Francis Lawrence監督『I Am Legend』(邦題:アイ・アム・レジェンド)

アイ・アム・レジェンド [Blu-ray]

アイ・アム・レジェンド [Blu-ray]

2007年の米国映画。
噂通り、ものすごくつまらん。
まず冒頭で、無人のニューヨークをスポーツカーで疾走するWill Smithの前を、CGの鳥の群れが飛び立ち、CGの鹿の群れが重低音を響かせながら走り、それをCGのライオンが捕食する。どうだすごいだろってことですか。ああ、残念な映画ですね・・・
結局、冒頭で形成された期待通り、CGの化物がすごい身体能力を見せる、というそれだけの映画。CGのゾンビくらいつまらないものはない。
劇場公開版と、ディレクターズカット版の二つのエンディングがついていて、とりあえず両方観た。一言でいうと、そこまでの出来がひどすぎて、どっちでもいいやという感じ。共通する伏線としては、破滅前のニューヨークで死別した娘が、手のひらで形を作って「パパー、ほら、ちょうちょ」みたいにやっている回想シーンがある。
それから、途中で生き残りの母子が出てくるが、この若い母親の方が「他にも生存者がいる」とか言い出す。しかも懐疑的なWill Smithに対して「だって神様がそういったんだもん」とかアレな主張を始める。もちろんWill Smithは科学者だからそんなことは信じない。
この母親はアレな人なので、Will Smithがダメだって言ったにもかかわらず、夜が明ける前に隠れ家に戻っていて、だから跡をつけられている。ゾンビたちはものすごい身体能力を持っているので、隠れ家さえ見つければ鉄のシャッターなんか簡単にあけて侵入してくる。よく3年間も生き残れたなと思う。あと、Will Smithも何を思ったのか、爆弾を爆発させて、シャッターを破壊してあげる。
Will Smithは科学者なので、女ゾンビを一体捕まえて、ワクチンの人体実験を地下の実験室で行っている。追い詰められた一行は、実験室の強化ガラスのシェルターに隠れる。もちろんゾンビたちは突進してくる。ガラスに入るひび。何度も体当たりをかまされて、ひびは全面に広がる。すると、あれ? ひびが何かに見えるぞ、これは・・・そう、ちょうちょだ。娘が言っていた、あのちょうちょだ。そこでふと、アレな母親の方を見ると、首筋にちょうちょのタトゥーが! 科学者であるWill Smithは、こいつ、やっぱアレな女じゃねーか、などとは思わず、すべてを悟る。
娘が死んだのも、アレな女が自分のもとに来たのも、いまゾンビに喰われそうになっているのも、全部神様のお導きだったんだ! アレだと思う方がアレだったんだ! ということで、神の御心に目覚めたWill Smithは、いま自分が聖戦の只中にいることを知る。同時に、自分に課せられた使命をも知る。もちろんそれは、自爆テロだ。手榴弾を片手にゾンビどもに突っ込んだWill Smithは、そして伝説に・・・
というのが、劇場公開版のエンディング。それより前に撮られていたというディレクターズカット版では、ひびはあまり大きくならず、その代わり、ゾンビの皮膚からとめどなく分泌される、なんか汚そうな湿った角質層みたいなやつで、ゾンビの親玉みたいな奴が、ガラスに絵を書く。これは・・・そう、ちょうちょだ。ふと思い出す。女ゾンビの首筋にちょうちょのタトゥーがあったな。そこでWill Smithは悟る。こいつらは、人肉を求めて襲ってきてたわけじゃないんだ。恋人の女ゾンビを取り返しに来てたんだ。そう思って壁を見ると、今まで自分が人体実験に使って殺してきたゾンビたちの写真が一面に貼られている。ゾンビの間にも愛がある。実際、女ゾンビを引き渡すと、「ぐるぁあああ」とか言いながら愛の交歓をしているようだ。それに引き換え、自分はなんてひどいことを・・・ 恋人を取り返したゾンビたちは、主人公たちを殺すことなく帰っていく。めでたしめでたし。
というわけで、ディレクターズカット版の方が、原作のメッセージに近い。近い・・・のだが、あまりにも浅いので、まあどうでもいいかなという感じ。ゾンビどもにも知性とか感情がある、という伏線は回収しているけれど、生き残りの女が「神様が・・・」とか言い出す件の回収にはなっていない。
最後に、根本的な疑問を一つ。Will Smithが「地球最後の男」なのであれば、ゾンビどもは何を喰って生きているのか。自分が最後の一人であり、ゾンビどもが人肉食の野獣だという前提から合理的に導けるのは、少しの間篭城していれば、ゾンビどもは餓死して全滅するだろう、という結論なのだが・・・ (そういえば、この映画の200倍面白い『28 Weeks Later』ではこの合理的な結論が、作品の設定にきちんと組み込まれていたなあ)
というわけで、犬には首輪と綱をつけようね、ということで(この点は、以前観た『The Brave One』でも思ったなあ)。