David Baker and Todd Ratcliff, The 50 Most Extreme Places in Our Solar System



The 50 Most Extreme Places in Our Solar System

  • David Baker and Todd Ratcliff, The 50 Most Extreme Places in Our Solar System,
    • 『太陽系で最も過酷な50の場所』
       ハリケーン地震津波、火山の噴火――毎日のように耳にする極限事象だが、これらはいずれも、人間にとって極限的というにすぎない。つまり人間にとってそれらが災害だというだけのことだ。ところが本書を開けば、極限ということについての我々の理解は地球外的な次元へと持って行かれることになる。そこで我々は、太陽系というもののおそるべき可能性をまのあたりにするのだ。エヴェレストよりも高い上空にまで達する火星の竜巻。340年間続くハリケーン。南極よりも冷たい「溶岩」で満ちた火山。空から降ってくるダイヤモンドの雨。こうした、宇宙の荘厳と不思議こそが、研究者を動かしてその神秘の中へとより深くより遠くまで進ませる原動力であることを、本書から読み取ってほしい。そうすれば、科学的発見に対する我々の理解の中に、「驚き」という要素を取り戻すことができるはずだ。それこそが著者の狙いである。
       本書は自然災害と宇宙がそれぞれもつとてつもない魅力で、読者を地球の外に誘いだす。そして、それは太陽系についての見方を永遠に変えてしまうほどの重大な旅となるだろう。本書には、NASAが撮影した最新の写真も満載だ。本書を読むという行為は、地球上と地球外の極限地帯を探検することにほかならない。巨大な嵐、噴火する火山、過酷な条件下で生きる生命の可能性。
       本書は事実をただ書き連ねた本ではない。科学というもののダイナミズムを、探求と発見のプロセスとして描き出している。惑星科学を専門とする二人の著者の文章は楽しくかつ魅力的である。最新の展開と未解決の謎を示したうえで、つねに、科学にとって最も大切な問いである「なぜ」に答えようとする努力が本書には随所に見られるからだ。