離婚にまつわる神話トップテン(2001年4月)

http://marriage.rutgers.edu/Publications/pubtoptenmyths.htm
ちなみに米国の話ですよ。

1 苦い経験をした分、初婚より再婚の方がうまくいく。

離婚後の結婚でうまくいっている人はたくさんいるが、実際の離婚率は、初婚よりも再婚の方が高い。

  • Joshua R. Goldstein, “The Leveling of Divorce in the United States” Demography 36 (1999): 409-414; Andrew Cherlin, Marriage, Divorce, Remarriage (Cambridge, MA: Harvard University Press, 1992)

2 離婚する確率を下げるには、結婚前に同棲しておくのがよい。

結婚前に同棲しているとかなり高確率で離婚することを示す研究がたくさんある。理由はよくわかっていない。同棲したがるようなタイプの人は、離婚したがるようなタイプの人でもある、という可能性も部分的にはある。同棲するという行為自体が、離婚への抵抗感を減じるような働きをすることを示す証拠もある。たとえば恋愛関係というのは一時的なもので、簡単に終わってしまうものだという考え方を育むようだ。

  • Alfred DeMaris and K. Vaninadha Rao, “Premartial Cohabitation and Marital Instability in the United States: A Reassessment” Journal of Marriage and the Family 54 (1992): 178-190; Pamela J. Smock, “Cohabitation in the United States” Annual Review of Sociology 26 (2000)

3 両親が離婚した子供にはそれが原因となって様々な問題が生じることが多いが、大抵の場合はそれほど長続きせず、子供は比較的早い段階で回復する。

子供に対人関係上の問題が発生するリスクは、離婚によって増大する。この種の問題の多くは長く続くことが、小規模な質的研究からも、大規模で長期間にわたる経験的研究からも明らかになっている。実際、成人してから悪化する可能性もある。

  • Judith Wallerstein, Julia M. Lewis and Sandra Blakeslee, The Unexpected Legacy of Divorce (New York: Hyperion, 2000); Andrew J. Cherlin, P. Lindsay Chase-Landsdale, and Christine McRae, “Effects of Parental Divorce on Mental Health Throughout the Life Course” American Sociological Review 63 (1998): 239-249; Paul R. Amato and Alan Booth, A Generation at Risk (Cambridge, MA: Harvard University Press, 1997)

4 子供がいると結婚生活の満足度が上がり、離婚しにくくなる。

結婚生活の中で最もストレスが多いのは、第一子誕生後の時期であることが多くの研究でわかっている。子供がいる夫婦は、子供のいない夫婦と較べて離婚のリスクが少しだけ減るが、その減少度は、結婚生活に問題はあるが「子供のために」離婚しないでおこうと考える夫婦が多かった時代の減少度と較べてはるかに小さい。

  • Tim B. Heaton, “Marital Stability Throughout the Child-rearing Years” Demography 27 (1990): 55-63; Linda Waite and Lee A. Lillard, “Children and Marital Disruption” American Journal of Sociology 96 (1991): 930-953; Carolyn Pape Cowan and Philip A. Cowan, When Partners Become Parents: The Big Life Change for Couples (New York: Basic Books, 1992)

5 離婚すると、女性の生活水準は73%も低下するが、男性の生活水準は42%も上昇する。

この劇的な不公平は、社会科学から提出された統計数字の中でも最も人口に膾炙したものであるが、後に計算間違いに基づくものであることが判明している。データを分析しなおしたところ、女性の生活水準の低下は27%、男性の生活水準の上昇は10%であることがわかった。格差の大きさはともかく、離婚後の生活水準について性別による格差は現実に存在するし、近年でも大して縮まっていないようである。

  • Leonore J. Weitzman, “The Economics of Divorce: Social and Economic Consequences of Property, Alimony, and Child Support Awards” UCLA Law Review 28 (August, 1981): 1251; Richard R. Peterson, “A Re-Evaluation of the Economic Consequences of Divorce” American Sociological Review 61 (June, 1996): 528-536; Pamela J. Smock, “The Economic Costs of Marital Disruption for Young Women over the Past Two Decades” Demography 30 (August, 1993): 353-371

