Esther Sternberg, Healing Spaces: The Science of Place and Well-Being



Healing Spaces: The Science of Place and Well-Being

  • Esther Sternberg, Healing Spaces: The Science of Place and Well-Being
    • 『癒しの空間: 場所と健康の科学』(2009年に出た本のペーパーバック化)
       こんな世界じゃ気分が悪いって? 身の回りのごちゃごちゃや歪みが、不調和な色や音が、あなたの精神の治癒反応を乱すのであれば、逆に環境のあり方によっては、治療効果を発揮することもあるのでは? 本書で追求されるのはそんな問いだ。著者は、精神と肉体のあいだの、近くと場所のあいだの素晴らしく豊かな結びつきを垣間見せてくれる。
       著者が紹介するのは、感覚と感情と免疫システムのあいだの複雑な関係を明らかにした様々な研究成果である。最初のエピソードはこうだ。1980年代にある研究者が、窓から緑の見える病室の患者はそうでない患者よりも治癒が早いことに気づいた。快適な景観が、なぜ治癒を早める効果をもったのか。著者はこの問いに答えるために、様々な場所や状況をを取り上げ、感覚の神経生物学を探求していく。本書は、ディズニーのテーマパークやフランク・ゲーリーのコンサートホール、迷宮や庭園を取り上げ、それらがいかにしてストレスの増大や軽減の効果をもつか、いかにして不安や安心のもとになるか、を解説していく。
       感覚が我々を「癒しの場所」へと導くものだとすれば、著者の議論の中で自然の中で我々が占める場所ということが、きわめて重要なものとして現れてくるのも驚くには当たらない。環境の健康は、個人の健康と密接にリンクするのだ。本書が紹介する様々な研究成果は、治癒と健康をいっそう促進するような病院、コミュニティ、住宅環境がデザインの対象となりうることを示してくれている。