香山リカ『「私はうつ」と言いたがる人たち』

「私はうつ」と言いたがる人たち (PHP新書)

「私はうつ」と言いたがる人たち (PHP新書)

このように、「うつ病」になることによって、結果的には以前からの自分の希望がかなえられる、というのが、うつ病の“無意識的利用” だ。
とはいえ、第3章でも述べたように、彼らは「よし、うつ病になって自分の要求を実現しよう」と、少なくとも意識の上では意図的に考えているわけではない。もしそうだとしたら、それは自分でつくりだす病、詐病にかぎりなく近くなる。人間の心には無意識と呼ばれる機能が備わっているのだが、「うつ病になれば、希望がかなえられるのではないか」と策を練ってしまうのは、その無意識のエリアだと考えられる。(p. 176)

もはや社会学では使えない典型的な目的論的機能主義。この人の議論で使えているのは「無意識」という魔法の杖があるから。いまの精神医学で無意識ってどういう扱いなのか気になる。