ルーマン初の著書『行政の瑕疵と信頼の保護』(1963)の「編者による序文」

こういうの資料っぽくていいんじゃないですか。『公式組織』(1964)が初の単著!みたいに言われることが多いわけですが、この本だって、第二章以外は全部ルーマンが書いているのです(ただ、150ページ中、第二章が70ページあるという噂も(笑))。

本研究の外的なきっかけとなったのは、第43回ドイツ法曹大会(於ミュンヘン)である。1960年9月16日に開催された大会第二部において、行政手続の統一的統制の中に、「関連する主題、特に行政行為の公定力の問題を組み入れる」べきであることが勧告されたのである。他方、本研究の内的な正当化は、行政手続法の成文化との関連で、行政行為の公定力の問題を法的に統制することができるかどうか、またそうすべきかどうかという点について、決議自体は過半数を大きく超える賛成票を得たにもかかわらず、法曹大会の鑑定者、報告者、討論者の間で意見が対立し、まだ未決であるという事情にある。
そのため、法曹大会終了後も、この問いをめぐる包括的な研究を進めていくことが適切であると思われた。しかしこの課題を実行するための外的な前提が与えられるためには、1962年の初頭を待たなければならなかった。この年、本学に研究情報機関が設立され、ここで1962年中に、上級参事官Niklas Luhmannと、学術助手Franz Becker博士(ザールブリュッケン)が、違法な授益的行政行為の取消を法的に統制することができるかどうか、またそうすべきかどうか、またどのようなやり方がありうるか、という点についての研究を私の指導の下で開始したのである。彼らの研究は、行政行為の公定力という広い問題圏から見るとその一部分に限定されたものではあるが、それでも、一般的に適用可能でありかつ無内容でない法的統制の原理が存在すること、およびこの原理をドイツ法の立法過程に導入することが可能であることを、特に重要な事例に即して示すことができたのである。
本研究の成果は法案として定式化されているわけではないが、本研究が提出する方針に従うことで、従来の立法、司法、法学説の不十分な関係を超えた法的統制が可能になるだろう。それゆえ連邦や州での行政手続法に関する協議において、本研究を参照しないわけにはいかないだろう。
本研究は五つの章からなる。第一章は序論であるが、それに続く第二章では、ドイツおよび諸外国の法秩序における違法な授益的行政行為の取消に関する法律について扱う。第三章では瑕疵の処理という主導観点をさらに展開し、第四章では法的統制の可能性と必要性について扱い、第五章ではドイツ立法府の状況と成文化の問題を扱う。第二章がFranz Becker博士の筆になる他は、すべて上級参事官Niklas Luhmannの執筆であるが、内容についてはすべての章が両名の詳細な共同考察によるものである。
イタリア、ユーゴスラヴィアポーランドにおける法状況および行政実践の情報提供については、Benvenuti教授(ミラノ)、Liwin教授(ポズナニ)、Vavpetic教授(リュブリャナ)に、この場を借りて心からの謝意を表する。またFranz Becker博士がザールラント大学欧州研究所での職務を免除され、本研究に参加することを可能にしてくれた寛大な取り計らいについて、Constantinesco教授に特段の謝意を表する。
本研究は出版社の御厚意により、行政手続法構想に関する内務省の連邦州委員会の最終協議がまだ本研究を参照できる時期に公刊することができた。この点についてはここで元審議官Broemann博士に謝意を表しておかなければならない。

シュパイヤー、1963年3月1日
教授博士カール・ヘルマン・ウーレ