人文総合演習A 第4回 (坂本敏夫『死刑と無期懲役』)

死刑と無期懲役 (ちくま新書)

死刑と無期懲役 (ちくま新書)

今回から報告開始です。最初の回が、そのあとの回の基準となってしまうので、いつもちょっとした不安を抱えながら授業にのぞむのですが、(今回も)無用の心配でした。また今期から採用した「報告×2、コメント×2、司会×1」の5人体制という学会シンポ方式(今回は報告が1名ですが)も、うまく機能したようでなによりです。特筆すべきは司会者の冷静さでしょうか。司会が落ち着いているかいないかで、結構変わってきます。もちろん、報告者、コメンテータともに、質問に対するリプライの迅速さがよかったですね。自分の意見についてあらかじめ考え抜いているからこそできることです。
長くなると続かないので(笑)、授業の場での議論の内容についてはおいておいて、議論のテーマについて簡単にコメントを。一つは、「あんな奴は死ぬべき」だとしても、実践的にはこれが「そういう奴は殺すべき」に変換され、それによって、殺す人、殺し方、殺す相手を正しく特定する方法、といった事柄を定めなくてはいけなくなるということ。この問題について論じる際には、「死ぬ」と「殺す」の区別、特に「人は勝手には死んでくれない」という事実が重要です。
もう一つは、本書もそうですが、死刑囚は反省と改心の機会を得て感動的な美しい話の主人公になることが可能ですが、殺人の被害者は、つねにいい人であったというほとんど存在しない例外的事例を除いて、そうはなれないということ。ワイドショーはつねに被害者を善人に仕立てますが、本人を知っている人にとっては白々しく響くことも少なくないのではないかと思います。感動したときほど中和が必要です。
なお、死刑については、たとえば郷田マモラモリのアサガオ』(全7巻)という漫画があります。一読の価値はあると思います。
いずれにしても、今回の議論を経たことで、出席者のみなさんは、今後、死刑とか刑罰とか犯罪とか冤罪とかの、関連する言論に触れた際に、否応なくそれまでとは違った反応をしてしまうでしょう。それが、この授業がめざす「呪い」です。
 
以下、出席者のレスポンス(司会者のが欠けてますが。早く出してね)。

  • 死刑について、死刑囚の心情などは私たちが理解できるものではないため、死刑囚が自分に起こる死刑をどうとらえるかはわからない。しかし、わたしたち第三者的な立場から見れば、死刑囚が罪を反省し、死にたくないと思ったときにこそ死刑を執行するのが理想の罰し方であると思う。私は死刑制度に賛成であるが、できるだけ死刑囚に改心の気持ちが見られてから執行するべきだと思う。

  • そもそも「償い」、「償う」とは何なのだろうかと感じた。/「死刑への恐怖=反省」では必ずしもなく、「自分は〇〇を殺したけど反省も後悔もしていない!」ということもあると思う。/死刑には被害者遺族のうらみを晴らすという意味も込められているのかもしれない。/他の人の様々な意見を聞いて、だんだんと自分の考えがまとまらなくなっていったので、もっと授業前にまとめておきたい。

  • 回答者は質問者の質問内容を全て聞いたのちに回答をするべきだと思う。話がわからなくなるので。/自分もできていないのだが、1つの質問からどんどん話を広げていけるようにオーディエンスもどんどん食いついていけばよいと思った。/やはり、自分の考えがコメンテーターの人と被ってたりしていたので、視野を広げて読もうと思った。/死刑判決というのは多種多様な意見があるから、政府もしっかり考えてほしいと思った。

  • 今回の討論を通し、やはり人それぞれによって感じるものは違うし、それによって考える意見も様々であると思った。今回は初回だったから、と言い訳を言うわけではないが、議論の流れについていくことができず、発言することができなかった。議論を盛り上げて自分の考えや、みんなの考えを深めることができなかったことが反省点である。明確な考えを持てなかったことが原因ではないかと思う。次回ではこの点を改善して議論に参加できるようにしたい。

  • 司会者の人はもっとたくさんの人に意見を求めて、1人1回は発言させた方がいいと思う。せっかく90分も議論するから!

