「NHKブックス」目録リスト一覧 1101-1150 (2007-2010年)






発想のための論理思考術 (NHKブックス)

  • 1150. 野内良三,『発想のための論理思考術』,2010年
    • 論証を正確に積み上げていく論理学の思考は、どうしても「あたりまえ」の結論に終始しがち。論理学の限界を見定め、論理学を鍛え直すことで、新鮮なひらめきを生みだす思考法を手にいれよう。論理学の初歩である三段論法に秘められた力や、詭弁だと否定されがちな日常的レトリックを生かした、意外性に満ちた推理・推論の方法を明らかにする。正しく捉え、的確に推理し、大胆に発想するための、新しい論理思考のレッスン登場。



太陽の科学 磁場から宇宙の謎に迫る (NHKブックス)

  • 1149. 柴田一成,『太陽の科学――磁場から宇宙の謎に迫る』,2010年
    • 人工衛星「ようこう」「ひので」などの最新成果により、太陽は爆発を繰り返すダイナミックな天体であることがわかった。磁場の作用で、パチンコのようにプラズマが射出するメカニズムや、それが磁気嵐となって地球に影響を及ぼすプロセスを解明する。また、黒点の少ない時期(極小期)イコール太陽活動不活発期であり、黒点減少と気温変動との密接な関わりについても詳しく解説。さらに、太陽研究の知見を援用し、原始星、活動銀河中心核など爆発だらけの宇宙における天体進化の核心にまで迫る。太陽研究の基礎から最先端の成果まで詰まった、知的興奮の書。



メディアスポーツ解体 ~<見えない権力>をあぶり出す (NHKブックス)

  • 1148. 森田浩之,『メディアスポーツ解体――〈見えない権力〉をあぶり出す』,2009年
    • メディアとスポーツ。両者は互いに切磋琢磨する。単独でも十分に力のあるふたつが結びつくと、そこに強大な"権力"が生まれているはずだ。でも意識していなければ、その正体は思いのほか見えづらい。「メディアスポーツ」という名の最強タッグが、日々私たちの生活に及ぼしているパワーの実相を、ナショナリズム、神話、ジェンダー、ヒーロー等のさまざまな事象に沿って丹念に考察していく。メディアとスポーツの錯綜した関係を解きほぐす好著。



「かなしみ」の哲学 日本精神史の源をさぐる (NHKブックス)

  • 1147. 竹内整一,『「かなしみ」の哲学――日本精神史の源をさぐる』,2009年
    • わたしたちは古代から今にいたるまで、「かなしみ」を主題にした歌や物語に慣れ親しんできた。本来厭うべきであるはずのこの感情を積極的に享受し表現してきた日本人の態度から、どのような世界観を引き出すことができるのか。かなしむ「われ」(自分)の中に、日本的美意識や倫理感覚が生まれる瞬間を見定め、かぎりある人間とかぎりのない世界との関係の本質に迫る、日本思想研究の精髄を注ぎ込んだ力作。



天孫降臨の夢 藤原不比等のプロジェクト (NHKブックス)



江戸に学ぶ日本のかたち (NHKブックス)

  • 1145. 山本博文,『江戸に学ぶ日本のかたち』,2009年
    • なぜ江戸という時代は、人気が高いのか。ゆったりとして見える生活や義理人情にあふれる人間関係が、閉塞感を覚える現代人の郷愁を誘うのか。身分制という軛に縛られながら、身分を序列化するのではなく相対化することを指向した江戸社会。現代の官僚やサラリーマンを彷彿とさせる武士の世界から、都市生活の実相や治安維持システムの実態まで、僅かな格差にも怯える現代社会を見直すために、今に通じる江戸時代の価値観や社会の仕組みを江戸学の第一人者が語り尽くす。



水の科学[第三版] (NHKブックス)

  • 1144. 北野康,『水の科学 第三版』,2009年
    • 生命を生みだし、育んできた水。この不思議な物質の由来を、全地球史的観点からたどり、惑星規模で循環するメカニズムを明らかにする。人が生存のより所としている河川水は、地球上にある水の0.0001%にすぎない。環境問題が深刻な人類の危機となっている今日、ますます重要性を増す「水」について、広い視点から議論するための定評ある基本文献。初版刊行以来四〇年にわたり更新されてきた書、最新版登場。



