標

  • 組織が公式に立てている目標を公示目標(professed goal)というよ。これに対して成員が日常的な問題を解決するために従っている目標を施行目標(operational goal)というよ。もう一つ仮説を導入するよ。「D. どんな組織でも手続が実行される際に目指される目標は施行目標だよ。」これは日常的な仕事の上で、公示目標は役に立たないし多くの場合邪魔になるからだよ。

「組織の悲劇」

官僚制という用語

  • 「官僚制的行動」を以上の仮説に従って定義すると、「職員間の権力関係に基づいて形成された非公式組織内での行動パターンと、習慣化された行動パターンによって、組織の公示目標を修正する傾向を持った社会的行為参加者の行動」ということになるよ。要するに、非公式構造がどうなっているかによって他の組織と区別するよ。
  • 組織の規模は、具体的な事例に関しては重要な要因だけど、定義にはいれないよ。

官僚制化の一般的定式化

  • (1)各機能が各人に委任されて、担当者というものができるよ。
  • (2)その結果、ある組織行為について、それをしようと思う人と、それを実際にさせられる人(担当者)の間で、利害関心の分岐が起こるよ。何を問題と思うかが違うからだよ。
  • (3)その結果、組織条件の制御権の取り合いが起こって、その中で職員間の個人的な関係に基づく非公式構造ができるよ。
  • (4)非公式構造が組織の制御権を握ると、それが組織自体を当初の公示目標から逸脱させるようになるよ。

官僚制のリーダーと、彼の雇用者である一般成員との対立

  • 以上の図式を使って、リーダーが一般成員から機能委託を受けた担当者であるような場合の官僚制における、リーダーと一般成員との対立について考えてみるよ。
  • (1)リーダー機能の委託=担当者決定が必要なのは、普通の人はいろいろ忙しいし、向き不向きがあるからだよ。
  • (2)組織運営上必要になってくる仕事と、成員の組織参加動機は異なるのが普通だから、前者を求めるリーダーと一般成員の間には問題分岐が発生するよ。
  • (3)仕事の種類によって価値の上下があるよ。リーダーの仕事は一般の仕事より偉いよ。
  • (4)リーダー職は偉いから、保身という目標が組織の公示目標に優先するようになるよ。
  • (5)組織の専門分化が進んでリーダー職に求められる知識や技能が増えると、リーダーの替えがきかなくなってきて、一般成員のリーダーに対する依存度が高まるよ。
  • (6)リーダーは自分の地位を守るために、一般成員が制御できない権力基盤を求めるよ。つまり組織の外部の支持を求めるよ。
  • (7)リーダーは組織内部に私的な基盤を求めるよ。
  • (8)リーダーは本来公示目標の実現を第一に考えないといけないはずなのに、上のような事情で、自分の行動が組織内部でどんな意味を持つかを第一に考えるようになっちゃうよ。こういう風に、本来どうでもいいことが一番大事なことになっちゃうことが官僚制化ということだよ。
  • (9)組織内の対立は組織内リーダー間の対立になるよ。その際、一般成員の影響としては(a)各人が勝手に動き回らないように官僚制的権力関係が必然化する、(b)リーダーが公示目標を擁護することで一般成員の願望を表明する、(c)圧力集団として圧力をかける、という三通りがあるよ。
  • (10)リーダーは権力を保持するためにイデオロギーをつくるよ。これには(a)リーダーに反抗することは組織全体に反抗することになるというイデオロギー、(b)集権化することがいいことだというイデオロギー、(c)組織全員が組織の意志に服従しなければならないというイデオロギー、(d)現体制の維持を正当化する保守主義イデオロギー、の四種類があるよ。