Braian De Palma監督『Mission: Impossible』 (邦題:ミッション:インポッシブル)

ミッション:インポッシブル™ スペシャル・コレクターズ・エディション [Blu-ray]

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中学生の時、日テレでやっていた『新スパイ大作戦』が大好きで毎週観てた人間からすると、Phelpsくんのこの貶められ方はやっぱちょっとなあという面がなきにしもあらず。そもそもこの映画のJim Phelpsは、「あの」Jim Phelpsなのかどうなのか。
なんというか、Tom Cruiseの頭の悪そうな顔に引きずられる形で、かなり頭の悪そうな展開になっている。最後の、TGVの屋根の上でのシーンとか、ヘリがトンネルに突入するとか、完全にバカ映画の脚本だろう。TGVから脱出するのに、時速500kmで走る列車の屋根の上に出るとか、頭悪すぎ。しかも海峡トンネルに突入する直前て。もっと余裕みとけよと。
脚本的におかしな展開はまだあって、CIAから追われる身となったEthanたちは、逆にCIAの本部に乗り込んで、NOCのリストを盗む。それをMaxという武器商人に売りつけるためだが、しかし実は本当に渡すつもりはなかったことがあとで明らかになる。・・・なら、あんな危険を冒してまで本物を盗む必要はなかったんじゃ?
あと、Ethanが変装の名手であることはみんな知っているはずなのに、その点についての警戒が、敵対者の間にまったくないのはどうしたことか。
演出についても難があって、死んだと思っていたPhelpsと再会したEthanが、Phelpsの嘘話を聞きながら、Phelpsこそが裏切り者だと気づくシーンである。Ethanは自分が気づいたことをPhelpsに知られないように、Phelpsの話に逐一相槌を打っていく。しかし、Ethanの頭の中では、そして画面の中では、Phelpsが仲間たちを殺していく様子が再生されている・・・という演出なのだが、これが非常にわかりにくい。Phelpsの頭の中(ということは事実そのまま)のような気もしてしまうのだ。回想シーンの最後の方で、同じ出来事について二通りの回想がなされるために、事実そのもの、つまりPhelpsの回想ではないということがやっとわかる、ということになってしまっている。そのとき、あとから仲間になったJean Renoも最初からグルだったことにも気づくのだが、そしてそれはCIA潜入時にRenoの持っていたナイフが、冒頭で仲間の殺害に使われたものであることからの気づきなのだが、観客は冒頭のシーンでそのナイフを見せられていないのであって、完全に後づけである。
最後に、Phelpsが裏切った動機は、要するに冷戦終了によるスパイ需要の低減で、用なし扱いされたのが悔しかった、みたいな話なのだが、しかし映画の最後では、一件落着したEthanのもとに次の任務が届くのである。十分引っ張りだこじゃないか。・・・というのもさることながら、1996年というのは、まだそんな楽観主義が通用した時代だったのだなあとしみじみ思う。