ブラウ/スコット『公式組織』第1章「序論」

Blau, Peter M. and W. Richard Scott, 1962, Formal Organizations: A Comparative Approach, Chandler, Chapter 1 "Introduction," pp. 1-26

公式組織という概念

社会的組織と公式組織

公式組織とは何かという話をする前に、社会的組織という一般的な概念について明確にしておこう。「社会的組織」とは、人間の行為が社会的に組織化されている様を表す概念である。つまり、人間の行動に観察される規則性のうち、個人としての生理的・心理的な性格に由来するものではなく、彼を取り巻く社会的条件に由来するもののことである。人間の行動に影響を与える社会的条件というのはたくさんあるが、それらは主に次の二つの類型に分けることができ、それぞれが社会的組織の基本的な側面を構成することになる。すなわち、(1)人間の集団、あるいはその集団を包括する集合体における社会的関係の構造と、(2)集合体の成員を統合し、彼らの行動の指針となる、共有された信念や指向である。(p. 2)

社会的組織というのは複数の人間が一緒にいれば必ず発生するものであるが、これに対して、特定の目的を実現するために意図的に設立された組織というのも存在する。ある目的について、それを実現するのに複数の人の協力が必要である場合には、多くの人の行動を調整し、他の人にもこの目的の実現への参加を促すための組織が設立されることになる。たとえば営利企業は、販売して利潤となるような財の生産を目的として設立されるものであるし、また労働者が組合を組織するのは雇用者との交渉力を高めることを目的とするものである。これらのケースでは、実現すべき目標、組織の成員が従うと期待される規則、成員間の関係を定義する地位構造(組織図)は、社会的相互行為の過程の中で自生的に発生したものではなく、成員の相互行為や行動を予想し指導するために、アプリオリかつ意識的に設計されたものである。これらの組織は、特定の目標の実現を明示的な目的として公式に設立されたものであるということを示差的な特徴とするものであるから、この種の組織を「公式組織」と呼ぶことにする。そしてこの、明示的な目的のために公式に設立されたものであるという性格が、社会的組織一般の研究から、本書の主題を区別する基準となる。(p. 5)

公式組織と非公式組織

公式組織の研究

主題の概略

組織研究のディレンマ

組織研究の方法

データ収集の方法

研究設計の類型

組織研究の実践上の問題

比較アプローチ