パーソンズによるルーマンへの言及

 ルーマン教授が強調されておりましたが、人間が成長し行為する中には偶然性の要素というものが含まれております。一連の皮肉な偶然が、この報告の主題とも関わってくるように思います。悲しむべきことにマックス・ヴェーバーはその生涯を56歳で閉じました。私はたまたま、いまそれよりもちょうど20歳年上です。それだけでも皮肉なのですが、加えて、ヴェーバー1920年に肺炎で亡くなったのです。あと20年少し生きていれば、死ななくてもすんだのです。そのころには血清療法により、またその後は抗生物質を使った治療法により、肺炎で死ぬ人は非常に少なくなっていたからです。ヴェーバーがあと20年、研究生活を続けていたらどうなっていたでしょう。ヴェーバーはその短い生涯を通じて驚くべき生産性を示しました。この点は、今日お話しする内容にとって、一種の背景になるでしょう。
Talcott Parsons, 1980, "On the Relation of the Theory of Action to Max Weber's »Verstehende Soziologie«," in: Wolfgang Schluchter (ed.), Verhalten, Handeln und System, Suhrkamp, pp. 150-163 (150 f.)

 パーソンズが死ぬ直前の1979年5月4日、ハイデルベルク大学で行った講演より。ほんとの直前についてはこちらも参照ルーマンは「行為システムの時間構造――行為理論とシステム理論の接続に向けて」という報告をしている。