憲法:社会権としての生存権 司法書士試験過去問解説(平成18年度・憲法・第3問)
平成18年度司法書士試験(憲法)より。正誤問題の選択肢。設問全体については、憲法:自由権と社会権。
すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。
国民が生存権を権利としてもつということは、国がそれに対応する義務をもつということですから、これを受けて、25条2項では
と国がしなければならないことを定めています。つまり、憲法25条で定められた生存権は、国民が国に対して「してもらう」ことを定めた作為請求権、すなわち社会権です。
生活保護法は、この生存権を具体化したものです。実際、生活保護法の目的を定めた1条では、憲法25条が引用されています。(参考:朝日訴訟判例)
この法律は、日本国憲法第25条に規定する理念に基き、国が生活に困窮するすべての国民に対し、その困窮の程度に応じ、必要な保護を行い、その最低限度の生活を保障するとともに、その自立を助長することを目的とする。
というわけで、上の選択肢アは正解です。
この生存権の保障は、社会権の中で原則的な規定であり、国民が誰でも、人間的な生活を送ることができることを権利として宣言したものである。
生存権には、国民各自が自らの手で健康で文化的な最低限度の生活を維持する自由を有し、国家はそれを阻害してはならないという自由権的側面と、国家に対してそのような営みの実現を求める社会権的側面とがあるが、論議の中心は、もちろん後者の法的性格のとらえ方にあった。
この生存権の保障規定は、社会権のなかで原則的な規定であり、国民が、みな人間らしく生きることができることを権利として宣言したものである。生存権には、国家による妨害を排除するという自由権的な側面も存在するが、2項では、社会権的な側面での生存権を中心に、1項の趣旨を実現するために国に生存権の具体化について努力する義務を課している。
生存は人間が生物である以上本能的欲求である。しかし,それは基本的に本人,家族などが充足すべきものと考えられ,政府の役割は,総体としての国民の安全を保障するに過ぎなかった。個々人の生存保障が政府の義務的課題となったのは,歴史的には極めて新しく,生存権(Recht auf Existenz)の概念の提唱を待つことになる。
渋谷秀樹 『憲法』 253頁