常用対数と計算尺

 物差しを1つ用意しよう。これを使って、目盛りの0から2まで線を引くと、2cmの線が引ける。線の右端にまた目盛りの0を合わせて、今度は3のところまで線を引くと、あらたに3cmの線が引けて、合計5cmの線が引けたことになる。
 物差しが2つあれば、いちいち線を引かなくてもこれを上下に組み合わせて横にずらすだけで同じことができる。上の物差しの0の目盛りを、下の物差しの2の目盛りまでずらして、上の目盛りの3のところを見ると、下の目盛りは5になっている。これはつまり、物差しを使うと
  2+3=5
という足し算ができるということだ。でもこのやり方だと掛け算はできない。
 でも、掛け算を足し算に直すやり方があれば、物差しをずらすだけで掛け算の答えを得ることができる。そして対数はそれを可能にする工夫なのだ。なぜなら、
  log (2×3) = log 2 + log 3
だからだ。
 もちろん普通の物差しは使えない。このやり方を使うためには、左端の目盛りが1(log 1 = 0だから)で、左端から0.3010cm右に2(log 2 = 0.3010だから)、左端から0.4771cm先に3(log 3 = 0.4771だから)、・・・左端から0.7782cm右に6(log 6 = 0.7782)、・・・というように目盛りをつけた特殊な物差しが必要だ。それが計算尺(上がC尺と下がD尺)である(目盛りのつけ方は常用対数表に基づく。)。
 この物差しを使って、C尺の1をD尺の2までずらし、そのときのC尺の3のところを見ると、D尺は左端から0.3010cm + 0.4771cm = 0.7781cmの距離にある点、つまり6の目盛りを示していることになる。こうやって、
  2×3=6
が物差しをずらすだけで計算できるようになるわけだ。
(ただしこの物差しは小さすぎるので、目盛り間の距離の比を保ったまま大きくした方がいい。)