Helen Vendler, Dickinson: Selected Poems and Commentaries



Dickinson: Selected Poems and Commentaries

  • Helen Vendler, Dickinson: Selected Poems and Commentaries
    • 『ディキンソン撰集: 作品と解説』
       シェイマス・ヒーニー、デニス・ドナヒュー、ウィリアム・プリチャード、マリリン・バトラー、ハロルド・ブルーム、その他多くの人々が口を揃えて言う。ヘレン・ヴェンドラーは最も精密な詩の読み手の一人である、と。その彼女がエミリー・ディキンソンの詩を150篇選び、その卓越した批評能力で挑んだのが本書である。前著 The Art of Shakespeare’s Sonnets に続き、本書でも、ヴェンドラーは比類なきガイドとして、それぞれの詩を、その様式と想像力の両面から考察する。
       解説の対象とする詩を選ぶにあたって、ヴェンドラーは、「一人称の詩から抽象度の高い詩まで、恍惚の韻文から感情麻痺状態を描いた他に例を見ない詩まで、滑稽噺から苦痛の詩まで」、ディキンソンの詩がもつ多様な側面が明らかになることを目指した。本書には人気のあるお馴染みの詩篇はもちろん多く収録されているが、もっと複雑であまり見ることのない詩も含まれている。その結果、ここに刊行するヴェンドラーの選集は、ディキンソンの詩人としての成長、主題の驚くべき広さ、そしてワーズワースをして「感情の歴史学にして科学」と言わしめたものの啓示、これらを明らかにすることができた。
       各詩篇ごとにつけられた解説を読めば、書き手として、「長年の主題に対して創造力と言語化能力で挑んだ人」としてのディキンソンについて、より深く学ぶことができる。死、宗教、愛、自然界、思考の本質、これらディキンソンの心を奪った主題のすべてが、この解説編で論じられているわけだが、ヴェンドラーはつねに、詩人の驚くべき想像力と言語的創造力を強調する。あまり触れることのない詩でも、すでに知っているつもりの人気の詩でも、ヴェンドラーは、ディキンソンが直感と力を伴なう革命的な韻文の「達人」であることを改めて明らかにしていく。本書はディキンソンを研究する人にとって、また抒情詩を好んで読む人にとって、不可欠のレファレンスブックとなるだろう。