理論家が問題を扱う二つの方法

 一つには、理論家自身が問題を立て、その解決を自分の仕事とすることが可能である。問題が解決されることによって理論が完成する。このとき、完成した理論の中には、当初の問題も、したがって解決も登場しない。他方、問題が解決しない限り、理論も未完成である。
 もう一つには、問題というものを、理論の中で(つまり理論が描く対象世界の中で)発生し、そこで解決されたりされなかったりするものとして扱うこと、つまり理論の中に問題を組み込むことが可能である。このとき、問題が解決するしないは、理論家にとって何らの不利益にもならない。問題の解決は理論家の仕事ではない。対象領域での問題/解決関係を剔出することが仕事である。
 二重偶然性(ダブルコンティンジェンシー)問題に対するパーソンズルーマンの取り組み方が、それぞれ上記の二つの態度に対応する。二重偶然性に限らず、一般に問題の扱い方、さらには理論とは何をするものであるかという点についての、決定的に重要な考え方の違いが、この点に読み取られなければならない。(ルーマンが二重偶然性問題をパーソンズとは別様に解決した、という言い方は間違いである。ルーマンは問題を解決する立場にいない。)