Naoko Shibusawa, America's Geisha Ally: Reimagining the Japanese Enemy



America's Geisha Ally: Reimagining the Japanese Enemy

  • Naoko Shibusawa, America's Geisha Ally: Reimagining the Japanese Enemy
    • 『同盟国はゲイシャ: 敵国日本イメージの修正』(2007年に出た本のペーパーバック化)
       第二次世界大戦中、米国にとって日本は、東洋の憎むべき敵国であった。ドイツについては、ナチスでない人は「良きドイツ人」として区別されたのに対して、日本人はそういう区別なく、全員が頭のおかしい野蛮人だとして避難されたのだ。ところが冷戦が激化してくると、米国政府は日本を、アジアにおける共産主義に対する防壁とすることにしたのである。
       しかし、ほんの少し前までは、瓶底眼鏡の出っ歯の猿として悪魔化していた「ジャップ」を同盟の相手とすることを、米国の公衆はなぜ受けいれることができたのだろうか。著者はこの啓発的な本で、戦後の20年のあいだに、憎むべき敵がいかにして価値ある同盟国となるにいたったか、その急反転の過程を描き出す。マッカーサー将軍が率いる占領軍は、日本における米国の戦略目標の追求に専念したわけだが、その裏で、米国のリベラルな政治家、ジャーナリスト、映画製作者たちは、長いあいだ気づかれてこなかったが、実はそれと同じくらい重要な目標を追求していたのだ。その目標とは、米国の公衆のあいだに、好ましい日本人という新しいイメージを行き渡らせることだ。
       占領期の回想録から軍事文書まで、裁判記録からハリウッド映画まで、チャリティ・イニシアティヴから新聞や雑誌の記事まで、著者は徹底的に調べた。その結果明らかになったのは、悪の敵国だった日本が、女性的な従属国として、また米国の慈悲の手によって民主主義へと導いてあげなければならない未熟な国としてみられるようになっていく過程である。興味深いのは、この人種、ジェンダー、成熟への強迫が、戦後世界における人種関係や男女平等についての、米国自身の不安を反映したものだという指摘である。本書は、敵対関係にあった国同士が戦後、どのように和解していくのかについての研究書である。しかし同時に、本書には、新たな超大国が世界最大の国家としての役割にどのように順応していったかについての示唆まで含まれているのだ。