落合正幸監督『Shutter』 (邦題:シャッター)

ガラガラガラっと閉めるシャッターではなくて、カメラのシャッター。心霊写真もの。米国版Jホラー。
米国人は具現化しないと怖がらないというのは本当なのだろうか。本作のような中途半端な駄作が売れないことの言い訳にしているだけではないのだろうか。
具現化ということでいうと、奥菜恵の大きな目は、あまりにも生きる力と野心に満ちていて、幽霊に全然見えない。奥菜恵がやっているだけで、すでにそこに実体感がある。で、にもかかわらず、その皮膚の中を蠅が這いずり回って目から出てきたり、舌が異常に長く伸びて無理やりキスしてきたりという妖怪化の演出まであるために、まあはっきりいって全く怖くない。というか、中途半端に笑える。
それから、ヒロインが東京の街中の公衆電話から夫に電話するシーンとかあって、一方で普通に携帯電話もあって、時代がいつなのかよくわからない。ヒロインは、わざわざポラロイドを借りてそれで撮りまくるのだが、おそらくその理由になっているのは、心霊写真雑誌の編集長かなんかのリツオが、デジカメとかだと偽造ができるが、ポラロイドはすぐ現像されるから偽造がきかない(だからポラロイドで撮った心霊写真はホンモノだ)といったあたりだと思うのだが、いやそれ、偽造の意志がなければデジカメでいいんじゃないの? 意味がわからん。
そのリツオだが、恋人のセイコの名前を呼ぶときのアクセントが完全に日本人ではない。ちなみにそのあとしゃべりだす彼の英語はものすごい流暢で、こんな英語ペラペラの人材が怪しげな心霊写真雑誌とか作っていることに感動すら覚える(この俳優は韓国系米国人だった)。ほかにも、病院の体重計の目盛りがポンドだったり、不自然な米国人サービスが気になる。というか、首の痛みで病院にいって、体重測ったりすることある? 以前ネットの見すぎで首が動かなくなって(笑)、形成外科いったけど体重測定なんかなかったよ?
オチをいうと、奥菜恵の幽霊が、実はずっと肩車してた(首の痛みの原因はそれ)というのだけど、これが徹底していないから、取ってつけたように見えてしまう。場面場面でいろんなところに現れるし、向こうからにじり寄ってくるシーンもあるし。
それから、奥菜の母親役の宮崎美子は、自殺した娘の死体を、「警察に頼んで」埋葬しないで家の椅子に座らせておいたというのだが、まず警察はそんなこと許可しねえよというのと、一番狂ってて怖いのはこの母親だが、なんか普通に喪主として葬式してて、周りの人も特に問題視していない。わけがわからん。普通ならワイドショウ殺到の異常事件だぞ。(このシーン、確認してみたら、日本語字幕では警察云々のセリフがカットされていた。英語では「Her mother told police she wanted to keep her by her side.」と言っているんだが。)
最後は、途中で霊媒のおっさんが言っていた「なんで助けなかった」というセリフが意外な真実の伏線として効いてくる・・・という設定なのだが、このおっさんの扱いが小さすぎて途中で忘れてしまうために、あまり効果を発揮していない。失敗した意図だけが伝わってくる下手な演出である。
タイ映画『心霊写真』のリメイクということなので、このオリジナルの方に期待したい。いつ見られるかなあ。