百人一首の歴史学 (NHKブックス)

  • 1143. 関幸彦,『百人一首の歴史学』,2009年
    • 藤原定家の撰した歌集「百人一首」。そこには、かつて栄華を誇った王朝の記憶が幾重にも織り込まれている。陽成、崇徳、後鳥羽などの王家の敗者、元良親王、敦忠、儀同三司母など恋に生きた人々、曾禰好忠藤原実方源重之など、都鄙往還した下級貴族たち…。そうした詠み手たちの分析から、王朝時代史の読み直しを行い、さらには、時代を超えて継承される文化の力を考える。歴史学の立場から王朝文化の枠に踏み込み、近代における王朝時代の認識のされ方まで射程に入れた碩学の野心作。



オペラ・シンドローム 愛と死の饗宴 (NHKブックス)

  • 1142. 島田雅彦,『オペラ・シンドローム――愛と死の饗宴』,2009年
    • ド派手な舞台に華麗な衣裳、奇想天外な物語に魂をゆさぶる音楽、そして、湧き出す情念そのままに歌い上げる歌手たちの声―。イタリアで生まれて四〇〇年、オペラは今なお世界で、「最強の総合芸術」「娯楽の王様」として君臨し続けている。そこでは、王侯貴族のような豪華絢爛な気分を味わってもいいし、形式美を楽しんでもいいし、残酷な悲劇の結末に感涙してもいい。オペラに正しい見方はない。いや、あらゆる見方が正しいのだ。「命をかけるべき最高の遊戯」とまで言い放つ偏愛主義者が説く、入名書でかつ極め付きのオペラ至上論である。



冷泉家・蔵番ものがたり 「和歌の家」千年をひもとく (NHKブックス)

  • 1141. 冷泉為人,『冷泉家・蔵番ものがたり――「和歌の家」千年をひもとく』,2009年
    • 冷泉家は歌聖と名高い藤原俊成、定家を祖先にもち、国宝『明月記』『古今和歌集』などの古文書・古典籍や、伝統的な「冷泉流歌道」を今に伝える「和歌の家」である。四十歳で冷泉家に婿養子に入り現当主となった著者が、千年にも及ぶ「和歌の家」の苦難の歴史を振り返るとともに、典籍類の魅力を、実際に触れた感動を交えて紹介し、歌会、年中行事などの公家文化の精髄を生き生きとつづる。冷泉家文化財を通して日本の伝統文化の特質を再考し、さらには文化の継承保存のあり方をも問い直す一書。



現代日本の転機 「自由」と「安定」のジレンマ (NHKブックス)

  • 1140. 高原基彰,『現代日本の転機――「自由」と「安定」のジレンマ』,2009年
    • 今日、すべての人が被害者意識を抱え、打ちひしがれている。現代日本を覆うこの無力感・閉塞感はどこから来たのか。石油危機に端を発する「七三年の転機」を越えて「超安定社会」というイメージが完成した七〇年代から、バブル景気を謳歌した八〇年代を経て、日本型新自由主義が本格化する九〇年代、二〇〇〇年代まで。政治・経済システムの世界的変動を踏まえながら、ねじれつつ進む日本社会の自画像と理想像の転変に迫る。社会学の若き俊英が描き出す渾身の現代史、登場。



ストリートの思想 転換期としての1990年代 (NHKブックス)



関ヶ原前夜 西軍大名たちの戦い (NHKブックス)



カント 信じるための哲学 「わたし」から「世界」を考える (NHKブックス)

  • 1137. 石川輝吉,『カント 信じるための哲学――「わたし」から「世界」を考える』,2009年
    • 現代に生きるわたしたちは、ひとそれぞれの主観的な感覚や考えを持つ自由と引き替えに、共有する絶対的な真理を失い、猜疑と孤独に陥るしかないのか。カントは、人間の考える力を極限まで吟味し、絶対的な真理は知り得ないという「理性の限界」を証明した上で、人間に共通する〈普遍性〉を、「わたし」の主観の中に見出した。この「アンチノミー」「超越論的哲学」という方法に注目し、デカルトからアーレントまでの「主観」理解と照らしつつ、『純粋理性批判』をはじめ三批判書を、平易に読み解く。若き俊英が、等身大の「わたし」から説きおこす清新なカント入門。



