猫猫先生がまたおかしなことを

(承前) http://d.hatena.ne.jp/takemita/20070601/p1
 小谷野敦氏がまたおかしなことを書いている。

http://www.pipeclub-jpn.org/column/column_01_detail_06_02.html
 疫学の数字が怪しい、その格好の例が、先ほどの「男1.6倍、女1.9倍」だ。実は厚生労働省は、二〇〇二年に、都市部でない四つの地域の四万人を対象とした小さな調査で、まったく同じ数字を出している。それは、四十歳から五十九歳までの人を対象に、十年間調査した結果だという。
 ところが、今回の調査は、津金昌一郎という人が、四十歳から六十九歳の人を十数年間追跡調査したというのだが、年齢上限が十歳上がったなら、死亡率は当然、前回より上がるはずである。ならば、前回の調査がおかしかったと考えるしかあるまい。

 その「津金昌一郎という人」が、厚生労働省研究班の班長なのだが
 そして、毎日の記事はおそらくその研究班の「現在までの成果」を紹介している(「〜倍」とかの数字が合致する)のであって、その中の「喫煙と死亡」の最新版が2002年の発表なのだが。要するに同じ調査を小谷野氏は、「前回」とか「今回」とか言って、つまり別の調査だと思って比較している可能性が高い。
 そこで決め手となるのは、「四十歳から六十九歳の人を十数年間追跡調査した」という部分だ。それが本当なら別の調査だということになるだろう。これは毎日の記事の次の部分に書かれている。

 今回紹介した調査結果は主に、岩手県から沖縄県までの10都府県の40〜69歳の男女計約11万人に対し、喫煙や飲酒、食事内容などさまざまな生活習慣をアンケートした後で十数年間追跡し、死亡や病気との関係を調べたものだ。

しかしその後すぐに続けて、こうも書かれているのだ。

対象者の年齢や人数は調査ごとに少しずつ違うが、少ない調査でも約2万人を調べた。

2万人と11万人では「少しずつ違う」どころの話ではないと思うのだが、ともかくこのように、異なるいろいろな調査を総括的に書いたために引用部のような書き方になっているものと思う。つまりいくつかの調査の中で都府県数は10が最高、年齢の幅は40〜69歳が最高、人数は約11万人が最高、期間は十数年が最高、ということだろう。面倒なのでやらないが、詳しくは上記研究班の「現在までの成果」の概要を見ていけばわかる(たとえば2万人というのは「飲酒と死亡」調査の対象者数)。いずれにしても、小谷野氏が問題にしている「喫煙と死亡」の調査対象が「四十歳から六十九歳」などとはどこにも書いていない(ただし、たとえば「喫煙と肺がん罹患」の対象は「40〜69歳」だったりする。が、小谷野氏が問題にしているのはあくまでも死亡率である)。