David Frankel監督『The Devil Wears Prada』 (邦題:プラダを着た悪魔)

おもしろかった。久しぶりに、登場人物たちのこれからについて「みんながんばれ」と言いたくなる映画だった。
服装に無頓着なAndreaことAnne Hathawayが、何かの間違いでファッション業界に入ってしまい、いろいろあって、いろいろ学び、成長するという、いわゆる「行って戻ってきて大人になる」系の話。
「悪魔」こと、編集長のMirandaを演じるMeryl Streepは、この人が出ているだけで映画に観る価値が生まれる。次にどんなキャラクターを作ってくれるのか常に楽しみ。主人公の先輩Emilyも、指南役のNigelも、それぞれに頑張る人たちで、すごく好感がもてる。
ところが他方で、主人公の同棲相手を含む、大学時代からのツレたちは、これがまた見事に魅力がない。彼氏のNateなんて、彼女が大事な仕事で手が離せず、自分の誕生日会に遅れただけで、嫌味言って「俺もう寝るわ」みたいな奴だし、女友達も、ほとんど偏見で一方的に非難するばかり。Andreaが誠心誠意がんばっているのにつけ、なんだこいつら、という印象が強まるばかり。
なので、パリから帰ってきた後の展開にはがっかりした。ファッション業界を去るのはいいとしても、その彼氏の許には戻るなよ。実際、Andreaがすごくいろんなものを吸収して成長しているのに対して、Nateは何一つ学習していない。彼女の謝罪を受けて許してやっただけだ。ああこの男むかつく。
気を取り直して、成長物語としてのテーマは「選択」だ。自分の失脚を防ぐためには部下の落胆をも顧みない、そういう選択を平気でするMirandaに対してAndreaは疑問を呈するが、自分だってEmilyに同じことをしているんだと指摘される。好むと好まざるとを問わず、どちらも「選択」なんだと。この指摘の直後に、Andreaは業界を去るという「選択」をする。他人を蹴落とす選択を平気でしなければならない業界に対する拒絶の選択であり、選択肢集合は自分で選ぶ、というメタ選択でもある。
それから、うまいのは「今までで一番がっかりさせられた」というフレーズに、途中と最後で正反対の意味をもたせるプロット。これはちょっと感動した。
というわけで、パリから戻るまではすばらしい出来だった。と評価しつつ、言いたいのは「そんな彼なら捨てちゃえば?」。That's all.