Jeffrey Abramson, Minerva's Owl: The Tradition of Western Political Thought



Minerva's Owl: The Tradition of Western Political Thought

  • Jeffrey Abramson, Minerva's Owl: The Tradition of Western Political Thought
    • ミネルヴァの梟: 西洋政治思想の伝統』(2009年に出た本のペーパーバック化)
       文体は軽いが、内容は真剣。そんな本書は、ソクラテスプラトンに始まる政治思想の伝統へと読者を誘う、読みやすくて楽しい入門書である。偉大な哲学者の議論というのは、ほとんど不朽の価値をもつといっていい。だから、すでに長期間、政治学の勉強をしてきた読者であっても、道徳と権力、正義と戦争、民主制のリスク、悪の必要性、寛容の危険性、幸福の意味といった、永遠の問いに挑戦する本書に魅力を覚えることだろう。著者は、古典的な論者たちと政治論を繰り広げ、政治的ディレンマの永続性を示す現代の事例との活発な対話へと、読者を引きずり込む。議論が深まるにつれて、著者自身が学んだ教師たち、また著者が教えた学生たちの声までもが混ざってくる。その意味で、本書は、偉大な哲学者たちへの賛辞であるだけでなく、教師と学生の間の特別な絆を言祝ぐものにもなっている。
       ヘーゲルの有名な文章で、ローマ神話の女神ミネルヴァの梟は、黄昏になってから知恵を持ち帰るので、現実の政治に光をあてるのには間に合わない、という箇所がある。著者は、現実世界には、立ち向かわなければならない政治問題が存在することを思い出させてくれる。そして品格と情熱に満ちた本書において、著者は真剣に学ぶということがいかに刺激的な営みであるかを教えてくれるのだ。