社会学入門 〈多元化する時代〉をどう捉えるか (NHKブックス)



シュルレアリスム絵画と日本 イメージの受容と創造 (NHKブックス)



塩の文明誌 人と環境をめぐる5000年 (NHKブックス)

  • 1134. 佐藤洋一郎/渡邉紹裕,『塩の文明誌――人と環境をめぐる5000年』,2009年
    • 「サラリー」の語源ともなる塩は、人類に必須の資源である。古代から人は塩を得るため、製塩技術を開発し、交易をしてきた。しかし、ときに塩は文明に災厄を招く物質にもなる。その背景には、この地球上に分布する塩などの物質の偏在を、人間の活動がより強めてしまうという大きな問題があった。塩蔵や発酵食品など世界各地の多様な塩の文化を見ると同時に、シュメール文明の崩壊やカリフォルニア最先端農業の困難、消えるアラル海など、塩のもたらす環境危機の仕組みに迫り、塩の二面性から、人間と自然の過去・現在・未来を見つめる。



恐慌論入門―金融崩壊の深層を読みとく (NHKブックス 1133)



思考する言語(下) 「ことばの意味」から人間性に迫る (NHKブックス)

  • 1132. スティーブン・ピンカー,幾島幸子/桜内篤子(訳),『思考する言語――「ことばの意味」から人間性に迫る 下』,2009年
    • なぜことばにタブーが存在するのか?fuck、shit、niggerといったタブー語を取り上げ、意味や用法の分析、情動に関わる脳の仕組みの考察から、なぜ人は特定の語に不快感を抱くのか、その複雑な心理を解明。また、依頼表現や口説き文句の分析をもとに、ことばによる駆け引きで人間関係が調整される様を示し、他者の心理を巧みに推察する憶測のメカニズムに迫る。ことばから人間の認知のクセを読み解くとともに、認知の限界をも超える、言語の無限の可能性を明らかにする。



思考する言語(中) 「ことばの意味」から人間性に迫る (NHKブックス)

  • 1131. スティーブン・ピンカー,幾島幸子/桜内篤子(訳),『思考する言語――「ことばの意味」から人間性に迫る 中』,2009年
    • 人が世界を認識し、思考する際に欠かせないのが、「物質」「空間」「時間」「因果」という生得的概念である。名詞、前置詞、動詞、時制などの検討から、言語に組み込まれた概念を詳しく分析し、人の心は幾何学的な世界把握とは異なり、目的や意図に沿って、対象物や出来事を柔軟に捉えることを明らかにする。また、現実世界を異なるフレームで解釈するためのメタファーは、政治や科学などの複雑な問題を理解し、推論する上で有効であると示す。さらに、ことばと人間心理・社会の間のダイナミックな関係を、人の名前や流行語を切り口に具体的に考察する。



思考する言語(上) 「ことばの意味」から人間性に迫る (NHKブックス)

  • 1130. スティーブン・ピンカー,幾島幸子/桜内篤子(訳),『思考する言語――「ことばの意味」から人間性に迫る 上』,2009年
    • 人は思考の基本となる概念を生得的にもつ。それは「所有」「移動」「目的」などの概念で、言語に組み込まれ、単語の「意味」や、単語と構文の結びつきを規定し、また、これらの概念を柔軟に組み合わせて人は思考する。give、put、takeなどのベーシックな動詞の概念を手がかりに、文法を知らない幼児が複雑な動詞構文をどのように習得し、人の心がことばの意味をどう表象するのかを明らかにする。極端な生得説や語用論、言語決定論を実証的に退け、思考と言語のダイナミックな関係を解き明かす。



源氏将軍神話の誕生―襲う義経、奪う頼朝 (NHKブックス)

