Thomas G. Andrews, Killing for Coal: America's Deadliest Labor War



Killing for Coal: America's Deadliest Labor War

  • Thomas G. Andrews, Killing for Coal: America's Deadliest Labor War
    • 『石炭をめぐる殺戮: 米国史上最悪の労働戦争』(2008年に出た本のペーパーバック化)
       1914年の春のある朝、コロラド南部の荒涼とした丘陵部で、米鉱山労働者組合のメンバーと、ロックフェラー家に雇われた警備隊およびコロラドの産業王たちに恩のある州民兵とが衝突した。この騒ぎで、女性と子供を含む炭坑夫の家族19名が死亡した。他方、炭坑夫たちは少なくとも30人の男性を殺し、6つの炭坑を破壊し、2つの企業町を打ち壊した。
       本書は、このラドロー虐殺事件と「炭坑大戦争」について、大胆かつ独自の視点を提供するものである。著者は、炭層で始まり、米国史上最悪のストライキとして爆発する変化を描き尽くすことで、ほぼ半世紀にわたってくり返されてきた坑夫ストライキの暴力性について、その原因と結果を明らかにする。そこで暴きだされるのは、土地、労働、企業による産業化、労働者の抵抗、これら各種の力が複雑に絡み合う世界だ。
       本書は十分に練り上げられた構想のもとで執筆された。その出発点として採用されたのが、有機的な世界観である。その結果、本書による炭坑戦争の記述は、伝統的な労働史観をはるかに超えるものとなった。著者は、化石燃料依存型の経済における社会的・環境的正義の論点を考察することで、労働者、消費者、資本家、自然界の間の結合と分割の関係を再考するための強力な事例研究をここに提供するのである。