人文総合演習B 第3回



今回はしょっぱなにしては本が難しかったですかね(そうでもない、という声もあり)。
報告者は前期も出ていたということで、無理に初回をお願いしてしまって申し訳なかったですが、良し悪しいずれの点でも見本になってくれたと思います。
良い点から言うと、まず、レジュメの形式が非常にきれいに整理されていて、見やすいということ。うまく改行やインデントを使って、節構成が視覚的にぱっと把握できるようになっています。ついつい「内容がよけりゃいいんだろ?」とか思ってしまいがちなんですが、見た目というのはすごく大切です。
それから、節構成もよく考えられていたと思います。報告が進むに従って、聞く側が本の内容を少しずつ思い出し、また本の中で特に取り上げる章を、なぜ自分がそこを取り上げるのかという理由を呈示しつつやや詳しく紹介することで、徐々に報告者のオリジナリティが顔を出し、対象本から出発しつつも最後にはそのテーマについての報告者独自の議論で落とす、という展開が、うまく決まっていたと思います。
内容に踏み込んで言うなら、報告者の議論というのは要するに、著者とは違った仕方で「ダーウィンの思想」性を示す、つまり自然科学の一部であるところの進化論というものを、「思想」として捉えることで、人文学的な取り扱いの対象とする、ということです。まあ難を言えば、「思想として捉える」ということがどういうことなのか、報告者が思っているほどには明確化されていないということがありますかね。その辺が伝わりにくかったと(私もよくわからないし)。
他方で、良くなかった点としては、かなり大規模な遅刻。報告者はコピー機の不調のせいにしていましたが、コピー機が使えない事態まで想定してリスクを回避しておくのが、報告者としては当然の義務です。私を含めた他の参加者は、貴重な30分をまったく無駄に過ごすことになりました。もちろんその分だけ議論の時間が削られたということもあります。他人の90分を任せられている責任というのはかなり重いものだということを自覚しなければなりません。
それから――演習の中でも言いましたが――他人の質問・異論に対しては、もっと粘らないといけません。粘ってもらってこそ、質問のし甲斐があるというものです。また粘るに値するだけの内容を、事前に練っておくことが必要であることも言うまでもありません。
レジュメに関しては、上でちょっと触れた明確化が不十分ということと関連して、書きっぱなしで、報告者自身が書いたこと(読み上げたこと)を忘れてしまっていることがある、というのも問題でした。レジュメがある以上、参加者はその文言に基づいて考え、質問をします。報告者の頭の中身をのぞきこんでくれるわけではありません。だからこそ、レジュメは、一言一句、端々に至るまで、書き手がコントロールを効かしていないといけません。
司会者は、報告を受けてその内容をまとめ、参加者の側にうまく投げてくれたので論点の整理はなかなかしやすかったかと思います。ただ――これも演習中に言いましたが――場を温めたり、発言を促したりする「操作」を、もっとやってくれてもよかったかなと思います。特に報告初回ですので、とりあえず全員に機械的にでも「発声」をしてもらうということも、あってよかったと思います(そういう意味では「当てる」という「操作」が有効)。まあ、あれですか、私が介入しすぎて混乱させてしまったというのもあるかも。少し反省。
とまあ、いろいろと注文を付けましたが、初回なんで、ということで、「人柱」になってもらったという面が多分にあります。時間の余裕のない中、初回をやらされて、しかも人柱にまでさせられた報告者・司会者には申し訳ないですが、でも初回をやるってことはそういうことだよね〜とか(笑)。
いずれにしても大切なことは、レジュメの一言一句、演習の場での一言一言、視線の投げ方、呼吸・間の取り方、声色、表情、その他もろもろの要素が、すべて、その場において何らかの「効果」を生む、ということであり、それゆえ、それらの要素がすべて、何らかの「戦略」の対象となるということです。言葉だけではまだ実感としてつかめないかもしれませんが、今後の演習の中でそれぞれの仕方でつかんでいってくれればと思います。
 
以下、レスポンスカードより。

  • 具体的に論点がわからないと話し合いも難しいと感じました。が、その論点を見つけるのも今回の授業で身に付けていくべきなのかもしれないと思いました。

  • 難しい話が多くて混乱しましたが、面白い話もあって、楽しい演習になっていたと思います。

  • レジュメ立派だと思いました。本の内容も難しかったので、いろんな質問がでればでるほど複雑になってきて、疲れてしまったのですが、本をよむだけで終わらず、そこから深く考える機会がもててよかったです。司会むずかしそう。報告おつかれさまでした。

  • 私はこの本を1回読んだだけでは内容やダーウィンがどのようなことを考えたかが、あまり理解できなかったのですが、みなさんの指摘する所を聞いていて、少し理解できました。

  • 話の内容が難しくて、わからない部分が多かったです。もうちょっと簡単に説明してほしかったです。

  • 進化論が難しいのと、○○さん(=報告者)のコトバがすごく達者で(?)、頭の悪い私には大変でした。

  • 私は○○さん(=報告者)や他の人の意見を、納得しながら聞いてしまうので、次回からはもっと批判的に物事を見ていきたいと思いました。

  • 何を議論したかったのかが、よくわからなかった。あとは、世界5秒前創造説にみんながやたらこだわっていたので、進化論について話したかったのなら、少し邪魔になっていたかもしれない。

  • 社会的動物の道徳の起源と進化について話したかった。

  • 自分の専門課程の演習とは全くスタイルが違って楽しい事は、まぁ楽しいです。

  • この本の内容は難しかった。言葉も難しくて理解するのが大変だった。

  • 報告者の感想  まあいいや。

  • 司会者の感想  進化論というテーマ自体が難しく、非常に苦労した。質問に対する回答が十分でないところがあった。司会はまとめきれずにだめだったと思う。