  • 1129. 清水眞澄,『源氏将軍神話の誕生――襲う義経、奪う頼朝』,2009年
    • 平家物語』『義経記』『御伽草子』等で語られてきた義経と頼朝の伝承と史実の世界。八幡信仰の読み替えを核に据えることにより、源氏将軍の権威を確立しようとした頼朝。治承・寿永の内乱の中で、私戦を公戦に作り替えるために謀反人に堕とされて、やがて魔王となった義経。二人の交差に、勝者の物語としての源氏将軍神話の誕生と生成を読み取る、気鋭の清新な論考。



寿命論 細胞から「生命」を考える (NHKブックス)

  • 1128. 高木由臣,『寿命論――細胞から「生命」を考える』,2009年
    • なぜ「寿命」という決められた死が存在するのか。じつは寿命は原初の生命には存在せず、有性生殖の誕生と共に生まれたものである。遺伝子の働きからタンパク質の生滅、細胞器官の挙動までゆらぎを孕む生命システムのメカニズムを明らかにし、ゾウリムシからヒトまでの寿命の法則を吟味することで、生物の多様な生と死の姿を描き出す。原核細胞から真核細胞へという進化のドラマを追い「死」を取り込んだ生命の進化戦略に迫る渾身の生命論。



京都型ビジネス 独創と継続の経営術 (NHKブックス)

  • 1127. 村山裕三,『京都型ビジネス――独創と継続の経営術』,2008年
    • 世界的なハイテク企業と伝統産業が共存する都市・京都。グローバルスタンダードとは一線を画しつつ、日本的経営の原点とも言える「人の和」を生かしながら高い競争力を獲得する経営術。その真髄はどこにあるのか。従業員のモチベーションを高める独特のマネジメントから付加価値の高い製品を生み出す開発力、事業継続のために行なう革新まで、ユニークな手法の数かずを経営者・職人への取材をもとに徹底考察。金融に依存したアメリカ型資本主義に陰りが見えるなか、今後の日本企業の経営を考えるうえでのヒント満載の一書。



ロシア文学の食卓 (NHKブックス)

  • 1126. 沼野恭子,『ロシア文学の食卓』,2009年
    • 難解で深遠なイメージがつきまとうロシア文学。だが、実際はけっして暗く重苦しいものではない。即物的な「食」「料理」という観点に注目してみると、さまざまな食事風景が描写されてきたことに気づく。皇帝の豪華な晩餐に、素朴だが家族で囲む食卓…。食卓に現れる料理の数々は、ロシアの多様な地域性、宗教、ときには時代背景や思想をもわれわれの眼前にうつしだす。ロシア文学を、「食」というプリズムをとおして読みなおし、その多彩な世界を浮かびあがらせる、味わい深い一書。



新版 データで読む家族問題

  • 1125. 湯沢雍彦/宮本みち子,『新版 データで読む家族問題』,2008年
    • 非婚時代の到来と世界一となった少子・高齢化、若者の就職難と雇用の流動化…。先の見えない時代に、世帯の規模が縮小する一方で、伝統的な三世代世帯は地方を中心に依然として残り、家族の紐帯や安らぎを希求する割合が高まりを見せる。転換期を迎えた日本の家族はどこへ向かうのか?最新の統計データと豊富な図表を駆使し、一〇〇余りの項目から家族が抱える諸問題を検討し、変化の様相とその要因に迫る、注目の一書。



現代帝国論―人類史の中のグローバリゼーション (NHKブックス)



かたちの日本美 和のデザイン学 (NHKブックス)

  • 1123. 三井秀樹,『かたちの日本美――和のデザイン学』,2008年
    • 今や世界的な評価を受ける日本のデザイン感覚。その背景にある日本人独自の造形原理とは何だろうか。リアリズムにとらわれず自然を抽象化する日本の造形原理は、ジャポニスムとして西欧に衝撃を与え、デザインという考え方そのものの出発点ともなった。浮世絵やキモノ、陶器、大和絵といった日本の伝統美術を、「斜線」「余白」「ぼかし」「にじみ」「紋」などデザイン学の視点から多角的に分析することで、現代のデザインにまで通底する「かたちの日本美」に迫る。



欲望としての他者救済 (NHKブックス)

