Evan Thompson, Mind in Life: Biology, Phenomenology, and the Sciences of Mind



Mind in Life: Biology, Phenomenology, and the Sciences of Mind

  • Evan Thompson, Mind in Life: Biology, Phenomenology, and the Sciences of Mind
    • 『生命の中の精神: 生物学、現象学、精神科学』(2007年に出た本のペーパーバック化)
       生命と精神の関係はどうなっているのだろうか。この問いは長いあいだ、哲学者と科学者を悩ませ続けてきた。本書の探求課題はまさにこの、いわゆる生物学的生命と意識とのあいだの説明ギャップである。
       著者は、分子生物学、進化理論、人工生命、複雑系理論、神経科学、心理学、大陸現象学分析哲学と、様々な分野の議論をあたって、精神と生命のあいだは、これまで考えられていたよりももっと連続的なものであり、現在流通している説明は精神にかかわる生物学や現象学の多くの側面を捉え損なっている、と論じる。生命あるところに精神あり。これが著者の主張だ。生命と精神には、自己組織化という共通の原理がある。そして、精神の自己組織性は、生命の自己組織性の発展版だというのだ。著者は、説明ギャップを埋めようとするのではなく、哲学的分析と科学的分析を整理しなおすことで、生命と意識についての前代未聞の知見にいたるのだ。本書は、現象学と生物学を綜合する書であり、その意味で、著者の出世作 The Embodied Mind: Cognitive Science and Human Experience (Francisc J. Varela, Eleanor Rosch との共著、邦訳『身体化された心』)に続く、重大かつ待望の新刊である。
       本書は面白くて読みやすい、というだけではない。精神理論、生命科学現象学の各分野に新境地を開く著書である。