セイルズ「労働集団での行動とその集団を含む組織」

Leonard R. Sayles, 1957, "Work Group Behavior and the Larger Organization," in: Conrad Arensberg et al. (eds.), Research in Industrial Human Relations: A Critical Appraisal, Industrial Relations Research Association, Chapter 9, pp. 131-145

イントロ

個人にとって、最も直接的で最も有意味な労働経験というのは、職場の同僚との間でのものです。この集団を含む組織というのは間接的にしか経験されません。これに対して小集団への所属というものは、労働世界全体に対する態度や行動の形成にとって直接的な影響を与えるものです。なので、小集団が組織全体に対してどういう貢献をするかということは、産業における人間関係に関心を寄せる研究者にとって重要な主題となることなのです。(p. 131)

いろいろな労働集団

  • 個人はいろいろな種類の集団に所属しているよ。まず、監督者を共有する指揮集団(command group)、課業を共有する機能集団(functional group)ないし課題集団(task group)。この二つは公式組織によって定義されるよ。
  • 非公式なものに、友人関係からなる派閥(friendship clique)、さらに経済的利益を共有する利益集団(interest group)があるよ。
  • これらの集団の境界は全然ばらばらでもないけど完全に重なっているわけでもないよ。
  • 以下、上記の四類型のそれぞれについての既存研究のレヴュー。

労働集団内の動学

  • 組織内集団が組織に対して与える影響や両立可能性について論じてきたので、集団内のことについての研究はすっとばしてきたよ。

結論

 職場における労働者の集団は、どんなものでも以上の特徴を持ちます。これらの特徴は、個々人の人格はそれぞれ固有であり、あらかじめ決まっている「全体」に組み入れられるのを拒むため、そのことによってこの全体のあり方を変えてしまうということに由来するものだからです。個人が集まってできる集団は、そこに属する個人の総和以上のものになるのです。新しい組織ができるのです。なぜなら、所属する成員のほとんど(先に述べたとおり重要な例外はありますが)は、その集団の一部として認められることから満足を得、また集団それ自体が成員に対して一定の影響を与えるからです。別の言い方をすると、集団の内部には順応への圧力が存在するのです。この圧力によって、その集団の中で認められる共同生活の様式ができます。この集団内の生活様式には、複雑な慣習・規則の体系、特定の利益、相互行為のパターンが含まれ、集団内での成員相互の関係や、この集団を取り巻く環境との関係はこの様式によって統御されます。
 この、集団内の行動や態度を統御する規則は、合理的に設計された組織にとって「補完」となるものです。紙の上で設計された組織は、これを実際につくったときには「生きて息をする」社会的有機体となり、人間関係にはつきものの葛藤や感情や矛盾を示すようになります。成員に対して、この自生的な「人間関係」を構築する機会を与えないような組織は長続きしません。しかしその一方で、そうやってできる小集団をどうやってうまく自らに組み入れていくかが、組織にとって非常に重要な問題になるのです。