  • 1121. 金泰明,『欲望としての他者救済』,2008年
    • わたしたちは日々、さまざまな場面で他者へ手を差しのベようとする。お年寄りに席を譲り、災害救援のボランティアに出かけ、発展途上国へ井戸を掘りに行くこともある。このように自分の利益や資産、時間を消費してまで他者を救済することにどのような理由付けが可能なのだろうか。ホッブズ、ルソー、ヘーゲルらの哲学・思想を援用しつつ、自身も在日韓国人政治犯救援運動に関わった経験を踏まえ、人権論の立場から、ひとつの方向性を提示しようという試み。救済に逡巡するすべての人を力づける一書。



集中講義! アメリカ現代思想 リベラリズムの冒険 (NHKブックス)



宗像大社・古代祭祀の原風景 (NHKブックス)

  • 1119. 正木晃,『宗像大社・古代祭祀の原風景』,2008年
    • 今も日々の祈りが絶えない沖津宮中津宮辺津宮(宗像大社)は、農耕儀礼が中心の神道には珍しく、豪壮な「みあれ祭り」など、海洋漁労文化が花開く異色の神社である。沖ノ島の中腹に鎮座する13の巨岩には、23の古代祭祀の遺跡が集中。当時、垂涎の的だった大量の銅鏡や鉄〓(てい)をはじめ、中央政権の古墳をしのぐ超一級の遺物が出土。その数は国宝に指定されたものだけでも8万点を数える。遺跡には4世紀後半から10世紀の祭祀の痕跡が歴然と残り、およそ600年間に、岩上から露天へと祭祀の場も形態もその目的も大きく変容したことを、雄弁に物語る。朝鮮半島・中国への玄関口であり、祖国防衛の宗教センターとして、宗像大社の果たす役割は何か、どのような祭祀が行われていたのか?チベットなど世界の密教遺跡を踏査した経験、数次に及ぶ学術調査の成果を援用しつつ、宗教学の異才が、古代日本最大のミステリーに挑む。



偶然を生きる思想 「日本の情」と「西洋の理」 (NHKブックス)

  • 1118. 野内良三,『偶然を生きる思想――「日本の情」と「西洋の理」』,2008年
    • 人生に起こる不意の出来事、たまさかの出会いに対して、私たちはどのような態度をとり、かかわるべきか。真理は必然にのみ宿ると考えたプラトン以来の西洋の論理は、常なるものを求めるゴーチエなど西洋文学にまで貫流する。一方、芭蕉俳句・随筆など日本の伝統的な芸術表現には、偶然を「無常」として甘受する感性が溢れている。日欧の対比をふまえ、偶然の愛を必然に高めたボーヴォワールや西洋哲学の理と日本の情の間で偶然の意味を考えた九鬼周造の思考と生き様を追いながら、偶然を育む道筋を探る珠玉の論考。



聖者たちの国へ―ベンガルの宗教文化誌 (NHKブックス)

  • 1117. 外川雅彦,『聖者たちの国へ――ベンガルの宗教文化誌』,2008年
    • 神秘的な霊力が日常の延長として語られるベンガルの聖者たちの世界では、今も、聖者や修行者たちによって光に包まれる照明体験や天界飛行など不思議な出来事が体験されている。霊験あらたかな聖者を祀った廟では、祭礼・縁日が催され、バウルと呼ばれる歌い手が宗教歌を歌い、にぎやかな祝祭的空間が営まれる。また、近年、ムスリムの宗教的ナショナリズムが強調されるバングラデシュにあって、イスラームヒンドゥーの共存を目指す鍵として聖者信仰に新たな光が当てられている。心の癒しとして機能する聖者たちの世界に迫り、グローバル化の中で変容を遂げつつある、スピリチュアルの新たな可能性を問うユニークな一書。



細胞の意思 〈自発性の源〉を見つめる (NHKブックス)

