J. Scott Turner, The Tinkerer's Accomplice: How Design Emerges from Life Itself



The Tinkerer's Accomplice: How Design Emerges from Life Itself

  • J. Scott Turner, The Tinkerer's Accomplice: How Design Emerges from Life Itself
    • 『職人の協力者: 生命それ自体からいかにしてデザインが生まれるか』(2007年に出た本のペーパーバック化)
       ほとんどの人にとって、生物界というのは何者かによってデザインされた世界のように見える。だから、生物学者がやってきて、そんなのは嘘っぱちだ、と言うと、みんないい気持ちはしないわけだ。生物学者の言い分はこうだ。デザインのように見えるもの、何らかの目的、方向性をもっているとか、知的存在によって設計されたとか言われるものは、ただの錯覚にすぎない。人間の精神は、何も存在しないところに目的の如きものを見出そうとしてしまうものなのだ、と。さて、近年、ダーウィニズムに対する攻撃は激化するばかりであり、それだけに、次の問いはきわめて重要である。我々がデザインを見出してしまうのは精神の作用による虚構にすぎないのか、それとももっと深いところで働いている何かが存在するのか。
       生理学者である著者は、我々が生物界に見出してしまう見かけのデザインをほんとうに理解するためには、ダーウィンの画期的な業績に、もう一つ、現代の分子生物学が遺伝子接合にかまけて忘れてしまっている次元を付け加える必要がある、と雄弁かつ説得的に論じる。その次元とは、生物とその環境との動的な相互作用である。自然選択に環境生理学を組み合わせてはじめて、生命の形態と生命の働き方のあいだの美しい適合性の理解が始まるのだ。
       著者は、デザインの問題を、生物学において非常に重要なものとして取り上げている。生物界はデザインされたものか否か、この激しい論争におけるあらゆる立場の人々に対して、著者の結論は挑戦状を叩きつけることになるだろう。

邦訳

自己デザインする生命―アリ塚から脳までの進化論

  • J.スコット ターナー長野敬/赤松眞紀(訳),『自己デザインする生命: アリ塚から脳までの進化論』,青土社,2009年 NEW!!
    • 「自然選択」 だけでは解けない究極の謎に挑む。そびえ立つアリ塚の塔、高度な機能性をもつ血管や骨、世界を認識する視覚や脳――。意図的にデザインしたかのような精妙さが生まれる理由は、ダーウィンの 「自然選択」 だけでは説明できない。タブーとされてきた領域へと大胆に踏み込み、まったく新しい進化のメカニズムを提唱する生物学・生理学の最先端。