John Stockwell監督『Into the Blue』(邦題:イントゥ・ザ・ブルー)

いつか海賊の沈没船の宝を引き揚げるんだ、と夢見つつ、かたやダイヴィングのインストラクター、かたや水族館のガイドとして働く清く正しい美男美女カップル。そこにお調子者の友人が、ナンパした彼女を連れて遊びに来る・・・わけだが、その出迎えのシーンで惨劇は起こった・・・

二人の男の後ろに見える黒い長髪の女性に注目してほしい。彼女の後ろに見えるガラスの入り口が入国ゲートである(舞台はバハマ)。帽子をかぶった黒人係官の姿も見える。
さて、カットが切り替わった次の瞬間、彼女は時空のひずみに吸い込まれてしまうのだ!

一度くぐったはずのゲートをまたくぐっているっ!! そしてまた主人公たちの後ろに来るのだ。これがタイムループというやつか・・・

この一連の悲劇については、youtubeで確認できるのでどうぞ。以下の動画の最初の方だ。

さて、物語は、偶然にも沈没船を発見した一行だが、同時に、ものすごい量のコカインを積んで墜落した飛行機も発見してしまい、それが原因となってマフィア絡みの大変な目に遭う、という、よくある話である。作り手たちの意図は、Jessica Albaがビキニで水中を優雅に泳ぐ姿を撮りたかっただけだろうから、話はまあいいんだろう。もちろん、サメに齧られて太股の半分がえぐり取られるシーンもあるので、(自分も含め)その筋の人も安心である。
が、主人公カップルがあまりにも超人的に正しいだけで人間味がなく、それに対して主人公の悪友が超人的に困ったやつで、実のところすべての惨劇はこいつのせいで起こっているのだが、まったく誰にも感情移入できない。主人公はこの友人に、「彼女に何かあったら殺すぞ」と脅すのだが、何かあったあとも、「何て言ったか覚えてるな」とか言って、近くの椅子を怒りにまかせて壊すだけ。いやそいつ殺していいから。
最終的に、主人公カップルとこの友人の3人は、海賊の黄金を見つけて大金持ちになるのだが、あれ1人減ってるぞ? というわけで、この友人がナンパした彼女は、実は上述の通りサメに太股の半分を喰いちぎられて死んでいるのだ。ところが、彼女は死んで以降、まったく言及されることがなくなり、最後のシーンも、やったーお宝だーとかはしゃいでいるだけである。馬鹿な男に引っかかったばっかりに、外国で、誰にも悼まれずに死んでいき、すぐに忘れ去られるのである。・・・実にひどい死に方だ。
そういえば、このバカ友人が「俺たちはファミリーだが、彼女は違う」とか言ってたな。いやそうなんだろうけど。