  • 1116. 団まりな,『細胞の意思――〈自発性の源〉を見つめる』,2008年
    • 体内に異物が侵入すると、自らをカーペットのように広げ、仲間たちと協力し合いこれを覆ってしまう大食細胞。目的地である生殖巣に向かって、さまざまな困難を乗り越え胚の体内を移動する始原生殖細胞。外的変化にしなやかに対応しながら的確に行動する細胞たちのけなげな姿を生き生きと描き、生命を分子メカニズムの総体ととらえる硬直した発想を超えて、細胞こそが自発性の根源であることを力強く打ち出す。生命という複雑な現象の本質に迫る野心作。



最新・月の科学 残された謎を解く (NHKブックス)

  • 1115. 渡部潤一(編),『最新・月の科学――残された謎を解く』,2008年
    • 月の形状、元素組成などから、月が同じ面を地球に向け続けている理由、月の誕生をめぐる仮説などを検証し、現在の最先端の科学的知見を紹介。さらに15の観測機器を積んだ探査衛星「かぐや」によって、新たにどのような謎が解き明かされようとしているのか、わかりやすく解説する。



現代「女の一生」―人生儀礼から読み解く (NHKブックス)

  • 1114. 関沢まゆみ,『現代「女の一生」――人生儀礼から読み解く』,2008年
    • この世に誕生し、初潮、結婚、そして老いて死を迎えるまで、女たちはいくつかの人生の節目を迎えるたびに儀礼を重ねてきた。「個人化」「私事化」が進むなか、この百年、伝承はどのように持続し、変容、変遷をたどって、今日へ至ったのだろうか。気鋭の女性民俗学者が民俗の伝承波の三波展開という仮説をもとに、近現代における女たちの生活変化に迫る、もう一つの女性史である。



ホモ・フロレシエンシス〈下〉―1万2000年前に消えた人類 (NHKブックス)

  • 1113. マイク・モーウッド/ペニー・ヴァン・オオステルチィ,馬場悠男/仲村明子(訳),『ホモ・フロレシエンシス――1万2000年前に消えた人類 下』,2008年
    • 世界中を驚かせたホモ・フロレシエンシスの発見。それは新たな人類なのか、単なる小頭症の現生人類なのか。ルーシーや北京原人など、さまざまな初期人類との比較や、最新の分析技術の成果から、彼らの正体に迫る。大きな動物は小さく、小さな動物は大きくなるという、「島の法則」の作用は、人類にもおこりうるのか。しかし、激しい論争の渦中、骨は論争相手のもとへ…発見後の混乱を乗り越えて当事者である著者が挑む、ホモ・フロレシエンシスと人類の進化・拡散の謎。



ホモ・フロレシエンシス〈上〉―1万2000年前に消えた人類 (NHKブックス)

  • 1112. マイク・モーウッド/ペニー・ヴァン・オオステルチィ,馬場悠男/仲村明子(訳),『ホモ・フロレシエンシス――1万2000年前に消えた人類 上』,2008年
    • 二〇〇四年一〇月、「ネイチャー」誌の発表に世界が驚愕する。インドネシアで発見された新種人類、通称ホビットの姿は、人類進化史の常識を根底から覆すものであった。わずか一万二〇〇〇年前まで地球上に暮らしていた彼らは、九〇センチほどの身長とチンパンジーなみの脳の容量ながら、石器を用い、火を操り、狩りをして暮らしていたというのだ。世界的な研究ネットワークを総動員しながら、「五〇年に一度」と評される大発見にいたるまでの、冒険に満ちた発掘物語を、発見者自身が描きだす。



母は娘の人生を支配する なぜ「母殺し」は難しいのか (NHKブックス)

  • 1111. 斎藤環,『母は娘の人生を支配する――なぜ「母殺し」は難しいのか』,2008年
    • 娘を過剰な期待で縛る母、彼氏や進路の選択に介入する母…娘は母を恨みつつ、なぜその呪縛から逃れられないのか?本書では、臨床ケース・事件報道・少女まんがなどを素材に、ひきこもり・摂食障害患者らの性差の分析を通して、女性特有の身体感覚や母性の強迫を精神分析的に考察し、母という存在が娘の身体に深く浸透しているがゆえに「母殺し」が困難であることを検証する。「自覚なき支配」への気づきと「自立」の重要性を説き、開かれた関係性に解決への希望を見出す、待望の母娘論。



