Bethany Moreton, To Serve God and Wal-Mart: The Making of Christian Free Enterprise



To Serve God and Wal-Mart: The Making of Christian Free Enterprise

  • Bethany Moreton, To Serve God and Wal-Mart: The Making of Christian Free Enterprise
    • 『神とウォルマートに仕える: キリスト教自由企業の成立』 (2009年に出た本のペーパーバック化)
       第二次世界大戦後の米国が、自由市場、自由貿易、自由企業の方向に突き進んだ裏には、福音派キリスト教の働きがあった。ウォルマートの歴史をひもとくと、サンベルト地帯の起業家たち、福音派の労働者たち、ビジネスを学ぶキリスト教徒の学生たち、海外に派遣される宣教師たち、そして自由市場運動の活動家たち、これらの人たちのあいだの複雑なネットワークが見えてくる。著者はこの世界最大の企業によって結ばれた人々の物語を記していくことで、キリスト教の奉仕のエートスが、いかに国内外の資本主義の発展に寄与したかを示すのだ。
       米国の産業は北部の都市住民によって、彼らのためにつくられたと言ってよい。これに対し、田舎の南部人たちは、戦後のサーヴィス部門において、労働者として、経営者として、また消費者として、重要な役割を果たしてきたのだ。そしてこれが、サンベルトをして全国規模の影響力をもつほどの地域に育て上げたのである。南部の農民たちはアッセンブリーラインを経由することなく、鍬を直接バーコードスキャナに持ち替えて、経済の舞台に登場してきた。産業文化の担い手たちは、都市住民であり、近代主義者であり、とりおり急進派であり、多くがカトリックユダヤ人であり、また国際人たることを標榜していた。これに対してポスト産業文化の担い手は、南部訛りでイエス様の名を口にし、組合を馬鹿にし、マリア様と星条旗の歌を歌い、現世および来世での救済を説く、そういう人々だった。ウォルマートの世界の歴史を非凡な筆致で描く本書は、キリスト教プロビジネス運動がトップダウンだけでなくボトムアップの方向でも成長し、それによって企業のグローバル化を宗教的に正当化する経済観を支えてきた様を明らかにする。
       著者は本書による印税その他の収入を、Interfaith Worker Justice (www.iwj.org) とそのジョージア州アセンズ支部であるEconomic Justice Coalition (www.econjustice.org) に寄付している。