人文総合演習B 第4回



今回の報告者は、テレビ番組の制作会社への就職を明確に希望している人で、もちろんテレビ好きで、なのでその立場から、ネット悲観論の裏返しとしてのテレビ楽観論を展開している本書に突っ込みを入れてくれました。レジュメでは、本書の論じ方への批判から転じて、今後もテレビがトップメディアであり続けるべきだという規範的な議論を展開しています。
ただそういう「べき論」を支える根拠づけが弱いかなあという感じがします。というか、その種の議論をするのに必要な、「テレビとは何か」ということについての考察が、まだ浅いのではないかと。
ここ10年間のメディア環境の激しい変化というのは、一言でいうと、それまでテレビが独占してきた様々な機能が、それぞれより増強された形で別のメディアによって提供されるようになった、ということではないでしょうか。
これは、ニュースをネットで観たり読んだりできるようになった、というだけのことではありません。また放送された番組を、youtubeやニコ動やveohとかで、(画質音質の劣化を伴いつつも)好きなときに手軽に観られるようになった、というだけにも留まりません。ディジタル化というのはネット化だけではなくて、DVDやBlu-rayの発達によってコンテンツを単体で高品質に楽しむことができるようになることもでもあるわけです。これは映画だけでなく、お笑い番組、アニメ、ドラマ、どれもDVDで観られるようになっています(もちろん多くは有料ですが、レンタルなら映画1本200円くらいだし、宅配してくれるし)。
そうやって、コンテンツ単体としてはテレビではなく、ネットやDVDで楽しむ(ことができ、その方が質が高い)とすれば、「テレビを観る」という体験には何が残るのか。一つは「今やってる感」ですかね。そしてもう一つが、「みんなで観てる感」かな。こういった、ある種の抽象的な体験の形式だけが残ると。
他方で、しかし報告者は、テレビというメディアの特性に適した、テレビならではのコンテンツを制作することに興味があるようなので、ちょっと、かなり狭い道を行こうとしている気がします。テレビならではのコンテンツということは、「みんな」が楽しめなくてはならず、かつ文句を言う人がきわめて少ないようなコンテンツということで、普通にやればつまらないことになるでしょう。それでも・・・というなら、ここから先は私には想像がつかないですねー。ただし、テレビが老人のメディアとして存続することは疑問の余地なしですけどね。
私自身は、家にテレビもないし、ほとんどすべての用をパソコンとネットですますし、その中でもここ2年くらいはラジオ番組のポッドキャストばっかり聴いている人なんで、いや今こそテレビだ!という報告者にはちょっとびっくりしつつ、私が思いもよらない可能性を今後切り開いていってみてくれたら面白いなと思いました。
司会者も、かなりしっかりと予定を組んで、様々な状況に対する対応策を練っていた感じがしました。「あて方」についてちょっとアドヴァイスをすると、「○○さん、何かないですか」というように、新しい話題を一から切り出してもらうための訊き方だけでなくて、「××さんはあんなこと言ってますけど、○○さん、これはちょっとヤバくないですか」みたいな、ある程度流れに乗ってこさせるような聴き方もあります。他にもあると思いますが、うまく使い分けるとリズムがよくなるかもしれません。あとは、やっぱり「間」がまだ狭いかなと思いました。発言希望者が出てくるまで、もう少し待ってもいいかなーと。ただ、沈黙が続くとそれもあれなんで、「あーー、えーーとーー、なんかないですかねーー」みたいな、それ自体としてはたいした意味ない言葉を発声しながら時間を稼ぐ、というやり方もありかと思います。
 
以下、出席者のコメント。

  • 論理力はともかく、表現はよかったと思います。

  • ネットとTVの違いについてというか、そういうところについてあまりいけなかったかなぁ、と思いました。

  • ネットの影響で、新聞から離れる若者が増えているという話を以前に聞いたことがありますが、同様の現象がテレビにも起こっていることを初めて知り、意外だと思いました。

  • レジュメのつくりも文章も上手でした。

  • 発表がスムーズで良かったと思う。2回目だったので司会もしっかりしてたと思います。

  • 今回は討論しやすかったです。でももう少し具体的な答えがあったら良かったなと思いました。

  • 今日の内容はわかりやすかったので、疑問点もみつけやすかったです。みんなが意見を言えてて良かったと思います。

  • ネットを賛成しているのかテレビを見ることを賛成しているのか話しているなかで分からなくなることがあった。けど話し合いとしては、みんな積極的に発言していたと思う。

  • 言いたい事が的確な言葉にならないのが反省点・・・

  • 今回の本は内容が面白かったので、すっと読めました。が、その分問題を発見するのが難しかったです。今日初めてまともに発言した気がします。自分が何を言いたいのか、議論をどうしたいかがわからなくなって混乱しました。難しいです。

  • 報告者の感想  せっかく意見を言ってくれている方の意見を理解がなかなか出来なかったことに加え、意見に対する答えを的確に言うことが出来ず情けないです。私が中心となって話を言わなければいけないはずが、周りの方にホローしていただいて申し訳ないです。

  • 司会者の感想  皆が進んで意見を言ってくれて助けられました。皆が発言するようにとか、沈黙を作らないように考えてばかりで、議論の内容が頭に入ってこない時があった。そのために報告者が困っててもなにも言えなくて、反省。発言したい人を待たせたりして、悪いところだらけだった。すいませんでした。