未来派左翼〈下〉グローバル民主主義の可能性をさぐる (NHKブックス)

  • 1110. アントニオ・ネグリ,ラフ・バルボラ・シェルジ(編),廣瀬純(訳),『未来派左翼――グローバル民主主義の可能性をさぐる 下』,2008年
    • いまや保守化し自己保身に終始するようになった左翼たち。「前衛」「改革」「革命」などの創造的ビジョンはどこへ行ったのか?左翼は本来のクリエイティビティを失ったのか?シアトルやジェノヴァでの抗議デモ、ブラジルにおけるルラ大統領の試み、パリの郊外からフランス全土に広がった叛乱、不安定労働者たちによる自律的なデモ行進…一九八九年以降、およそ一五年の間に世界中で起きた出来事を分析し、そこに、未来への道を切り開く「新たなる創造性」を見出す。コミュニズムの予兆を探る、ネグリ待望の新刊。



刺青とヌードの美術史 江戸から近代へ (NHKブックス)

  • 1109. 宮下規久朗,『刺青とヌードの美術史――江戸から近代へ』,2008年
    • 今日、雑誌や野外彫刻で目にする七頭身美人のヌードとは、全く異なる美の基準に立つ裸体表現が江戸時代に存在した。美人画や刺青画では肌の白さやきめ細かさが重視され、他方、生人形では日常の姿を写し取る究極の迫真性が追求され、生身の人間性を感じさせる淫靡な裸体芸術が花開いた。明治期、人格を除去し肉体を誇示した西洋ヌードを移入すると、伝統の解体や再接続を経て、新たな裸体美が模索される。従来の研究から抜け落ちた美術作品を多数俎上に載せ、日本美術史の書き換えを試みる画期的な論考。



フロイト思想を読む―無意識の哲学 (NHKブックス)

  • 1108. 竹田青嗣/山竹伸二,『フロイト思想を読む――無意識の哲学』,2008年
    • 私たちは日々、このように生きたいとか、こうありたいと思うが、心は脳のような実体がなく、なぜそう願うのか、取り出すことはできなかった。しかし、フロイトは過去の欲望に規定された「無意識」を発見することで、心がエロスや自己承認の欲望によって駆り立てられる存在であることを明らかにした。現在では、汎性欲説やエディプス・コンプレックスなど、誰もが承認できる理論とは言い難く、また実証不可能な仮説群であり、治療論としては時代遅れとされている。しかし、哲学が知的営みによってある世界理解を打ち立てたように、フロイト思想は一つの決定的な人間学を二十世紀思想として打ち立てた。現象学の本質観取によってフロイトから人間学としての本質を引き出し、現代思想に影響を与え続ける優れた思想としてフロイトを読み直す。



生きるための経済学 〈選択の自由〉からの脱却 (NHKブックス)

  • 1107. 安冨歩,『生きるための経済学――〈選択の自由〉からの脱却』,2008年
    • 「消費依存」「ワーカホリック」「バブル現象」「環境破壊」…現代社会の生きづらさはどこからくるのか。出来るかぎり自由であるために選択肢を増やそうと、私たちは貨幣に殺到し、学歴や地位の獲得に駆り立てられる。アダム・スミスから現代の市場理論にまで通底する、"選択の自由"という希望こそが現代社会を呪縛しているのだ。市場(イチバ)で飛び交う創発的コミュニケーションを出発点に、生を希求する人間の無意識下の情動を最大限に生かすことで、時代閉塞を乗り越える道を探究する、著者渾身の市場経済論。



未来派左翼〈上〉―グローバル民主主義の可能性をさぐる (NHKブックス)

  • 1106. アントニオ・ネグリ,ラフ・バルボラ・シェルジ(編),廣瀬純(訳),『未来派左翼――グローバル民主主義の可能性をさぐる 上』,2008年
    • 左翼に延命の途はあるのか?疲弊した左翼をいかに再生するか?左翼政権を支えた社民的な思考モデルが時代遅れになる一方で、シアトルやジェノヴァの抗議デモ、メキシコのサパティスタの蜂起など、グローバル資本に対抗する新しいうねりが生じている。ベルリンの壁が崩壊した一九八九年以降、全世界が"帝国"化へ向かうなかで起きた様々な出来事を考察し、現状に即応できない社会主義・社民的思考に引導を渡すとともに、「みんなでひとつになる」ことを目指す柔軟な闘争形態に、グローバル民主主義への新たな希望を見出す。