  • 死刑、無期懲役に共通して求める効果というか意味は、「反省すること」と「改心すること」であるように思えた。今日はあまり発言に参加できず、ただ他人の意見を聞いて自分で考えるだけだった。積極的に発言していきたい。

  • 議論の上で大切なのは相手の意見を最後まで聞くことだと思った。/遺族側からの視点で大きく考えが異なる問題だと感じたし、両方が納得できるあり方を将来見つけていかなければいけないと感じた。

  • 議論のポイントをしぼらないと、レジュメや発言のあげあしとりになってしまう可能性があるなあと感じた。報告者とコメンテーターの意見が三者三様なので、考えるきっかけにはなった。批判、質問をしたあとレスポンスをうけてもう一歩ふみこみ議論を発展させる重要さを感じた。

  • 色々意見が出ていて良かったと思うが、例外的な話題が少し多かったように思うので(特に死刑を望んだ人をどうするか、とか)、難しいけれど、もう少し一般的な論点で議論する時間があってもよかったかなあと思った。初めての討論だったけれど、あんまり沈黙の時間がなくてよかったんじゃないかと思いました。

  • 被告人は反省をすることが罪を償うことになり、最終的には社会復帰をしてほしいという報告者の主張が一貫していて良かったと思います。

  • 人によって本当に考え方が様々で、いろんな意見を聞くことができて有意義な時間だった。ここまでちゃんと討論できると思ってなかったので驚きだったし、新鮮で楽しかった。死刑という問題は今日ここで議論したようにいろいろな見方があってとても難しいものだと思う。

  • 報告者の意見が本全体にふれた上で完成されていたのでわかりやすかった。死刑・無期(終身)と、ただ刑の取り扱いがちがうのではなくて、反省という面から見ると、その差がどんどん不明確になるので問題になるのだと実感した。全体を通して、死刑の中に反省・恐怖・謝罪は全て含めた方がいいんではないかなと考えが深まった。多少論点がずれたとしても、そのことで逆に意見を深められた。司会が上手かったなと思いました。

  • 一回目の討論だったのに、報告者・司会者・コメンテーターの準備は結構できていた。だからこそ、何も発言できなかった自分が恥ずかしいです。悔しいばかりでした。次回からもっと頑張ります。/今回の「死刑と無期懲役」というテーマは、感情も絡んで凄く難しいものだなと改めて実感した。被害者側の立場で考えると、やはり死刑はあるべきと思います。

  • 皆のいろいろな意見を聞けて、いろいろな方向から物事を考えることができておもしろかったです。全ての人が納得するような結論にたどり着くのは難しいですね。

  • [議論の様子について] 発言したいことがもっとあったし、聞きたいこともあったのですが、時間が足らなくて言えませんでした。そこで、自分も含めて、伝えたいことや聞きたいことのポイントをまとめてテキパキと話すように努力や工夫が必要だと思いました。回を重ねるごとに皆で改善していきたいですね。今回が初回でしたが、報告やコメンテーターの皆さん、よくまとめていて素晴らしいと思いました。司会のかたも落ち着いていてとてもよかったです。次回からはなるべく全員の意見が聞けるといいですね!! [今回の議題について]みなさんの前で話せないのは残念ですが、今回言いそびれた点について、報告者とコメンテーターの方に手紙を書こうと思うので、読んでやってくださいm(_ _)m

  • 報告者の感想 オーディエンスの方々がたくさん発表してくれて議論がすすんで良かった。みんなが死刑についてそれなりの考えがあるのだと感じた。

  • コメンテータの感想 自分のレジュメに対する意見、質問にもっと簡潔にわかりやすく答えたかったです。あと、報告者の意見と自分の意見をもっと絡められたら良かった。

  • コメンテータの感想 頭がクルクルしてしまう。/質問を自分の中で別のものに置き換えてしまって、上手く返答することができなかった。/司会に口をはさんでしまった。すみませんでした・・・。

  • 司会者の感想 案外発言しにくいのはオーディエンスの方で、もっと話しやすくできるだけ全員にふれば良かったと思いました。発言する方が思ったことを素直に言えるように、聞く方はうなずいたりして、まず受け入れて聞いていることをアピールすると、発言者はより落ち着いて頭も整理でき、うまく進められると思います。個人的にもっと準備して授業に臨めばよかったです。