トニー・ギルロイ監督『フィクサー』

フィクサー [DVD]

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主人公が影で暗躍する黒幕(冗長表現)に迫るサスペンスアクションかと思ったら、fixerっていうのは原題でもあるMichael Clayton氏のことなのね。ジョージ・クルーニー演じるクレイトンさんは弁護士を何百人も抱える巨大法律事務所に勤めているのだけど、その役割は裏の仕事、要するに始末屋(fixer)。しかしこの始末屋ぶりがちょろい。浴槽の死体に薬品かけて溶かしたりはしないんだよねー。単に、表の顧客が起こした個人的な事件(轢き逃げとか)のところに行って、弁護士を紹介するだけという。全然アウトローじゃない仕事なのでした。
アカデミー賞にいろいろノミネートされたというので観たのだけど、まあ駄作。特に脚本の構成がおかしい。上記の始末仕事を片付けたクレイトンさんが明け方、車で山道を帰っていたら、あ、あんなところにおんまさんが!ということで、停車してへらへら近づいていって、癒されるなあとか思っていたら、後ろで車が爆発(この爆発も大したことないんだよなあ)。そこから、物語は4日前に戻って、なぜそんなことになったのかを語り直す、という構成。
だけど、合法的でしょぼいとはいえ裏の始末屋とかやってたら、まあ爆弾仕掛けられることくらいあるんちゃう? とか思っちゃって、そこに至るまでの物語に大して関心持てず。で、特に驚くようなこともなく、物語は冒頭の爆発シーンへと近づく・・・のだが、そしてここがこの映画で最も緊迫する部分(生命の危険に瀕するわけで)なのだが、観てる側は、あ、心配しないでも馬見に行って助かるからね〜ということがわかってしまっていて、スリルもサスペンスもない。なんでこんな構成にしちゃったんだろ。
オチも、1000万ドル払えば黙っててやるぜとか言って、相手が乗ってきたところで、実は録音してました警察の手先です私はみたいな使い古されたネタ。結局、クルーニーの眼力と、ティルダ・スウィンソンのワキ汗だけの映画。日曜洋画劇場で十分。