奥野修司『ねじれた絆』

 事実は小説より奇なり。
 赤ちゃん取り違えの片方の家庭(城間家)で、DQNな妻が子供を放置して遊び歩き、夫は妻の姉とできて子供まで作り、家を建てて妻とこの姉と同居し、妻は妻で昼間から男を家に連れ込み、さらに取り違えの相手の家族(伊佐家)が同じ敷地内に家を建ててある意味同居する、などという設定はフィクションではあざとすぎてとても無理だろう。
 結局、取り違えられた子供は二人とも伊佐家の方を選ぶ。ということは、子供にとっての「絆」の対象は、「生みの親」でも「育ての親」でもなく、「まともな親」だということになる(伊佐家は夫婦間の問題もなく、自分の会社までつくっている)。少なくとも城間家の実子(美津子)にとっては、「取り違えがなければよかった」などとは単純にはいえない構造である。
(作中、両家族の人名は仮名。)