創文社 新刊一覧(2010年)


2010年10月



ドイツ観念論の形而上学―第2部門 講義(1919‐44) (ハイデッガー全集)


2010年9月



政治と宗教―ウェーバー研究者の視座から

  • 柳父圀近,『政治と宗教: ウェーバー研究者の視座から』,創文社,2010年 NEW!!
    • 宗教化された政治は「合理性」を失い、政治化された宗教は「神」を見失う。そうだとすれば宗教は政治の利用を断念し、政治は世俗性に徹することが求められる。そこに初めて、宗教と政治は相互批判による社会貢献を果たせることになる。しかし現実の歴史の中で、政治と宗教の問題は今日までどのように推移してきただろうか? 独自のウェーバー理解をベースに、ドイツや日本の「魔神的な現象」(ダス・デモーニシェ)に真摯に立ち向かった著者渾身の成果。


2010年8月



ハンガリーのギリシア・カトリック教会―伝承と展望

  • 秋山学,『ハンガリーのギリシア・カトリック教会――伝承と展望』,創文社,2010年
    • 中・東欧におけるギリシアカトリック教会は、ビザンティン典礼東方教会法に従いつつ、ローマ教皇の首位権を認めるカトリック教会の一組織である。本書はわが国で初めてその歴史・教会法・典礼・神学を紹介し、その本質が「十字架上の聖体論」にあることを指摘。この聖体共同体からの光を源に、古典文献学・古代学・聖書解釈・教父学の分野に展望を披くと共に、仏教・神道など東洋思想に対してもこの共同体を基点に意義づけを試みる。さらには仏教に旧約的意味づけを与えて、中欧研究や古典古代学・神学のみならず異文化理解や宗教間対話にも重大な示唆をもたらす画期的業績。



ヒュームにおける正義と統治―文明社会の両義性

  • 森直人,『ヒュームにおける正義と統治――文明社会の両義性』,創文社,2010年
    • 「文明社会」とは何か。それは人々がどのように結合し交流する社会なのか。本書では、十八世紀スコットランドの哲学者デイヴィッド・ヒュームの思想に即して、この問いに対するひとつの答えを模索する。ヒュームの叙述は、人間社会が孕む不安定性を見つめつつ、一方では「正義」と「商業」を軸として社会の形成と発展の自然的な可能性を豊かに描き出し、他方では「統治」を鍵概念として社会の強制的な秩序化の峻厳な必要性を示している。さらにそこからは、ヒュームの目に映った文明社会それ自体の矛盾――正義と統治、自由と権力、諸国の調和と対立、商業発展と公債累増の間の矛盾――が明らかになる。はたして現代の我々にとって、ヒュームの描くこの両義性は、既に乗り越えられた過去なのであろうか。


2010年7月



根源的構想力の論理

  • 細谷昌志,『根源的構想力の論理』,創文社,2010年
    • 経験と思想の基礎としての感覚は、その置き換え難い重みをもって、世界の根底にふれ鍛えあげられてソリッドな感覚となる。こうした感覚の根底にはたらく構想力、すなわち「感覚する力」としての根源的構想力の論理を解明する。非在(根源的に現前しえないもの)の根源的現前はいかにして可能か。純粋無垢の煌きは可能か。根源的構想力のはたらきは、純粋記憶の底からなされる、非在のものの反復・再現前化である。まず、直接性切断としての「祭り」と「仮面」そして「言語」が、そこを横切る超越的他者の痕跡と人格のアルケオロジーとして考察され、つづいて「根源的構想力の機動性の深い場」としての詩歌・絵画・彫刻の分析をとおして、そこに生起する命のかたちと永遠のフォルムが明らかにされる。



六朝の文学覚書 (中国学芸叢書 15)

  • 林田愼之助,『六朝の文学 覚書』,創文社,2010年
    • 六朝文学を特徴づける重要な論点を、人間への深い関心と確かな批評眼から、生き生きとした筆致で描き出す。曹操における歌から志の詩への変容、建安詩人による自然描写の確立、曹植にみる危機と文学を考察し、阮籍の難解な韜晦表現を読解。さらには『三国志』注と志怪小説の関係や、文学批評理論としての『南斉書』文学伝論に着眼するとともに、陶淵明論や謝霊運論をも盛り込んで、動乱を生きた六朝読書人の政治と文学の真の姿に迫る。著者が長い間あたためてきた問題に正面から取り組んだ待望の論考は、六朝文学の思想に通底する鉱脈への確かな道筋となろう。