6 両親が不仲な場合、そのまま婚姻を維持するよりも、離婚した方が子供のためになる。

最近の大規模、長期間にわたる研究の結果、そうともいえないことが判明している。この研究では、両親が不仲だと、ほとんどすべての面で子供に悪影響があるということも明らかになったが、他方で離婚しても同様の悪影響が生じることも明らかにされた。子供に対する悪影響についてより綿密な検討を行った結果、離婚による不仲の消失が子供に良い影響を及ぼすのは、家庭内の不仲の程度が極めて高い場合に限られることがわかった。不仲の程度が低い家庭では、離婚によって子供の状況はさらに悪化するのである(この種の家庭は、全離婚家庭の3分の2に及ぶことが同研究でわかった)。したがって、この研究の知見によるならば、不仲の程度が高い少数の家庭以外は、両親が離婚するよりも、離婚しないで問題を解決する方が、子供にとっては良いといえる。

  • Paul R. Amato and Alan Booth, A Generation at Risk (Cambridge, MA: Harvard University Press, 1997)

7 両親が離婚した家庭で育った子供は、結婚に慎重で、離婚の可能性は絶対避けたいという強い気持ちを持っているので、自分自身の結婚生活については、両親が離婚しなかった家庭で育った子供と同じくらいうまくいく。

事実として、両親が離婚した子供の離婚率は、両親が離婚しなかった子供の離婚率よりもはるかに高い。最近の研究によると、その主な理由は、子供は結婚生活を大切にする気持ちやそれを続けていこうという気持ちを、両親を見て学ぶからである。両親が離婚した子供の場合、結婚生活を一生続けていくことが大切だという気持ちがもてなくなっているのである。

  • Paul R. Amato, “What Children Learn From Divorce” Population Today, (Washington, DC: Population Reference Bureau, January 2001); Nicholas H. Wolfinger, “Beyond the Intergenerational Transmission of Divorce” Journal of Family Issues 21-8 (2000): 1061-1086

8 両親の離婚後、子供は単親世帯で育つよりも、両親の片方が再婚した家庭で育つ方が幸せである。

再婚家庭で育つと、普通収入水準は高く、家庭内に父親が存在するということはあるが、だからといってその方が単親世帯で育つよりも幸せであるとはいえない、ということを示す証拠がある。再婚家庭では再婚家庭の問題が発生することが多いからである。そこには新しく親となる人間との不仲となり、非常に高い確率で家庭が崩壊するという問題を含む。

  • Sara McLanahan and Gary Sandefur, Growing Up With a Single Parent (Cambridge, MA: Harvard University Press, 1994); Alan Booth and Judy Dunn (eds.), Stepfamilies: Who Benefits? Who Does Not? (Hillsdale, NJ: Lawrence Erlbaum, 1994)

9 結婚生活の中に、非常に不幸せな点がいくつかあるならば、それはその結婚生活がいずれ離婚に至るということを示す指標である。

どんな結婚生活にも、良い面と悪い面がある。最近行われた全国規模の標本調査によると、1980年代後半に結婚生活が不幸だと答えたが、そのまま離婚しなかった人の86%が、5年後に同じ質問をした際に、以前より幸せになったと答えている。実際、以前結婚生活が不幸だと答えていた夫婦の5分の3が、結婚生活が「非常に幸せ」ないし「かなり幸せ」だと答えている。

  • 9 Unpublished research by Linda J. Waite, cited in Linda J. Waite and Maggie Gallagher, The Case for Marriage (New York: Doubleday, 2000): 148

10 離婚を言い出すのは、普通男性の方である。

全離婚数のうち、3分の2は女性のほうから言い出している。最近の研究で、その理由が、わが国の離婚法制の性質に由来するものであることが判明した。たとえばほとんどの州では、多くの場合親権を得るのは女性である。女性は子供を自分の許に置いておこうと思う気持ちが男性より強いので、夫との共同親権の認定がある州では離婚を言い出す女性の割合は、はるかに小さくなる。

  • Margaret F. Brinig and Douglas A. Allen, “ “These Boots Are Made For Walking”: Why Most Divorce Filers Are Women” American Law and Economics Review 2-1 (2000): 126-169