Dante Alighieri, David R. Slavitt(transl.), La Vita Nuova



La Vita Nuova

  • Dante Alighieri, David R. Slavitt(transl.), La Vita Nuova
    • 『新生』
       ダンテの『新生』(1292-94)は多くの側面をもった作品である。この小著は、なによりもまず、愛を主題とした本である。著者は収録された31の詩を通じて、彼のベアトリーチェに対する愛を語る。初めての出逢い(彼が9歳、彼女が8歳のとき)から、報われぬ愛と偶然の再会を経て、そして出逢いから16年後に訪れる彼女の突然の死と、彼の深い悲しみ、その物語だ。それぞれの詩には、その形式や意味に加え、その詩のもとになった出来事と感情についての解説が付されている。この解説を通じて、詩人は次のような洞察に達する。恋愛とは、救済と神の愛に至る魂の旅路の最初の一歩なのだ、と。彼はベアトリーチェとともに天空の星となることを望む。
       デイヴィッド・スラヴィッドの訳文は読みやすく、また魅力的だ。原書の韻文および散文が、初期ヨーロッパ文学における画期的な傑作の一つであることは言うまでもないが、スラヴィッドの訳文はそれに、なめらかで生き生きとした、そして読者の心に迫る語法とリズムによって、生命を吹き込むのだ。彼の訳文は、本書がダンテの最初の主著として、『神曲』の「若書き」版であるだけでなく、それ自体としての力をもった芸術作品であることを明らかにしてくれる。セス・レーラーの序論は、ダンテを市民生活の詩人として考察している。「ベアトリーチェは、寝室での夢想の中に登場するだけでなく、市街や集会にも姿を現すような存在なのだ」。