十字軍という聖戦 キリスト教世界の解放のための戦い (NHKブックス)

  • 1105. 八塚春児,『十字軍という聖戦――キリスト教世界の解放のための戦い』,2008年
    • 11世紀以降、西欧のみならず、世界の歴史を大きく揺るがした十字軍。数万の大軍を海を超えて、はるか彼方の地に向かわせたものは、何だったのか。十字軍士は何を目指したのか。第一回十字軍の召集、第四回十字軍の転向など、十字軍にまつわるいくつかの通説を解きほぐし、十字軍の歴史を包括的に振り返りつつ、聖戦という十字軍思想の形成に、西欧中世の特質を見出す。



青花の道―中国陶磁器が語る東西交流 (NHKブックス)

  • 1104. 弓場紀知,『青花の道――中国陶磁器が語る東西交流』,2008年
    • 白磁胎に、コバルト顔料で絵付をした彩画磁器、青花。元代、中国の景徳鎮で完成したといわれ、日本では「染付」と呼ばれている。なぜ、この時代、突然出現したのか、今もって謎である。元、明、清代、中国の特産品として、日本、アジア、イスラーム中東、さらにヨーロッパへと運ばれた。青花の伝世品や陶磁片を各地へ訪ね、全く新たな視点から、誕生をめぐる問題や謎をとらえ直し、「新陶磁の道」を提起する意欲作。



泳ぐことの科学 (NHKブックス)

  • 1103. 吉村豊/小菅達男,『泳ぐことの科学』,2008年
    • あなたが知っているクロールや平泳ぎは、唯一の正しい泳ぎではないかもしれない。体組成や泳距離などにより、泳ぎ方は変化するからだ。本書では流体力学の知見や一流選手の泳法分析を踏まえて、泳ぎを効率の良い手のかき・足の蹴りなど個々の動作に分け、反復練習によりその動作を脳に覚えさせた後、再度組み立てなおす"ビルド"という画期的トレーニングを提示。これまで日本水泳界で等閑視されてきたコーチングを見直し、誰でも応用可能なフォーム創りを理論化した決定版の水泳入門。



カンボジア絹絣の世界―アンコールの森によみがえる村 (NHKブックス)

  • 1102. 森本喜久雄,『カンボジア絹絣の世界――アンコールの森によみがえる村』,2008年
    • かつてアンコール王朝が栄え、東アジア世界の文化的中心地であったカンボジアで育まれてきたのが、絹絣である。細くしなやかな生糸を、草木、昆虫などの自然染料を用いて先染めし、母から娘へ、手から手へと伝えられてきた極意の技法で手織りしてゆく。独特の光沢、手触りをもつ、森と先人の知恵が結晶した世界最高の布である。この伝統の絹絣に魅せられ、相次ぐ内戦のなかで、絶えてしまった伝統の技法を発掘し、復興した著者の半生を通して、美しい絹絣の世界を鮮やかに描き出す。500人規模の工房を運営し、さらに森に移転して新しい織物の村を興そうという試みは持続的な国際援助・貢献の範としても世界の注目を集めている。



考える技術としての統計学 生活・ビジネス・投資に生かす (NHKブックス)

  • 1101. 飯田泰之,『考える技術としての統計学――生活・ビジネス・投資に生かす』,2007年
    • 株価や物価の見方から、商品売上げの予測まで、社会人やビジネスマンにとって統計の知識は必須である。しかし統計の醍醐味は、複雑かつ限りある情報を用い、論理的に妥当なアイデアや結論を導き出す点にある。アンケート調査から日本人全体の傾向を把握したり、曜日や天気から明日の居酒屋の来店者数を割り出したりと、統計学の基本的発想を活用し、合理的な意思決定や、精度の高い予測・予想に結びつける技法を示す。注目の若手経済学者による画期的な統計学入門書。