2010年6月



『公事方御定書』研究序説―『寛政刑典』と『棠蔭秘艦』収録『公事方御定書』


2010年3月



国制と法の歴史理論―比較文明史の歴史像



2010年2月



中欧の模索―ドイツ・ナショナリズムの一系譜



中・近世ドイツ都市の統治構造と変質―帝国自由都市から領邦都市へ

  • 神寶秀夫,『中・近世ドイツ都市の統治構造と変質――帝国自由都市から領邦都市へ』,創文社,2010年
    • 本書は、帝国自由都市から領邦都市へとドラスティックに地位を変えたマインツ市の統治構造とその展開を、刊行・未刊行史料を駆使して考察、それを通して広くドイツ統治構造史における中世後期から近世への変質を明らかにした労作。「自由と自治の牙城」中世都市に都市君主制論、「絶対主義的統治の場」近世都市に中間権力論を導入して両時代の統治構造把握に努め、支配契約に基づく統治は、上位の君主支配機構と下位の市民自治機構からなる前近代的な「重層的二元主義」構造であり、中世では双務的二元主義、近世では片務的重層性がより特質的であったことを鮮やかに解明する。



ホッブズ 人為と自然―自由意志論争から政治思想へ

  • 川添美央子,『ホッブズ 人為と自然――自由意志論争から政治思想へ』,創文社,2010年
    • 17世紀のヨーロッパに生きた思想家は、いくつもの難題に直面していた。人為と自然、精神と物体、そして認識と存在。キリスト教共同体とコスモロジーの動揺は、一方では人間を自己の存在の主体としつつ、他方では存在のもろさを露呈させたからである。しかも、人間存在には強さと弱さが共存するという自覚に、自然についての学の展開が重なり合う。まさにホッブズは、人間は精神を持つ肉体として自ら決定できる、しかし物体の運動には全て法則がある、という両立困難な二側面に正面から向き合った。だからこそ彼は、言語のありかたと物体の運動から根源的に考え抜き、人間の情念にも眼を向ける。そして、決定論を直視しつつも、人為的な秩序を作り出そうと苦闘する。自由意志論争から論を起こし、ホッブズの政治思想における精神の役割を探究する本書は、スコラ哲学の伝統を視野に入れつつ、大陸の合理主義的哲学と共通の地平に立ってホッブズの政治思想を捉えようとする、独創的な業績である。



イギリス近世都市の「公式」と「非公式」

  • 川名洋,『イギリス近世都市の「公式」と「非公式」』,創文社,2010年
    • イギリス都市民の日常的営為から伝わってくるものは、高度に抽象化された政治社会思想の論理ではなく、規律が求められる公の場でさえも独自の生き様と気儘な自己表現が許される開放的な社会の雰囲気である。そこに垣間見る都市モラルの本質は、「公共善」を掲げる理想と私益を優先する個人的都合の狭間で起る妥協点の探り合いにある。こうした現実を直視するとき、「公」が善で「私」は悪という単純な二元論でなく、両者の補完関係に踏み込む新しい論理が必要となる。本書は、公と私が重畳するなか自治が実践される現代都市の源流を、一次史料をもとに先進国イギリスの経済拠点に見出しその構造を解明、都市化現象の歴史的意義を問う都市史学の新たな方法論を提唱する。



大目附問答・町奉行所問合挨拶留・公邊御問合 (問答集)

  • 神崎直美(編),『大目附問答・町奉行所問合挨拶留・公邊御問合 問答集9』,創文社,2010年
    • 問答集では、これまで、三奉行、目付といった個々の役所の問答が公表されてきたが、その一翼を担うものとして、本巻では、大目付町奉行所の問答を収録する。大名、旗本らが社会生活を営む上で深い関心を寄せていた服忌の問答を多く含む本巻は、幕府の職制や幕府と大名間の在り方を究明する上で欠かせない史料。


2010年1月



現象学の根本問題 (ハイデッガー全集)